第43話 壊れた記憶(3)第三者視点

「クララが!?」

「娘が――?」

「聖女は無事なのか?」


 三者三様、驚きの表情を浮かべると共に、クラウス陛下は冷静を装いながら文官に報告を促す。


「はい。従者が、早めに発見したことで一命をとりとめたとのことです」


 その文官の言葉に、パトリックとオイゲンは立ち上がりかけていたソファーへと腰を下ろす。


「父上、邸宅に戻りたく思います。体に傷が残ってしまえばクララも気にすると思いますので」

「うむ。分かった」


 パトリックが、立ち上がり扉から出ていくところで――。


「魔法師団団長」

「何でしょうか? 陛下」

「聖女に、心残りを残さぬように愚息と合わせるようにしたことは間違っていたと思うか?」

「それは分かりませんが。ですが――、自身の子供を平気で切り捨てるような行いをするのを妹は出来なかったのでしょう」

「パトリック――」


 捉えようによっては王家への批判とも言える言葉を紡いだパトリックに対して、マルク公爵家当主であるオイゲンは窘めるように語る。


「オイゲン、良い。パトリック行くとよい」

「陛下。それでは失礼致します」


 文官も、パトリックの後を追うようにして部屋から出ていく。

 扉が閉まったあと。


「申し訳ありません。陛下」

「…………のう、オイゲン」

「はい」

「儂は間違っていたと思うか?」

「王として、そして貴族として間違ってはいないかと」

「だが、人として間違っているのかも知れぬな」

「人としてですか……」

「うむ。王や貴族というのは、国を動かすための歯車の一つに過ぎない。そこには、感情を差し込む必要はない。だが――」

「娘は、そうでは無かったと言う事ですか」

「そうなる」

「陛下、ですが――。そのようなことでは――」

「分かっておる。隣国からの使節団が到着する時間もない。そうなれば……」

「――では、陛下」

「何か良い案でもあるのか? オイゲン」

「娘のことですが、一度、ラインハルト様と合わせて見ては如何でしょうか?」

「だが、それは――」

「分かっています。ですが、国同士の約束事を守れないというのは、内政介入の足掛かりにされる可能性があります。そのため荒療治となりますが……」

「分かった。オイゲン。お前にラインハルトの件は任せよう」

「分かりました」





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