第11話 一縷の望み(1)
「――んっ……」
いつの間にか、私は寝てしまっていたのか部屋の中へ入ってくる太陽の日差しで目を覚ました。
私は、ベッドで横になったまま何もする気がおきない。
一人、部屋の窓から見える外の風景――、薔薇へ視線を向けつつ、ラインハルト様のことを思う。
昨日、届けられた手紙の内容。
そこから考えられること。
「ラインハルト様……」
私が貴族の淑女として、彼を――、ラインハルト様を助ける術はない。
どんなに考えを巡らしても――。
「貴族の立場では、ラインハルト様を助けることはできないのよね。それなら――」
そこまで考えたところで、一つだけ方法があった事に思い至る。
それは貴族ではなく聖女として、国王陛下へ異議を申し立てる方法。
ただ、私の籍はあくまでも貴族籍。
聖女としての力は持っていても、身分は貴族籍であり、聖女の立場となる為には貴族籍を捨てなければいけない。
――でも……、万の一の可能性がラインハルト様を助けることができる。
そんな可能性があるだけで、いまは十分。
ただ、聖女の身分で国王陛下に謁見する場合は一つ問題がある。
それは、聖女は神に自分の身を捧げるという戒律がある為に、一度でも聖女としての立場を表明すれば、私はラインハルト様と結ばれることはないということ。
「……私は」
ラインハルト様に生きていてほしい。
たとえ、この身を犠牲しても。
それに……、聖女として教会に承認されれば、国もマルク公爵家を断罪することはできない。
何せ、聖女は民に慕われる存在なのだから。
お兄様も立身出世にも、きっと役に立つし、聖女を出した家柄ということで公爵家にも箔がつく。
ただ、国王陛下や王妃様からは妃教育を長年受けてきた私に良い感情を抱かないのは理解できる。
「やっぱり、彼を助けたい」
そうなると、まずは教会へ行き枢機卿に話をしないと。
きっと余計な行動を取ることを、お父様やお兄様、お母様も良しとはしないと思う。
そうなると、誰にも気がつかれないように教会までいかないと。
きっと私が起きたことに誰も気がついていないと思うから、まずは洋服の調達をしないといけない。
何度も町中を馬車で通っていたから平民の方の服装は熟知している。
私の部屋のクローゼットには室内用と外行き用のドレスしかなく、全てが絹製品という事もあり、着て町中に出たら、すぐに身分が分かってしまう。
まずは、公爵家に仕えているメイドの方から洋服を借りるとしましょう。
私は、静かに部屋の扉を開けると、周囲を確認する。
幸い、部屋の外には誰もいない。
物音を建てずに私は自室から廊下へ出たあと、使用人が使っている部屋へと向かう。
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