第14話
雫と一緒に帰っている。「すごいね、船乗りって。ふふふ。」と雫は笑った。麻衣は「珍しい体験」は実際に体験して話す側ではなく、聞く側でありたいと思った。そっちの方が気楽だし、無邪気に笑っている雫が羨ましい。(しかし、雫には彼氏がいるのでこんなに爽やかに笑っている雫も行為をしていると考えたら不思議だ)家に帰ってラインを見てみると、門松くんから「昨日はごめんね。」「あのあとちゃんと帰れた?」とラインが来ていた。何がごめんねなのだろう、と思った。麻衣はラインが来たことにとりあえずほっとして「帰れたよ~」と返事をした。すると、門松くんから電話がかかってきた。門松くんは「えっと、、、あんなことになっちゃったけど、付き合わない?麻衣ちゃんが良かったらだけど。なんていうか、、、普通に好き、なんだよね。」といった。相変わらず焦っているような早口で。告白の言葉は良いとは言えないけど、その言葉に嘘はないように思えた。電話の向こうで一人でやけに照れている様子の門松くん。顔まで想像できる。麻衣はなんとなく優しい気持ちになった。門松くんはこういうところがあるからずるい。麻衣は付き合うことにした。門松くんは「あの、、、会えるのは長崎にいる間だけになっちゃうかもしれないけど。あ、でもすぐにどっか行くとかはないから。たぶん。あと三か月くらいは長崎に居るから。あの、それでも良かったらなんだけど。」と続けた。麻衣はとりあえず関係が続くことにほっとしていた。門松くんが最後にいった、「あの、、、全然セックスとかしなくても良いし。普通にデートとかしたいし。」という言葉が引っかかった。悪気なく言ったことかもしれないが、なんで今更そんなことをいうのだろう。わざわざ言葉にして伝えるのは茶番じみている。麻衣の頭の中に「付き合う前に絶対セックスはするな!」という言葉がまた浮かんできた。
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