マジか!

(ある昼、社員食堂で)

美人営業部長D「(ひとつ空いていたテーブルに座りつつ)あー。たまに来るとうるさいわね〜相変わらず混んでるし。ここしか空いてないわ……」

部長の隣の席でお喋りする女子軍「ねえーーC美、あんた企画部のバリバリイケメン課長に告られたってマジ!?」

C美「(恥ずかしげに)……うん、そうなの♡ はっきりしたお返事はまだできていないんだけど……うふふ♪」

C美の友人「うっそでしょーーなんか勘違いしてるんじゃないのー? よりによってあんたみたいな地味で平凡な女子にあの課長が告るとか、あり得ないんだけど!?」

C美「誰になんと言われてもいいの♡ 私とB課長の仲はもう誰にも引き裂けないんだから……!」

友人「へえ〜。じゃ、ぶっちゃけどういうシチュでなんて告られたか言ってみなさいよぉ」

C美「(もじもじしつつ)……あのね、この前課長が、ものすごく情熱的な口説き文句80パターンをずらっと紙に打ち出した束を私に見せてくれて。『君ならどれを選ぶ?』って」

友人「……(信じられないように口をパカッと開けて)……ウソでしょ……?」

C美「でね、『これがいいと思います』って答えたら、『じゃあそれを君にあげるよ♡』だって……キャーーーーっっっ思い出すだけで心臓壊れるっ!!!」


営業部長D「ブフううっっっ!!!!(その会話を全部聴き終え、耐えきれず飲んでいたコーヒーを思わず吹く)」


C美「(驚いて振り返り)え、営業部長……!? だ、大丈夫ですか!!?」

D「(社内ではバリバリいい女のふりをしているため、バッグからスラリとレースのハンカチを出して口元を拭う)ええ、大丈夫よ、なんでもないわ……

『ってか今のエピソード、この前企画部長Aから聞いたやつそのまんまじゃんか……そんなアホなことやるやつそうそういないよね……

 ってことは、Aに告った相手って……企画部課長Bってこと!?? マジか……!?

 そしてC美ちゃんは自分が告られたとがっつり誤解してる。それが全部Aにダメ出しされたボツネタだとはつゆ知らず……うあ〜面白すぎるコレ!!!』」


(その午後)

営業部長D「(企画部フロアへ入り、Aのデスクの前へ)企画部長、先日依頼された資料揃ったので持ってきたわよ。確認お願いします」

A「ああ、済まないな。ありがとう」

D「……(Aの耳元でこそっと)ねえ。この前あんたに告ったアホな相手って、もしかしてここの課長のB君?」

A「(デスクの上のコーヒーを思わずひっくり返す)」

課長B「(その様子に気づきガタッと立ち上がり)部長!? 大丈夫ですか!?」

D「うーん、大丈夫じゃないみたいよ。さすがBくん、よく見てるわね♡

 じゃ、あとはお願いね。お邪魔しました〜〜♪」

B「(自分のハンカチで机上のコーヒーを拭きつつ)あの、部長……どうされました??」

A「(激しく狼狽)い、いいから。なんでもないから!! 君は仕事戻りなさい!!『な、なんで知ってる……なんで!!??』」


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