第11話 2人の行方
「やっぱり、なんかしっくりこないんだよなぁ」
間宮がまだ納得いっていない様子だ。
「さっきの女の子のことですか?」
「そう。どうも気になる。」
「さっきナンパだって結論に至っただろ。」
「それはお前だけだろ。・・・でも、そうか・・・ナンパ・・・」
間宮は何かを思いついて、またパソコンをいじり始めた。
「急になんだよ?」
「お前の言う通りナンパだったとして、だ。普通ナンパしたらどうするよ?」
「はぁ?普通お茶したりとかじゃねーの?」
「カズさん、ナンパなんてするんですか?」
「しねーよ!一般的にって話だ!」
佐藤は慌てて否定した。実際佐藤はナンパはしたことが無かった。
職業柄社交的で、道行く人にも声をかけるのだが、ナンパは経験が無かった。
「まぁそうだろう。お茶したりだろうな。で、お茶終わったよな?」
「あー確かにそうだな。喫茶店で2時間も話し込んでたわけだ。さぞ仲良くなったんだろう。」
「そうなると次はどうする?」
「・・・カラオケとか、時間的に飲みに行くのもあるだろうし、場合によってはホテル・・・とかか。」
「ええ?ナンパってそんな急展開なんですか!?」
「まぁナンパ師って言われるような人らはそういう流れだろうね。だけどこいつらが向かった先は」
「ホテル街の方じゃないな。まして居酒屋に行くにしてもカラオケとかに行くにしても逆方向だ。」
「そうだ。あっちだと思いつく行先としたら、JRや阪急、阪神、地下鉄。まぁ百貨店とかもあるけど。」
「ナンパで家にお持ち帰りするパターンもあるだろ。」
「さっきお前も言っていたが、どちらかというと逆ナンの状況だっただろ?でもエスコートしてたのは男の方だった。」
思い返してみたら、確かに男の方が案内している様子だった。
「逆ナンしたけど、男の家に行くってことじゃねーの?」
「まぁな。でもな、どうも引っかかるんだよ。」
「何がですか?」
「・・・」
恵の質問に、間宮は答えずにいた。
「何が引っかかるんだよ?」
佐藤も答えを催促する。
「俺の仕事柄な。不思議な事ってのは結構ありふれてるんだよ。どこにでも。」
間宮は急に語り始めた。
「まぁそういう仕事だろ。不思議なことが全くなかったら飯が食えんだろ。」
「そういうことじゃなくて・・・。まぁ探せば今日みたいな事件は結構ごろごろしてる。」
「そんなもんなんですね。」
「で、たいていちゃんとした原因もあるんだよ。」
それはそうだろう。原因が無かったら現象は起こりえない。
今回の件もちゃんと調べれば原因は見つかるんだろう。
間宮が話を続ける。
「でもな、不思議な事って2個も3個も偶発しないんだよ。」
不思議な光に、突然現れた女・・・そのことを言いたいんだろうか。
「だけど、現に起こっただろ。」
佐藤が反論した。
「そうじゃなくてな。2個も3個も起こった場合、ちゃんと調べたらたいてい原因は同じだったりするんだよ。」
そういうことか。佐藤は納得した。
「要は、あの謎の光も、謎の女も繋がっていると言いたいのか?」
「ついでにあのどこか腑に落ちないナンパもな。」
確かにそう言われてみたらその方が納得できる。
全部が同じ原因で繋がっていたとしたら、何か全てが解決しそうな気がした。
「で、間宮さんは何を調べてるんですかそれ?」
「ああ、あいつらの向かった方向って駅方面だなって思ってな。そっちにもライブカメラあったと思ったんだよ。」
またもライブカメラ。
便利な反面、いつでも監視されている世の中になったものだ。
「あいつらが消えた時間からして、この位だろ。運が良ければ・・・」
そう言ってパソコンの画面を注視していた。
数分後。
「お、ビンゴだ。さっきのやつらだ。」
本当に現れるとは。マジで物騒な世の中だな。
だがこの手段は探偵の仕事にも活かせる機会がありそうだ。
今度どのあたりにライブカメラが多いのか調べておこう。
「ほんとだ。あ、こっちのカメラの方が画像大きいし鮮明ですね。」
「どれどれ、確かに。てか女の方可愛いな。」
「男の方は・・・思ってた通りナンパするようなタイプには見えないな。」
場面は屋内の大手百貨店前の大広間だった。
この地点を奥に向かって進んでいた。
「あっちの方に行くってことは・・・。」
「地下鉄か、阪神かですね。電車に向かっているならですけど。」
と恵が答えた。
「地下鉄も路線次第では手前で降りれるし、阪神の可能性が高いかもね。」
間宮はそう推理した。
「ならカズさんちょうどいいですね!」
言われる気がしたから黙っていたのに、恵が余計なことをしゃべり始めた。
「そうなのか?」
間宮も追撃してきた。
「カズさんの今のターゲット、阪神沿線の会社みたいですし、月曜日からまた張りますよね?」
「お、ちょうどいいな。ついでに」
「ついでなことは無いだろ!」
話が勝手に進みそうなので口を出した。
そもそも阪神電車に向かったって言うのは推測だ。
確実じゃない。
万が一阪神電車に乗っていたとしても、どの駅で降りたのかすらわからない。
しかも暇なわけじゃなく、ターゲットに張り付く必要がある。
全然ついでではない。
「あのなぁ。お前ら酒飲み過ぎだ。話としては楽しかったけど、そんな真剣にやる事か?」
佐藤は呆れながら二人を戒めた。
「でも見つけたら面白そうじゃないですか?」
恵はワクワクしたような表情で答えた。
こういう時、こいつは好奇心旺盛過ぎて困る。
「譲もなんか言えよ。」
「まぁ気にはなってるけどな。お前の言う通り現実的な案とは思ってないよ。」
「だろ?」
「でも一応、こいつらの画像送っておくわ。万が一張り込み中に見かけたりしたら教えてくれよ。」
「万が一もないってーの。今日はもうお開きにしようぜ。」
「えー、まだ飲み足りないのに~」
「大した情報も渡してないのに贅沢言うな。帰るぞ、めぐみん」
「めぐみんはやめて下さい。間宮さんごちそうさまでした。」
「はいよ。じゃあ、見かけたらその場で連絡くれよなー。飛んでいくから」
こいつはどこまで本気なんだろうか。
たまたまライブカメラに映っていただけの人物を現実で見つける。
そんな奇跡の様な現象が起こるわけない。
それこそ不思議体験かオカルト染みている。
そう思いながらも佐藤はどこか気にかかっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます