第4話 路銀がありませんので冒険者ギルドでお金を稼ぎます。

 街道を走ること数刻で王都から一番近くの宿場町に到着したのだけれど、一つ問題が起きてしまいました。

 それは……。


「お嬢様、お金がありません」

「……ですよね」


 基本的に、私が通っていた貴族院では、在籍している貴族の子弟や仕えているメイドは、主である貴族の家名で食事や衣料品などを貴族院内のお店で購入するため、金銭などは殆ど持ち歩くことはない。


「困りましたね」

「はい。ですが、ここの宿場町には冒険者ギルドがありますので多少の日銭を稼ぐことは可能です」

「本当ですか!?」


 冒険者! それは、私が憧れているお仕事。

 ダンジョンに入って色々なモノを見て回って報酬が貰えると、王妃教育の時に教わったことがある。

 なんてすばらしい職業でしょう!


「はい。エリーゼ様には、大変、心苦しい思いをさせるかと思いますが、しばらく冒険者ギルドの中でお待ち頂けますでしょうか?」

「それって、ウルリカが稼いでくるってこと?」

「だめよ! 私も、ウルリカの手伝いをするわ!」

「――ですが、公爵家の御令嬢ともあろう御方が……」

「大丈夫! ほら! いまは、どこから見ても町娘の恰好だから大丈夫」

「いえ。絹で裁縫された服を着ていますので……」


 ウルリカが、ボソッと小さく呟いているけれど、私もお金を使うのだから、ウルリカ一人に稼いでもらう訳にはいきません。


「えっと……」


 私は、冒険者ギルドの建物の中に入る為に扉に手を伸ばす。

 扉を開けると清潔そうなカウンターが、目の前に飛び込んでくる。

 右手には長椅子や長テーブルが置かれていて何人もの男女の方々が談笑しています。


「王妃の教育を受けていた時には、昼からお酒を飲んでいる方もいるって教えてもらったのだけれど、そんな感じはしないのね」

「王都から近いですから。その辺は、指導がキチンと入っているのです」

「そうなのね。――あ、向こうにあるのが噂の掲示板?」

「どのような噂かは知りませんが、早急な仕事を依頼する場合に依頼を貼りだす掲示板になります」

「色々と考えているのね。それじゃ、急ぎの仕事でない場合は?」

「そちらに関しては、直接に窓口へ行きギルド受付嬢に仕事を斡旋してもらう形になります」


 私は、掲示板に書かれている内容を見ながら首を傾げる。


「ねえ? ウルリカ。この依頼とかどう? 薬草の採取とか結構、価格高いわよ?」

「エリーゼ様。薬草は、そんなに生えていませんので、この数になりますと時間がかかりますので、そこで早急の依頼という事で掲示板に張られていると思います」

「そうなのね……あれ? 薬草って、怪我の治療とかで使うのよね?」

「はい。そうですが――」

「私! 回復魔法使えるから、薬草の代わりに治療をすれば、すぐにお金稼げるんじゃないの?」

「たしかに――。ですが、いいのですか?」

「何が?」

「回復魔法は希少なモノです。このような場で使うのは――」

「――でも、怪我をしている方がいるのよね? それなら、早く治療した方がいいと思うわ。痛いのは誰でも嫌ですもの」

「……分かりました。それでは、確認して参ります」


 ウルリカが、冒険者ギルドの受付嬢に確認しに行き――、


「エリーゼ様、回復魔法でも問題ないという事です。ただ、冒険者ギルドの方は驚いていましたが」

「そう! それなら、怪我をして困っている人を助けましょう!」


 

 


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