想像以上

(ダンディ部長Aとイケメン有能課長Bの初対面挨拶から約ひと月後、執務室)

「失礼いたします。

 部長、例の件について至急ご確認いただきたいと思いまして」

「ん、例の件……何の件だ?

(資料を受け取ってめくる)…………」

「睡眠時間を1日あたり2時間削って作成した口説き文句80パターンです。

 あなたの提示した口説き文句の目標点数は80点。1パターン1点だとしても、トータルすれば80点を満たすかと思われます」


「——君、本気か」

「ですから本気だと」


「……(引き続き目を通す)

 1パターン0.5点だったらどうなるんだ?」


「…………」

「……っていうか0点」

「えっ」

「(キッと鋭い視線を上げる)口説き文句をパソコンでこうやってパカパカ紙に打ち出して恋する相手に提案するアホがどこにいるんだ?」

「——失策でしょうか」

「明らかにな。というかクビ寸前だ。

 ただ……」

「……ただ?」

「1日あたり2時間×30日=60時間分睡眠を削った努力を点数に換算してやる。

 従って5点」


「……(悔しげに唇を噛む)」


「……(ため息)

 なあ。諦めたらどうだ?」

「(きっと顔を上げ)嫌ですっっ!! 絶対80点取ってみせます!!!」

「って中学生か」

「違います!! 今年40ですから!!!」

「……(微妙に困惑顔)ああ、そう」



『……ああ、部長の困惑顔……想像以上だ……

 こうなったら部長のマジな困惑顔絶対見てやるっっ!!!』

『仕事面の有能さは噂通りだが、どうやら恋愛方面のセンスはゼロに近いようだ……

 というかそのアホっぷりが予想をはるかに上回ってかわいいんだが……』


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