第13話 解体は冒険者のお仕事なので武器を強化しました。
鞘ごと私に差し出してくるアネットさん。
受け取ると、ズシッ! と、言う重さが両手に伝わってくる。
とてもではないけど、身体強化してないと持ったままでは、まともに動けない。
「少しお借りしますね」
私は身体強化の魔術を使いながら鞘から剣を抜く。
「これはブロードソードでいいのですか?」
「ああ、そうだな」
アネットさんに確認しながら刃先へと視線を向けるけど、ドラゴンを解体する為に、かなり使い込んだのか刃先はボロボロ。
「ここまで刃先が酷いと研いだりするんですか?」
「研ぐとは?」
「――え?」
私は思わず首を傾げてしまう。
もしかして……、この世界には研ぐという文化がない?
「えっと、アネットさん」
「何だ?」
「刃物の切れ味が悪くなった時って、どうしていますか?」
「それは、血や油がついているからだろう? なら、それを洗い落とす感じだが?」
「つまり砥石とかを使ったりしないのですか?」
「エミ、砥石なんて武器を作る仕上げの工程の最後しか使わないぞ。武器職人しか砥石は持っていない」
私の疑問に答えてきたのはスパークさん。
その言葉に私はショックを受けながらも、言葉を紡ぐ。
「そ、そうなのですか。それなら、これだけ刃先が欠けたら……」
「買い直しか、溶かして作り直しだな」
「そうなのですか」
何ともったいない。
砥石業をしたら、儲かりそうですね。
砥石専門店とか、研ぎ店とか始めるのも良いかも知れないですね。
「どうして、そんなことを聞くんだ?」
スパークさんが不思議そうな顔で私を見てくる。
「魔術師だからか?」
そして、アネットさんもスパークさんの言葉に頷きながら、私を不思議ちゃん扱いしてきます。
とりあえず私は、深呼吸をしてから、身体強化魔術を維持したまま――、
「それでは、まずは――えいっ!」
「なっ!?」
「なにっ!?」
地面にブロードソードの刃先を差す。
そして地中に存在する鉱物を頭の中に思い浮かべる。
日本に住んでいた時に、大学の理系のサークルメンバーの中には日本刀を愛する人が良くいて、良く自論を頼みもしないのに何度も何度も耳タコになるくらいまで話していたので、大体の鋼の成分は覚えているので、それを参考に地中の鉱物を集め刃先を構成。
さらに切れ味を良くするために、刃先を高速振動するように設定。
そのエネルギーの供給源は生体電流を利用することに。
さらに安全装置を付ける為に、指紋登録認証式にする。
「アネットさん。ちょっといいですか?」
「――ん?」
「この柄の部分を握っていてください」
「――? ああ、わかった」
全ての工程を頭の中でシュミレート――、事象として計算し、地面に両手をつく。
「刀剣、錬成!」
叫ぶけど、特に何も周囲に変った様子はないけど。
「アネットさん。剣を抜いてもらえますか?」
「ああ……」
彼女が、地中から刃先を抜き出した刀剣は、綺麗に復元されていて、ブーンと小さな音を奏でています。
「おお、刃先が復元されているぞ!?」
「とりあえず、それで、解体中のドラゴンを解体してもらえますか?」
「分かった」
アネットさんは頷き、ブロードソードを振るう。
「これはすごいぞ! エミ! 何の抵抗もなくドラゴンが切れる! 鱗も!」
「鱗は高く売れるから斬ったらダメだぞ!」
そこでスパークさんが止めに入る。
「それにしても、エミはすごい魔術師で付与術師なんだな」
「いえいえ。それほどでも……。うちの村ではありふれたモノですから」
「エミの村っていったい……」
「とにかく、その剣はアネットさん以外では、そこまでの切れ味は出せなくなりますので。簡単に言えば、アネットさんが持って使わないと、普通の剣よりも強度は3倍くらいあって、3倍くらい切れ味のある武器程度しかないです」
「――いや、それだけでも十分なんだが……」
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