第34話 拓哉からの電話2

場面は替わって光サイド。

拓哉からの電話がかかってきた場面に戻る。


光は拓哉からの電話に出ていた。

「タク君、どうしたの?」

「光ちゃん!今どこ!?俺の家!?」

拓哉は明らかに焦っていた。


「今?まだ唯志君の所。」

「岡村君の?それより、『探偵』が俺らのことを探してる!俺の家や、君が『未来人』ってこともバレてる!」

拓哉がまくし立てるように光に告げた。


「え?どういうこと!?」

「どういうことも無いよ!言ったままの意味だよ!あいつは光ちゃんのこと探してるみたいだ!」

「私を!?なんで!?どうして!?」

拓哉からの言葉に光は混乱した。

何故私を探してる人がいる?この時代でまともに接触があるのは拓哉含め4人しかいない。

未来人ってことを知ってるのも同じく4人だ。

それなのになんでそれが知られているの?


「とにかく家はバレてるみたいだし、事情が事情だけに警察も頼れない。どうしたら良い!?」

拓哉は光に助けを求めているようだ。

「どうしたらって・・・、私も何がなんだが・・・」

光も困っていた。どうしてこんなことに。

そもそも『未来人』だとしても、私を探す価値があるのだろうか?

まさか研究所とかに売り飛ばすとか?

(いったい何がどうなって・・・)


「なぁひかりん、ちょっと良いか?」

そこに口を挟んできたのは唯志だった。

「え、あ、はい」

光は混乱しながらも何とか返事をした。

「相手は吉田だな。横から聞いてる限りまずい感じみたいだが、何があった?」

「なんか探偵が私を探してるらしくて。未来人ってこともタク君の家もバレてるみたいで・・・」

と光が拓哉に聞いたままを答えた。

「ふーん・・・。ちょっと電話代わって。」

唯志は光からスマホを受け取った。


「よう、吉田。悪いけど最初から説明頼むわ。」

唯志は拓哉に説明を求めた。

「だから光ちゃんに言った通りだよ!家もバレてるし、光ちゃんが未来人だって・・・」

「いや、それは聞いた。そうじゃなくて今日の出来事をあったままに最初から頼む。探偵ってやつが出てきたところからで良いぞ。」

「最初から・・・いや、でも!急がないと!」

拓哉は動揺しすぎていて要領を得ない。というか会話にならない。

「落ち着けって。まずは冷静になれ。最初から整理するぞ。」

唯志はなだめるように拓哉に言った。

少し間が空いたが、拓哉も少し落ち着いたようだ。

「最初・・・もう家の付近まで来てたところだったんだけど、男に呼び止められたんだ。」

「うん」

「で、そいつが先日の梅田の発光事件居合わせたとかで、調べてるから話を聞きたいと言ってきた。」

「ほう」

「で、明日以降で連絡を欲しいと名刺を渡されて・・・連絡するかどうかは返事しなかった・・・というか有耶無耶にしようと思ったんだけど・・・」

「うん」

「そしたら、『一緒にいた彼女も連れて来い』、『特に彼女の正体について話そう』とか言いだして。」

「・・・」

「更に、『会社の最寄り駅の方に迎えに行こうか?』とか言ってきて。」

「なるほどな。今言ったのは原文のまま?」

「かいつまんだけど…言ってた内容はそんな感じ。家の近くで呼び止められたし、家もバレてると思う。」

「そっか。相手側の要求は?」

「明日、光ちゃんを連れて話を聞かせてくれ・・・だけかな、今のところ聞いた内容だと。」

「おっけー。ちなみにお前今外か?その後家に帰っちゃった?」

「いや、まだ外。」

「なら帰るな。喫茶店でも行け。とにかく外にいろ。少しだけ整理したらまた連絡するから待ってろ。あと、探偵の名刺の写真をすぐ送ってくれ。」

「え、なんで?」

「良いから。じゃあ少ししたら連絡するわ。それとひかりんもう少しの間こっちで預かるわ。」

「え、ちょ」

と言ってる間に唯志が通話を切った。

「タク君どしたん?何か問題?」

莉緒が唯志に聞いてきた。

「あの・・・大丈夫なんでしょうか?」

一方光は心配そうに唯志に問いかけた。

「んー。まぁ大丈夫だろ。ちょっと調べものするわ。ひかりん申し訳ないけどもう少しうちにいて。」

そういうと唯志はパソコン2台を扱い始めた。


「まぁ唯志が大丈夫って言ってるし、大丈夫でしょ。なんかゲームでもしようか。」

莉緒は既に何事もなかっかのような振舞いだ。

「え、でも遊んでていいのかな?」

「唯志が何とかするって。邪魔になるし、遊んでよー。」

莉緒はそういうと、唯志の部屋にあるゲームを物色し始めた。

光は心配半分、唯志への申し訳なさ半分で気が気じゃなかったが、確かに自分には何もできない気がしたので莉緒とゲームをして過ごすことにした。


一方の唯志は、当時の監視カメラ映像を再確認しつつ、拓哉から送られてきた探偵の名刺内容の裏を取っていた。

(実在はするな。口コミも悪くないが・・・数が少ないし参考程度だな。)

唯志は考えられる可能性を探っていた。

探偵。居合わせた。光の『正体』。吉田の自宅に会社。

事実として捉えて良い情報は・・・

色々な情報と、見える事実を並べて推測をしていた。


それからほんの数分だった。

「うん、良さそうだ。会ってみようか。」

唯志が口を開いた。

光は驚いた。

「え、会ってみるんですか?大丈夫かな?」

「どの道会ってみないと何の情報も無いしな。会って話を聞く方がメリットありそうだ。」


本当に会って大丈夫だろうか。この短期間で拓哉までたどり着いた探偵だ。

その上光のことにまで言及している。

唯志を疑っているわけじゃないが、光は不安でいっぱいだった。

「大丈夫だよ、ひかりん。唯志に任せなー。」

莉緒は安心しているようで、光にやさしく笑いかけていた。

「危ないことにはならないから安心して良いよ。ひかりん明日は大丈夫?大丈夫なら吉田に話つけるよ。」

「あ、はい。私は大丈夫です。タク君が良いなら。」

「莉緒はどうする?明日の夕方から時間あるか?」

「面白くなりそうだし行くー」

光と莉緒がそう答えると、唯志は拓哉に電話をかけた。


拓哉はすぐ電話に出た。


「よう。明日話聞きに行くぞ。」

「え、なんか危なくない?」

「大丈夫だろ。俺と莉緒もスタンバるわ。その代わり時間と場所こっち指定にしろ。場所を今メールで送った。お前の家の近くだし良いだろ?」

「場所は見ておくとして、何か作戦でもあるの?」

「まぁな。お前最短で何時に来れる?」

「18時には確実に。」

「なら探偵には18時半、その場所で連絡入れろ。お前とひかりんの2人で行くって。」

「それは良いけど・・・本当に大丈夫なんだよね?」

「ああ、安心しろ。連絡取れたらまた教えて。ひかりんそっちに帰すから。それと、多分お前の家まではバレてないぞ。その代わり今もつけられてるかも知れんから、遠回りして撒いてから帰った方が良い。」

なるほど、と拓哉は思った。

「わかった。じゃあ連絡取れて、安全確認出来たらまた連絡するよ。」

「あいよー」

そう言って唯志は電話を終えたようだ。


「どうでした?」

光が心配して聞いてきた。

「問題ないってよ。明日は探偵と腹の探り合いだな」

そういうと唯志は楽しそうに笑っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る