第33話
「爆発するよ!」
「莫迦! 何やってる!」
「離れて!」
「うわぁぁぁ!」
各々の声が錯綜している間。ムラベは走って疲労した体に鞭を打ちながらハナエを庇うように覆いかぶさる。ワタリは爆風を予期してナガトの盾となるよう抱きしめた。
同時に。
銀色の物体は落下して地面を軽くえぐる音を鳴らすと、ゴロゴロ転がり静かになった。
「…………」
「あれ?」
「びっくり、した」
「どうして?」
「不発?」
「まさか?」
「あれは爆弾じゃないの?」
「いや、あれ?」
「立てるかい?」
ムラベはハナエの手を取った。
「ご、ごめんさい。ワタクシ、ワタクシみなさんを巻き込んで」
謝罪しながら震える肩にムラベはそっと触れた。
「みなさん。ごめんなさい。ボクからも謝罪します」
「いいえ、ムラベは」
「ハナエ、今後は気をつけないとね。でも、みんな無事でよかった」
彼はほっとした顔をして、口を開いた。
「笑ってはいけないけど。ハナエらしいね。今回はそれがよい方向に動いたよ。色々とボクが追い詰めたみたいだ。ごめん」
ハナエは首を振った。
「伝えとけばよかった。絹糸がどうして足りなくて、ここまでワタリと手に入れに来たんだ。ボク旅が不得意なのハナエは知ってるよね? だから、ワタリと一緒だったんだ。それに義手をボクに依頼したのはワタリだったし」
「え?」
「余計なことは云うな」
「だから、まあ。あれ、どこいった?」
騒ぎで転がってしまっていた義手は運よく布に包まれて地面に転がっている。それをムラベは拾った。
彼は柔らかく彼女に近づくと器用に義手を体に取り付ける。取り付ける所作は品位に満ちていて、左腕が戻った女性の姿は神聖な心を伝播させるような慈愛に満ちていた。
「ぴったりだ」
彼は云う。
「君の言う通り味方が多くいるといいね。それでハナエが協力してくれると助かるんだけど。いいでしょ?」
「ワタクシは、ワタクシは」
彼女は彼をぎゅっと両手で抱きしめた。そんな二人を二人が見つめながら、夜の帳が下りていく。遠くから懐かしい気配がする。猛獣に似た気配は彼らを祝福する大鼓のようだった。
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