第12話 これからの方針

先ほどカッコよく助ける宣言したものの、

拓哉は何をしたらいいのか全く分からなかった。


(協力するって言ったはいいけど、俺なんかがどうこう出来る問題なのか?)


光はというと、この時代のPCが気になったようで、

好きなようにネットを触らせていた。

予め履歴は消しておいたし、ブックマークにエロサイトも無いはず。

勝った!計画通り!

キーボードの仕様は未来でも近いものなのか、

特に手間取ることなく操作出来ている。

一方、マウスの操作方法を知らないのにはびっくりした。

とりあえず大手のニュースサイトを紹介したら食い入るように見ていた。

光曰く、レイアウトが古臭いけど見る分には問題なくてよかった。だそうだ。


しかしこうやって落ち着いてまじまじと見ると、

マジで可愛い。

活発そうな雰囲気のショートカット。色は若干茶髪。

暑かったのかジャケットの様なものを脱いで、少し薄着になっていて若干エロい。

しかも先ほどを除けば、終始笑顔を絶やさない。

生来明るい子なんだろう。

こんな状況でも明るく気丈にふるまっていたし。

拓哉は自分に何が出来るかはわからなかったが、

この子の為に何とかしてあげたいという気持ちがより一層高まっていた。


だが現実問題、拓也には何をどうしたらいいのか、名案どころか案すらなかった。


(どうするかな…ただのサラリーマンの俺に何ができるよ?)


拓哉は今年25歳。社会人は3年目。

エンジニアリング会社でエンジニアとして働いている。

世間的には大人と言われる年齢だが、人間としても社会人としてもまだまだ半人前のひよっこだ。

経験も知識も圧倒的に不足している。

そんな拓哉に現状を打破出来る考えなど浮かぶはずもない。


(なんにしても情報がなさすぎる。ネットで調べるか。)

拓哉はそう思って2台目のPCの電源を入れた。

余談だが拓哉の部屋には2台のPCがある。

1台は今光が使っている、普段使う用で持ち運び可能なノートPCで主にネットを見たり、動画を見たりに使っている。

もう1台は主にゲームをしたりする用の少しスペックの高いデスクトップPCだ。

そのデスクトップPCの方を立ち上げ、ブラウザを起動した。

ついでにskypoなどの常駐させているアプリも立ち上がっていた。

拓哉はとりあえず思いつくワードでネット検索してみる。


『タイムスリップ 体験』

『タイムスリップ 実話』

『タイムスリップ 事例』


どれもこれも碌な検索結果が出ない。

良くて『ジョン、〇イター』が出たくらいだ。

この話はネットで有名なので知っている。


(そもそもネットで検索したくらいでタイムトラベル出来るならみんなやってるよな・・・)

もっともなことを考えて途方に暮れていた。


その時、画面端でskypoのアイコンが点灯していることに気づいた。

見るとノキ(野村)からチャットメッセージが飛んできていた。


[おつー。大丈夫なタイミングで連絡よろー。]


(ノキ君か。そういえば後で説明するって言ったよな。)


しかし今はそれどころではないので、後回しにしようと思いネット検索を続けようとしたが、

ふと思った。


(ノキ君にも相談してみるか?)


前述の通り、拓哉はノキこと野村のことを信用していた。

野村は元々金持ちなのもあって、基本的に器がでかく、余裕がある。

金持ちなのをひけらかすこともなく、物腰は柔らかい。

その上、趣味は拓哉と酷似していて気が合った。

恐らく人生で一番信用している人物だ。


(ノキ君なら説明したら信用してくれそうだし、力を貸してくれるだろう。他言もしない。)


「あの、結城さん・・・」

ネットニュースに熱中していた光に声をかけた。

「え?あ、どうしました?」

光はすぐに笑顔で返してくれた。

どうやら現代のスポーツニュースを見ていたようだ。

見た目の通り運動好きなんだろうか?


「あ、私は光って呼んでくれたらいいですよ。多分年下だし。」

「そもそも歳いくつですか?まさか未成年じゃ・・・」

(未成年略取誘拐とか勘弁なんだが。)

「失礼な!ちゃんと18歳は超えてますよ!」

「え?・・・あ、この時代の成人は20歳ですよ?」

「え?そうなんですか!?危なかった・・・一応20歳です。」

拓哉は少しだけホッとした。

「そういう吉田さんはおいくつですか?あ、吉田さんって言いにくいんでなんかあだ名ありません?」

いくつも質問されてプチパニックの拓哉。

「えっと、歳は25です。あだ名は・・・よっしーとかタクとか言われたりはしますね。」

「うーん、よっしーはなんか距離感がなぁ。タク君でいっか。良いですか?」

「えっと・・・はい。」

拓哉は女性にあだ名で呼ばれるのが生まれて初めてだった。

嬉しくもあり、とても恥ずかしくもあった。

それに元々NOと言えないタイプだ。

「ついでに敬語も無しで良いですよー。」

「あ、はい。それなら光・・・さんも敬語無しで良いですよ。」

「光さんは固いなー。光って呼び捨てか、ひーちゃんとかでも良いですよ。」

「じゃあ、その、ひー・・・かりちゃんってのは・・・?」

「はい、じゃあそれで良いですよ。」

拓哉は恥ずかしさで完全に話す内容を忘れていた。


(あれ?俺何しようとしてたんだっけ・・・?)


初々しいやり取りをしている間に、無駄に時間だけが経っていった。

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