第25話

 光苔が壁や床を侵食している。緑と黄色が混じった光体。一つが微々たる光を発しているだけだったとしても、集合すればダンジョン内を照らすことさえ容易だ。


 さて、あと一つ向こうのエリア、目的地まであと少し。ここまでくれば急がなくても問題はなさそうだ。


 歩を進めようとしてかっちり肩を掴まれた。


 ひひっっ!


 振り返った先には真剣顔のワタリがいた。端正な顔立ちが怖さを倍増させている。


 ワタリは肩を離した手で口元開く手振りを見せて、口を開いてもいいかと訊いているらしい。頷いて応えた。


「そなたは何者なんだ?」


 驚きに訝しさを含んだ声で彼女は訊いた。


 凡人です。


 自分は何者と訊かれたら、有名人でも何でもない凡人であると答えるだけだった。


「ここへ来たことでもあるのか?」

 頭を横に振った。

「どうしてここまで? 何かあるのか?」

 そうですね。


 ゴト。


「!」


 矢継ぎ早に質問をされているところで目的地のエリアで物音がした。

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