二股疑惑
(企画部長Aが営業部長Dに秘密を暴かれコーヒーをデスクにぶちまけた週の金曜、終業後。社員もまばらになったフロア)
A「(残業中の課長Bのデスクに歩み寄りぼそっと)Bくん、お疲れ様。
このあと、少し時間あるか?」
B「……(PC画面からばっと顔を上げAを見る)……えっ……
……もっもしかして、とうとう僕の腕に陥ちる決心をしてくださったんですか」
A「(美しく微笑み)この前飲んでからろくな会話もしてないのになんでそうなる?」
B「はいですよね」
A「まあ、その件と関係なくもない話なのだが……君、今回のことをまさか誰かに喋ったりはしてないよな?」
B「(キッとして)当然です。こんな極秘事項を誰かに喋るはずないじゃないですか」
A「だよな……じゃあなぜ……」
(背後にふと気配を感じ、振り返るA。後ろにC美が何となくもじもじ)
A「(微妙に慌ててBのデスクの前を退く)ああ、課長に用事かい?」
C美「あ、部長、済みません。急ぎじゃありませんから……」
A「いや、もう用は済んだよ。じゃあBくん、この前の店で、後でな」
B「了解です」
C美「……(Bのデスク前におずおずと進み、Bをじっと見つめる)あの、課長」
B「ん、どうしたC美さん? 何か仕事上のトラブルか?」
C美「いえ……(赤くなって一層もじもじ)先日の課長からのお話に、まだちゃんとお返事できていなかったので……でも、やっと気持ちが決まりました」
B「ん、お話? お返事??」
A「……(C美の話が耳に届き、ピクリと肩を揺らして思わず立ち止まる)」
C美「はい。課長の口説き文句があまりに情熱的で、なんだか夢みたいで信じられなくて……あの、近いうちに、二人だけでお話できる時間をいただけないでしょうか?(上気した頬を両手で包んでポワポワと恥じらう)」
A「…………(肩越しに振り返り、険しい目つきでBを見る)」
B「(激しく動揺)え、待って。僕が君に口説き文句……?」
C美「あ、会社でこんな話できるはずありませんよね。(と言いつつメモ書きを渡す)私の番号とアドレスです。お時間のあるときにご連絡ください。私は何時でも大丈夫です、うふふっ♡♡
じゃ、お先に失礼します♪お疲れ様でした〜♡(と微笑んで弾むようにフロアを出る)」
B「……(C美がフロアを出たと同時に顔面蒼白でAの背に駆け寄る)部長! 違うんです、これは何かの誤解というか行き違いというか……僕にもよくわからないんですがとにかく二股かけるなんてことは間違っても……!!」
A「ほう。じゃ今のC美さんの言葉は私の聞き違いかな?(振り向いてにっと冷ややかに微笑)私も君に二股をかけられるつもりは毛頭ない。その辺も含めて、この後じっくり話そうじゃないか。店で待ってるよ(と言い残してフロアを出る)」
B「……なんだこの展開……
今の部長の笑みがめっちゃ怖いんだが……!!!!?」
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