第17話

「何する~?」「行くとこないよね~」「カラオケとか~?」私たちは公園のベンチに座って話していた。「昨日さ、門松くんとデートに行ったんだけどさ。」と麻衣。雫はうん、と頷いた。心地よい涼しい風が吹いて、雫のセミロングの髪を揺らした。麻衣が黙っていると、雫が「・・・どうだった?」ときいた。麻衣は「うん。デートは楽しかったんだけど。デートってなんでするんだろう、って思って。」真面目な顔をして麻衣がいうと雫はふふっと笑って、「どういう意味?」ときいた。「うーん、なんか、付き合うっていうことがよく分からないんだよね。」というと、雫が「確かに。分かるかも。」と言った。「なにこの時間?ってなるときあるよね。」と続けた。とりあえず門松くんと付き合えてほっとしたけど、私は本当に付き合いたかったのだろうか。門松くんのことを好きか嫌いかと言われれば嫌いではない。でも別に、2人でいちゃいちゃしたいとかはあんまり思わないし、デートしたいとも思わない。「デート」という言葉がなんだかこそばゆいし、そんなに知らない人といきなりカップルになるのはやはり違和感がある。雫は「でも、麻衣ちゃんは付き合いたかったんでしょ?」ときいた。麻衣は「たぶん・・・。」と答えた。麻衣は恋愛のこととなると途端に自信がなくなる。自分の意志よりも、こうすべきではないか、というのを考えてしまっている。それに、雫に彼氏がいたから、というのも心のどこかにはあった。雫にも彼氏がいるし、私も作った方が良いのかも、と無意識に思っていたのかもしれない。「考えすぎなんじゃないかな。みんな多分そんなに考えてないと思う。」と雫がいった。確かに、そこらへんを歩いているカップルはみんな楽しそうだ。麻衣も何も考えずに楽しむべきなのかもしれない。話すことがなくなって2人でスマホをいじっていた。麻衣は雫といる時間が好きだった。もし、女同士で付き合うのが普通だったら、雫と付き合いたい。麻衣はそもそも恋愛にあまり興味がないし、こだわりもない。女同士で付き合うのが普通だよ、といわれたら、何も疑問に持たずに雫と付き合うだろう。雫が、最近、ヴィジュアル系バンドにハマってるんだよね。と言った。「へえ~」と麻衣が答えると、雫が「聞いてみる?」といってイヤフォンを取り出した。うん、と言って、片方のイヤフォンを付けた。イヤフォンを片方ずつつけて2人で音楽をきいている。いよいよ、カップルみたいだ。イヤフォンからはボーカルの叫び声がきこえてきて激しい音がきこえている。他にも、雫がハマっているらしい「神聖かまってちゃん」の曲をきいた。雫の好きな曲は麻衣の趣味とは合わなかったが、面白かった。岡崎京子の漫画といい、神聖かまってちゃんといい、意外にも雫は激しいものが好きなのだった。

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