第26話

「…………」

 …………

「そなたが何者か気にはなるが、いまは置いておこう。何かいるのか?」


 肩肘を張るワタリを見ながら俺は息を吐いて緊張を緩めた。


「……?」


 黒い空間の中、光苔とは違った明りが隣のエリアから漏れて微かに視認できる。


「光?」


 目を凝らしていたワタリが疑問符を抱くのは自然だ。彼女に軽く頷くと光に向かって歩を進めて近づく。冷静になると空気が体温より低くなっているのが実感できた。


 俺は奥を覗いて人影を確認した。


 そのエリアの天井から光が漏れている。他のエリアとは違って地面から天井までの距離が短い。地上からは落とし穴といったところだろうか。ここに自然光があるのはダンジョンでは珍しい体験だった。


「……?」


 背後からワタリがエリアの奥を見据えて明暗に慣れたころ、その人影はこっちに気づいた。


「あ、ワタリ。それにお兄ちゃん」


 そこに笑って手を振るナガトがいた。

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