第34話

 ナガトに伝えたように人が人に心を晒すのは容易じゃない。会話があったとしてもずっと全てを話続けていられるわけじゃない。行き違いが起こっていくのは当然で、思想が違っていいるのも普通で、だから、大きな小さな喧嘩が生物の数ほど起こるのはむべなるかな。


 けれども、だれけども。


 自分勝手に言えば、喧嘩と同じぐらい仲直りもあると思う。仲直りができた大人物たちは前へ進む原動力を大きくするのではないだろうか。彼らのような志を持った多くの人が集まれば、いまとは違った世の中が生まれるのかもしれない。



「ねぇ、ねぇ。ワタリ。ワタシが言える立場じゃないけど、何を見せられてるの?」

「ああ、ナガトすまない。少しジブンたちはすれ違いがあったようでな」

「そうだったんだね。それで仲直りしたの?」

「したな」

「そっか。良かったね!」

「それでナガトの村を救う算段が付けられたかもしれない」

「えっ? そうなの?」

「確実ではないが少しだけ可能性が高くなった。絶対だと言ってやれないが」

「やっぱり、お金がないときつい?」

「そうだな。全員でここを離れるには村人全員の食事や用具などの準備に資金が必要だ。こればかりはどうしようもないのだ」

「あの」

「ハナエ、気持ちの整理はついたのか?」

「色々とご迷惑をおかけしました」

「ハナエ! 仲直りできて良かったね!」

「はい、色々と、はい」

「ジブンは付き合いが長い。迷惑には慣れている。ムラベは共犯者。ナガトはまあ関係者だ。一番迷惑を被ったのは全くもって巻き込まれただけの彼ではないのか?」

「はい。それで彼にも謝罪したいのですが」

「その彼を探しているんだけど、どこにいるんだい?」

「はぁ?」

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