第24話 王太子殿下との密会(2)
お母様との会話のあと、私は部屋へと戻り手紙を認める。
送り先は、教皇様。
一応、表立ては聖女と行動する事になるので、今後のことを含めての対談を持ちたいという理由から。
「クララ!」
教皇様への手紙を書き終えたところで、扉が音を立てて開かれた。
「――お、お兄様!?」
私は慌てて認めが手紙を背中に隠す。
それと共に口を開く。
「淑女の部屋にノックもせずに入室してくるのは問題と存じますけど?」
自分が何をしているのか悟られたのか分からないけど、とりあえずお兄様には部屋から出ていってもらい万全な状況で応対しようと心がけることにする。
「すまなかったな」
「いえ。それより、扉を閉めて頂けますか? すぐに用意致しますので」
紳士として社交界でも有名なパトリックお兄様が、妹の部屋とは言えノックも無しのまま、入ってくる理由は一つしか思い浮かばない。
私は、手紙を封筒に入れたあと封蝋する。
あとは、教会側へエイナ経由で持っていってもらえばいいだけ。
手紙をベッドの枕の下に入れたあと、私は自室の扉を開ける。
「お兄様、お待たせしました」
「ああ……。すまなかったな」
「いえ。お急ぎのようだったのでしょう?」
「そうだな。それでは、失礼する」
そう一言断りを入れてくるお兄様。
「お兄様、時間が掛かる話でしょうか?」
「そうでもないが……」
その割には、お兄様は肩で息をしている。
かなり急いで屋敷に帰ってきたというのは一目で分かってしまう。
「エイナ。お茶の用意を」
「畏まりました」
丁度、部屋の前を通りがかったエイナに指示を出す。
「それでは、お兄様。バルコニーの方でお話など如何でしょうか? 本日は、晴天と言うこともありますけど、気候も穏やかですので、気分転換になられると思います」
「……気分転換か」
「はい」
私の言葉に、お兄様は小さく溜息をつくと、部屋に備え付けられているバルコニーへと出ていく。
私も、バルコニーへと出て椅子に座る。
目の前には、白の大理石のテーブルが置かれており、繊細な細工が施されている。
しばらくするとエイナが、お茶の用意をしてくれた。
「エイナ、また腕を上げたね」
「ありがとうございます」
一口、口に含んだかと思うとエイナに対して声をかけるお兄様。
「お兄様」
「何だ? クララ」
「エイナは、普段は私付きの従者ですが、お兄様はエイナとは親しい仲なのですか?」
「ふむ……。どうして、そう思うんだい?」
「お茶の味について話されておりましたので」
「なるほど……。そうだな、たしかにエイナとは、それなりに面識はある」
「それは、マルク公爵邸で? と言う話でしょうか?」
「城内の方が近いな。クララの生活圏は主に王城内だっただろう?」
「はい」
それは、そうだけど……。
ただ、腑に落ちない部分はあるのだけど……。
「それよりも、いまはそのことよりも……。クララ、どうして精霊神教へ聖女としての許可を取りにいったんだ?」
お兄様は、真っ直ぐに私の瞳を見て、そう語り掛けてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます