第24話
かつては整備されていたであろう土道。道の端々に雑草が生えているけれど、村から踏んで行ける目印としては機能していて、ダンジョンまで迷う要素はない。村から三十分ほど離れたあたりにここはあった。
おどろおどろしさはない洞窟。地面にぽっかりとある大穴。そんな場所らがダンジョンと呼ばれるようになったのは、魔物を洞窟という地下牢に閉じ込めておきたいという願望があったからだとかそうではないだとか。
ダンジョンの入口に恐怖感は沸かないのは問題だった。
入りやすさは顕著だ。
これは困った。
「どうした?」
大穴を見上げて立ち止まって思案暮れている俺にワタリは声をかけてきた。
「そなたには気が重いか?」
重いです。
だからといって迷っても仕方がなかった。
俺はダンジョンに入る決断をして歩を進める。
「お、おい!」
以前は使われていて朽ちた路線が地面あるから、足を引っ掛けないよう気をつける。荷物を運搬するために設置されていた道具だったのだろう。壁には松明を固定させていて壁掛けが残されたまま、岩肌が整えられていた。
ここのダンジョンは地底へ潜るのではなく平行な突き当たりへ洞窟は続いている。
目前には三つのルート。右から易しい、普通、難しいを選ぶなら易しいを選びたいのだけれど目的地への近道である左を選ばなければならない。
「おい、そっちは。う、うぷ」
魔物がいますね。
ワタリの唇を人差し指で押さえて、喋らないようお願いした。周囲はごつごつした岩肌になっていて天井や壁から転げ落ちた岩が人を隠せるに十分な大きさ。左手側に二体いる魔物から身を隠すにはあまりにも準備がいい。
ハンドシグナルで停止と前進を伝える。ダンジョン内で音を発するのはよろしくはないし戦闘もあまり推奨したくない。崩落の危険性は極限に押さえておきたいからだ。
左手に魔物がいるのを伝えて、右手から接触せずに進むルートを進んでいく。今回は岩陰に隠れながらだから、魔物を視界に入れずともそのエリアは突破できた。
次のエリアにも魔物はいる。ここからは入口の採光は届かない。ワタリの様子を見るに暗視は得意ではないらしい。
「!」
相手から不本意と思われてもいまは了承を取っている暇はない。左手を掴んで軽く握ったら前進、強く握った停止だと伝えて進んでいく。
「…………」
進んで進んで進んで、飽きそうなほど同じ工程を繰り返す。
魔物の気配が遠ざかったエリアまでたどり着いたところで、ワタリの手を離した。
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