第57話 時妻村1
週末の土曜日。
いつの間にか七月になっていた。
夏も本番と言う感じで、朝から暑く、蝉が五月蠅い。
大阪 (拓哉は尼崎だが、位置的にはほぼ大阪。) の夏は暑い。
とにかく暑い。
恐らく湿気や室外機、アスファルトなどの影響なんだろう。
不快な暑さなのが大阪だ。
この日、拓哉と光は朝から出かけていた。
目的地はJRの福島駅近辺。
佐藤の探偵事務所からほど近い場所だ。
待ち合わせの約10分前に着くと、既に唯志と莉緒がいた。
「あ、ひかりんとタク君おはよー!」
莉緒が元気に挨拶をし、それぞれが挨拶を交わす。
その直後、間宮が車で現れる。
「やあ、みんな元気そうだね。」
車を駐車し、間宮が下りてきて挨拶をした。
「二回目の時妻村。今日こそは何か掴めると良いね。」
--二回目の時妻村。
そう、この日は改めて時妻村の西条家を訪問する予定だ。
月曜日に唯志に報告した後、すぐさま間宮達に連絡を取り、今日の予定をセッティングしたらしい。
拓哉と光の都合は聞かれていないのが不服だった。
(唯志は、どうせ暇だろ?とか言っていた。)
だが、一方の光は嬉しそうにしていたので文句も言わずついてきた。
「おはよー、間宮さん!今日はよろしくー!そっちの彼らが噂の人たち?」
長い黒髪のメガネの女性が近づいてきて元気に挨拶してきた。
恐らく彼女が今日ついてくるという佐藤の助手の人なんだろう。
「おはよう、めぐみん。そうだよ、よろしくね。」
「めぐみんはやめて下さい。みんなよろしくねー。」
めぐみんと呼ばれた人物が挨拶をしてきた。
今日の話を唯志から間宮・佐藤にした際に、佐藤の助手がついていきたいと言ってきたらしい。
(佐藤本人は多忙の為不参加)
「そっちの彼女が『未来人の』光ちゃん?」
「あ、はい!そうです!今日はよろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくねー。未来の話聞かせてね。んで、そっちの彼が『唯志』君かな?」
「ん?そうだけど、俺は特に未来人とかじゃないよ。」
「知ってる。なんか面白い子だから観察しとけって佐藤さんにね。」
八木恵(やぎ めぐみ)と名乗った女性の興味は光と唯志の様だ。
当然今日行く村や霊能力者にも興味があるのだろうが。
ひと通り全員の挨拶を済ませ、全員で車に乗り込み、早速と時妻村に向かった。
出発や否や、間宮が話を始めた。
「唯志君、急な招集だったけど何か思うところでもあったのかい?」
「どうでしょう。自分で見てみないとわからないですね。まずは『霊能力』とかいう怪しい力から『見せて貰おうかな』って思ってます。」
「それは僕としても興味があるね。ただ、一筋縄じゃいかなそうだったよ?光ちゃんの秘密を話すのかい?」
間宮がそう言うと、光はハッと唯志の方を見た。
「そのつもりは無いです。有効そうだったら考えますが。使えそうな交換条件を見つけて、聞き出す方向で。」
「その荷物もその為かい?」
確かに唯志は何かしらの荷物を持っている。
「まぁそんなところですね。」
唯志はニヤッと笑った。
またよからぬことを考えてそうだ。
道中は先日と打って変わって賑やかだった。
唯志が話題を振り、莉緒や光、恵などが話を広げる感じで盛り上がっていた。
適度に唯志が補足や突っ込みを入れることで会話を広げている様だ。
なるほど、女性相手でもこう話せばいいのか・・・などと拓哉は参考にしていた。
だが、唯志の様に女性相手でも男性相手と変わらない調子で話できる自信が無いが。
「唯志君は霊能力者って人と会ってまず何がしたいの?」
恵が唯志に質問する。
それは拓哉や光なども詳しく聞いていない。
莉緒なら聞いてるかもと思ったが、莉緒も同じく唯志の答えを待っている感じだ。
「さっきも言ったけど、とりあえず霊能力とやらの有無確認からだね。本当に何か特殊な力があるなら、その内容も知りたい。それ次第では色々とひかりんの役に立つかもしれない。」
と唯志が答える。
「あー、なるほどね。てかそもそも真偽の時点で疑ってるんだ?」
と恵が聞き返す。
「そうだね。今のところ詐欺師なのか本物なのかわからないし。その辺は自分で判断する。あと、状況によっては他にもやりたいことがあるけど。」
「他にも?」
今度は光が聞き返した。
「そう。期待させちゃ悪いから、出来そうだったらその時成り行きで話すよ。」
と唯志は答えた。
やっぱり何か企んでるなぁと拓哉は思っていた。
--
時妻村。
今日は道中で一回食事を摂った以外は真っ直ぐに来たため、まだお昼過ぎくらいだ。
前回は色々と迷ってしまったが、今回はすんなりと西条家まで辿り着いた。
「うわー本当に大きい家だねー」
「甲子園何個分だろ?」
莉緒と恵が驚きの声を上げていた。
車中の二時間余りの時間だけで、光含めて女性三人は打ち解けた様だ。
人見知りの拓哉は信じられないと言った顔をしていた。
一方唯志は村の方を見渡していた。
「唯志君、どうかしたの?」
光が気になって唯志に話しかける。
「いや、予想していた通りの過疎った村だな。周りには広大な畑。民家なんて見える範囲に無い。ここだけ別世界みたいだ。」
「そうだね。屋敷自体広いから、屋敷だけ別の村みたいだよ。」
変なことを気にするんだな。
拓哉はそう思った。
そんなやり取りをしている中、間宮が屋敷の呼び鈴を押した。
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