第13話 相談

恥ずかしさのあまりに本題を忘れていた。

ノキ(野村)に現状を報告し相談していいか、光に確認するところだった。


「あの、ゆう・・・ひかりちゃん」

「はい、話し思い出しました?」

「やっぱり俺一人じゃちょっと厳しそうなんで、友人とかにも相談したいんだけど、問題ない?」

たぶんめっちゃ早口で言っていた。

「確かに私たち二人じゃ厳しいですよね~。信用できる人なら良いと思います。」

「うん、じゃあとりあえずノキ君か。」

「ノキ君?」


拓哉はskypoの画面にし、ノキとのチャット画面に切り替えた。


先ほどの未読メッセージが表示される。


[おつー。大丈夫なタイミングで連絡よろー。]


少し時間は空いたが、状態が離席中にはなっていない。

元々休みの日のこの時間、野村はたいていPCの前だ。


[おつかれー。とりあえず今なら少し時間とれる。あと相談もあるんだけど良い?]

後は返事が来ればいいが・・・

「これってチャットですか?この頃のチャットってこんな感じなんだ。」

「あ、はい。相手はノキ君って言って、まぁノキってのはこのskypoのユーザー名で、

本名は野村って言います。彼は友達の中でも特に信用できますよ。」

めっちゃ早口だし、相変わらず敬語だった。

「へー、なんか良い解決策教えてくれたりするかなー?」

問題はそこだった。

野村は拓哉にとって良き友人だし、信用も出来た。ついでに、金持ちだ。

拓哉とも気が合うし、何でも話せたし、相談できた。

・・・だが、それだけだった。

同じ大学出身で、親の会社に就職した同い年。

正直なところ、拓哉と同程度の考えしか生まれないのは明白だった。

光と直接接していない分、それ以下なのが目に見えた。


だがこの問題は拓哉一人で抱えるには少し重た過ぎた。

だから、誰かに話したかった・・・というのが本音だろう。

拓哉自身その事には気づいていたが、あえて相談する選択をした。


「どうだろ・・・でも俺たちだけで考えるよりはまだマシかなって。」

三人寄ればなんとやらとは言うが、実際拓哉も望みは薄いと感じていた。


ノキからの返事は1分も経たないうちに返ってきた。


[どうしたー?とりあえず聞くだけは聞くぞー。今は一人?]

こちらの状況をある程度察して、当たり障りのない探りを入れてくれている。

正直に話した方が良いだろうと判断した。


[いや、今は女の子と一緒。これも一緒に見てるよ。]

(こう言っておけば、ノキ君なら察してくれるはず。)

[マジかwで、相談ってなに?]

[何から話したらいいのか・・・なんだけど。とりあえず信じて聞いてくれる?]

[おk。何でも来い]

[なんというか・・・今一緒にいる女の子、未来人なんだ。]

[ん?何言ってんの?ガチの話してる?設定上の話?]

[説明するね。]


それから拓哉は今日の出来事をかいつまんで説明した。

が、拓哉自身未だ混乱しているのもあり、いまいち要領を得ない。

十数分の説明の末、何とか拓哉が本気で話している事と今日の出来事だけは理解してもらった。


[おk。とりあえず信じる信じないは別として、タックの主張はわかった。]

[おわかりいただけただろうか・・・]

[で、ヤヴァイって事はわかったけど、相談は何よ?]

(あ、説明ばっかりで相談忘れてた。でも何相談したらいいんだ、これ。)


「光ちゃん、何か相談ってある?」

拓哉は自分から相談を持ち掛けておいて、その内容を光に丸投げした。

「え?私ー?うーん、タイムマシンの在り処・・・とか?」

「そんなの知ってる一般人いないでしょ・・・」

「とりあえず、帰り方に心当たりないかってことかなぁ」

「ダメ元で聞いてみるか。」


[ノキ君、タイムマシン持ってない?]

[持ってるわけないwww]

[だよねー。で、本題だけど、この子未来に帰してあげたいんだよね。]

[ほう。]

[どうやったら帰れると思う?]

[そこから丸投げ!?wそれわかったらノーベル賞獲れるんじゃねw]

[だよねー。困ったなぁ。一緒にノーベル賞獲らないか?]

[別に獲りたくないw]


「二人は仲良いんですねー。ところで時折出てくる『w』ってなんですか?」

光が口をはさんできた。

「その辺後で説明しますね。」

とりあえず、今はノキ君とのチャットに集中する為後回しだ。


[まぁノキ君から案が出るとは思ってなかったけど、例えばそういうの詳しい知り合いがいるとか無いかなって。]

[そっち方面はなぁ。タックの方が詳しいくらいじゃないの。]

[確かに・・・]

思っていた通り、野村に相談したところで全く進展はなかった。

単純に拓哉の不安を紛らわせただけだ。

その分光に不安を与えたことに、拓哉は全く気付いていない。


(とりあえずノキ君から出てきそうな意見はここまでかな・・・)

何の意見も出てきていないし、進展もしていないが、拓哉はそう思って会話を切り上げようとした。

その時。

skypoの画面に別ユーザーのログインを知らせる通知が出た。

[dadaがオンラインになりました。]


[お、dada君じゃん珍しい。]

さっそく野村が反応した。

[ほんとだね]

[タックさ、dada君にも相談してみたら?]

[え?]

[正直俺らじゃ無理ゲーだよ、未来に行く方法とか。]

[それはdada君だろうと一緒じゃない?]

[まぁそうだろうけど。少なくとも俺らよりは良い案出してくれると思う。]

[確かにそうかもしれんけど・・・]


確かに彼は自分のskypo仲間の中では適任かもしれない。

未来に帰るなんて無理ゲーは達成できると思えないが、

少なくとも俺ら二人(光を入れても三人)で話すより、

よほどいいアイデアを出してくれそうだ。


そう言いつつも拓哉は『dada』にメッセージを送るのを躊躇していた。

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