第23話

麻衣は浜町にあるbgカフェに一人で来ていた。

仕事終わり、カフェによって好きな本を読む、というのが麻衣の楽しみだった。

麻衣はキャラメルマキアートを一口飲んだ。

窓からはアーケードの通りが見下ろせる。通りは暗く、人々が歩いていくのが見える。

麻衣は門松くんと今週末出かけるんだった、と思い出した。

誘われたことは嬉しいけど、なぜか心がときめかない。

麻衣は門松くんと一緒にいて「楽しくない」ということに気づいてしまっていたのだった。

門松くんとデート(というのも恥ずかしい)をするよりも、こうやって一人で好きなことをしている時の方が気楽で楽しい。

最近読んでいる本、「旅のガラパゴス」を開いた。この本は主人公ガラパゴスが世界中を旅するお話だ。


「広大な砂漠をぬけるには、集団転移をするしかない。

2000キロメートルの大移動をしてモンゴリアを抜けるのだ。

ガラパゴスたちは遊牧民に別れを告げた。」


麻衣は見知らぬ砂漠にいた。

左隣を見ると、福山くんがいた。知らない人もいる。麻衣達は輪になって立っていた。どうやら一緒に旅をしている仲間のようだ。

辺り一面の砂漠。

遠くにぽつぽつと家のようなものが見える。

布で簡単に作られているもので、家と言うよりもテントといった方が早いかもしれない。

しかし、それ以外は何もない。ずっと遠くまで砂漠が続いている。

誰かが、

「これより、集団移転を行う。」

と言った。

「ここにいる20人の気を集めて一つにする。皆、精神を落ち着かせるのだ。準備は良いか?」

隣にいた福山くんが「はい!」と返事をした。

「よし、それでは、手を繋いで、気を一つにするのだ。」

手を繋いだ右隣の人を見ると、なんと平田さんだった。

「え、平田さん?やめてください!」と麻衣は咄嗟に言った。

すると平田さんは「大丈夫、いまは業務外だからな。はっはっは。」と言った。

麻衣は、「え、どういうこと!?」と言った。

誰かが、「大変だ、気が乱れている!」と叫んだ。「望月さん、集中してください!」「わ~、乱気流に巻き込まれる~~!!」


「・・・さま」

「おきゃくさま」


「はっ」


「おきゃくさま・・・もう九時で閉店となりますので・・・」


「あ・・・はは」


気が付いたら、テーブルにうつ伏せになって眠っていた。

周りを見ると、麻衣以外の客は皆帰っていた。







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