第46話 壊れた記憶(6)第三者視点
――コンコン
クララの寝室にノックの音が響く。
「父上ですか……」
扉を開け室内に貼ってきたのは、オイゲンであった。
その後ろには、パトリックの母親であるディアナも立っていた。
すでに時刻は深夜。
室内な、ランタンの灯りで薄暗い。
クララの両親は静かにベッドの傍まで移動する。
「クララ……」
ディアナは、絨毯に膝をつくと眠りについているクララの手を握ると、体を震わせていた。
その様子を見えとったオイゲンとパトリックは退室する。
「父上。母上のあのような御姿を拝見するのは」
「初めてか?」
「はい」
「だろうな。だが、元々は、とても涙もろい令嬢であった」
「そうなのですか。とても、そのようには――」
「男爵家から嫁いできた時には色々とあったからな。親類縁者から、公爵家の正妻として侮られないように立ち振る舞ってきたから、分からなかっただけだろう」
「男爵家からですか?」
「ああ。元々は、ディアナと出会ったのは貴族学院だったからな」
「そうだったのですか……。そのような話は初めて聞きました」
「だから娘が王室に迎えられるとなった時には、ディアナの反対は、それは酷いモノだった。5歳という幼少で、たった一人で生活するという心細さを、ディアナは考えていたからな」
「ですが……」
「ああ、聖女としての力を持ち、そして公爵家に生まれた者として、甘えは許されない。ディアナを説得するのは本当に大変だったが……、それで幸せになってくれれば良かったが、実際はこのざまだ」
「父上、それでは、これからどうなさいますか?」
「まずは、ラインハルト王太子殿下と繋がっていたユリエールと言う娘だが、どうやら精霊神教が匿っているという可能性が非常に高い。それは分かっているな?」
「はい。目撃者の報告によると枢機卿が国境沿いで確認されたと」
「うむ。とりあえずは、陛下よりクララの容態の改善を任されている。それなりの裁量を得てな」
「――と、いうことは……」
「教会関係者を、どうにか洗ってラインハルト王太子殿下の身の真偽を覆い尽くすしかない」
「身の潔白を白日の下に晒すのではないのですね」
「もちろんだ。そのような事をしても一度でも疑いの眼差しを向けられた者は信頼を勝ち取るのは難しい」
「それでしたら、きちんとしたストーリーを作った上で」
パトリックのその言葉に、オイゲンは頷く。
「民衆から支持が受けられるように立ち振る舞う事が重要になる」
「逆に、それをしなければラインハルト王太子殿下の死刑は免れないと――」
「うむ。もし、ラインハルト王太子殿下が死刑になれば娘がどうなるか分からないからな」
「そうですね……」
一度、自殺未遂を起こしている娘。
もしラインハルトが処刑されたら、どうなるのか想像もつかないと深くオイゲンは溜息をつく。
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