第19話

「今週末におくんちっていうお祭りがあるらしいんだけど、一緒に行かない?」

門松くんからのライン。

お祭り・・・

これまたカップルにふさわしいイベントだ。

長崎はただでさえ出かける場所が少ない。普段退屈を持て余している若者にとって、こういうイベントは有難い。

「良いよ~。長崎くんちだよね。」

「そうそう!」

2人でお祭りに出かけるなんて私たちはなんて模範的なカップルなのだろう。いかにもカップルって感じで恥ずかしい。

お祭り当日、麻衣はバスに乗っていた。バスの中はいつもより人で賑わっている。窓の外の景色も人が多くて賑やかに見える。

「もしもし~、もうちょっとで駅着くよー。」

「はーい。俺ももうちょっとで着きそう。」

電話越しに聞こえる門松くんの声はいつもより楽しそうだ。お祭りの雰囲気は人の心をわくわくさせるのかもしれない。麻衣も浮かれた気持ちになっていた。

駅について歩道橋を渡っている。歩道橋の上からは丁度龍踊が見えた。


「あの奥から2番目の船がいつも俺が乗ってる船。」

「あー、、」

「分かる?!あの、コンテナがいっぱい積んであるやつ。」

「うん、、」あんまり分かんないけど。

私たちは出島ワーフにきていた。海沿いに色んなお店が並んでいる人気スポットだ。海や船を眺めながら食事をすることができる。私たちは屋台で買ったラムネを飲んみながら話していた。

「することないね、写真でも撮る?」と門松くん。2人でお祭りに行ったり、写真を撮ったりするのは、いかにも「カップル」という感じがしてこそばゆい。麻衣は写真を撮りながら、なんかこういうカップルいるよな、、と思っていた。

「出島ワーフきたことあるの?」と麻衣がきくと、門松くんは「あるよ。夜ご飯食べによく来る。ここのカフェのカレーよく食べるよ。」とすぐそこにあったカフェを指さした。

「ふうん。良いよね。雰囲気が。」と麻衣。門松くんと喋っていて気づいたことがある。話すことがないのだ。私って、普段どんな会話してるっけ?門松くんから話しかけてくることがあまりないのが気になった。いま何歳?とか、出身は?とかそういう質問で終わってしまう。なにこれ、クイズ?おしゃべりがしたいなあ。

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