第25話 王太子殿下との密会(3)
「ラインハルト様を、お救いする為です」
「だろうな……」
即答。
まるで、私の答えが分かっていたかのような口ぶり。
「お兄様」
「ああ、すまないな。クララが、距離を置いていた精霊神教に赴いてまでする事と言えば、一つだけだとは分かっていたが、誘導尋問みたいな真似はしたくなかった。だから、敢えて聞いたんだが……」
バツが悪そうな声色で答えてくるお兄様。
ただ、その表情からは何も感情も察することは出来ない。
「――で、私の妹は王太子殿下を救うために教会の力を借りる為に、総本山に向かって戻ってきたということか」
「はい」
すでに話しぶりからして、私が聖女として教会側へ認知された事は知っているようなので、端的に肯定の意を示すだけに留める。
「そうか……」
そう呟くお兄様。
そして、一呼吸置いて深く溜息をつく。
「クララ、よく聞きなさい」
「お兄様?」
先ほどまでの雰囲気とは打って変わったお兄様に、内心では首を傾げてしまう。
それと同時に真剣な面持ちに、私は何か重要なことを話されるのでは? と、察してしまった。
「クララ」
「はい」
「ラインハルト殿下は……、いや――、ラインハルトは、クララが心を砕く価値なぞ無い男だ」
「――え?」
王太子殿下であるラインハルト様の名前を呼び捨てにしてきたお兄様に私は一瞬、驚いてしまう。
そして、どうして呼び捨てなの? と、思考していたところで――、
「ラインハルトは、クララには一切、愛情は無いと発言した」
「愛情が無いって……。そんな言葉をラインハルト様が仰るわけがありません」
「だが、事実だ」
お兄様は真剣な表情で私に向けて語りかけてくる。
「それは、ラインハルト様から直接言われたことですか?」
「ああ、そうだ。ラインハルトは、クララを愛していないし、何とも思っていない。だから、別の王族との婚姻をと言っていた」
「お兄様、ラインハルト様の件に関しましては、私は冗談として受け取ることはできません。第一、ラインハルト様が、そのような事を話されるわけが……」
私の知っているラインハルト様は、私を大事にしてくれた。
愛しているという言葉は、とても少なかったけど、それでも私を想ってくださっていた事は、その雰囲気や心遣いから十分すぎるほど理解できた。
だから、ラインハルト様が、私を愛していないというのは……絶対にないと断言できる。
「クララ、信じたくないのは分かる。だが、本当のことだ」
「信じられません!」
私は、思わず椅子から立ち上がり声を荒げてしまう。
だって、彼が――、私のことを愛していない何て言うはずがないもの。
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