第3話

改めて向かい合うと恥ずかしい。休みの日にこうして一緒にお出かけするのは初めてだった。雫は「うふふっ」と笑った。麻衣は「雫ってインスタとかやってるの?」ときいた。雫は「やってるよ。全然フォローとかしてなけど。」そういうと、ふふっとまた笑った。雫は麻衣のアカウントをフォローしてくれた。雫が載せている写真は所謂、普通の女の子が載せている写真とは一味違っている。雫の後ろ姿をモノクロで撮っている写真。机の上に缶が置いてある写真。あまり映えている写真を撮ろうとしないところが、雫っぽい。麻衣が「なにこれ?」ときくと、「あ、それ、缶のコーラがあったから。撮ってみよーって思って、撮ったの。」雫はそういうと恥ずかしそうに笑った。麻衣も、「どういうこと?」と言って笑った。「あ、この漫画知ってる。」写真に写っていたのは岡崎京子のrivers edgeという漫画だ。雫は「そうそう、岡崎京子。」と言った。そして、「この人の漫画、好きなのー。」と続けた。rivers edgeは、麻衣が高校生の時にサブカルに詳しい友達に教えてもらった漫画だ。本屋さんに置いてあったので有名な漫画だとは思うが、友達の中で知っている人は少なかった。80年代の漫画だからというのもあるのかもしれない。そういえば、この漫画を教えてくれた友達も岡崎京子のファンだった。麻衣は「岡崎京子知っている人って少なくない?」と続けた。雫は、「うん、周りに好きな人いない。」と言って笑った。麻衣は正直、あまりこの漫画は好きでは無かった。暴力的なシーンがあるからだ。しかし、印象に残った作品であったのは確かだ。普段おっとりしている雫がこういう刺激的な漫画を好んで読んでいるということに驚いた。カフェに行ってから、麻衣と雫は帰ることにした。雫は実家住みなのであまり遅くまでは遊べないのだった。

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