第12話 ドラゴンの解体は大変なようです。
ドラゴンの切り分け作業は、昼を過ぎ――、夕方を過ぎて、ようやく終わりを迎えることになった。
作業が終わる頃には、冒険者の人達も最初の勢いはどこへやら、ドラゴン解体に伴う疲労から剣を振るいドラゴンを切り分ける作業にも殆ど力が入っていなかった。
「エミ!」
ぼーっと、作業を見ていた私やユーリエさんは、暇を持て余し近くの木を伐採した。
そして人が座れるように枝を切り落とし横倒しにして人が簡易的に座れる丸太椅子を幾つか作り、休憩していた。
そんな中で、スパークさんが私を呼ぶ声が聞こえてくる。
とりあえず私は立ち上がりスパークさんの方へと向かう。
何か問題が発生したの? と、思いつつ――。
「スパークさん。どうかしましたか?」
「じつはエミは魔術師だったよな?」
「見習いですけど……、どうして今更、そんなことを?」
「――いや、これだけのドラゴンを一人で倒すからな……、少し俺の中での魔術師の常識が……」
「まぁうちの村では普通でしたし……、なんなら国を一撃で消し飛ばす人もいましたし」
「……何だか頭が痛くなってきたな」
まぁ正確には核爆弾や核ミサイルICBMと呼ばれるモノがあるので、人ではないけど、遠からず近からずと言ったところでしょう。
それを訂正するつもりはありませんけどね。
「――で、私に何か用でも?」
「実はドラゴンを切り分ける作業を手伝ってほしいんだ。冒険者の得物も、もう切れ味がな……」
「そういうことですか。でも、私には、難しいかと……」
あくまでも私の攻撃魔法とか回復魔法は現代日本の科学技術の延長というか、そういう知識の上で成り立ったモノにすぎない。
つまり科学的事象に関して言えば無類の強さを誇るかも知れないけど、それ以外――、科学的顕著が済んでいない本当の魔法を扱う事は出来ないのです。
「ドラゴンを倒す魔術が使えるのにか?」
「はい。細かい作業には向いていないので……」
モノを必要としない科学の力というのは基本的に自然を利用するものなので、その効果範囲は大雑把だったりする。
言わば細かい作業に関しては何かしらの工業的な刀とか包丁とかチェンソーなどが必要になるのです。
「あの、それでしたら冒険者の方の武器を私が強化しましょうか? 私とか慣れていない人が強化するよりも、ずっといいと思いますので」
「エミは、付与術師でもあるのか?」
「付与術師が何かは分かりませんけど、とりあえずやってみます?」
「そうだな……」
「そしたら、アネットさんの武器からまずは――」
「おい! アネット!」
「スパークさん、どうしたんだ?」
「エミが、お前の武器を強化してくれるらしい。得物は大事な商売道具だというのは分かっているが渡してもらえるか?」
「……分かった。エミには命を救われたからな」
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