第22話

 予定では昼あたりにダンジョンへ出発が、起床したら眼前に憤怒を纏った女性がいた。冗談っぽく飛び起きて逃げようとしたら首根っこを掴まれ引きずられていまに至る。


 なんとう適した扱い。初対面の怪しい輩に対しての彼女の対応は適切だった。


 この数日で出会った人々は世間一般から逸脱した人格者ばかり。彼女のように初対面の人物は怪しむべきで見習ったほうがいい。いや、だからといって俺をボコボコにしていいとかそういった意味ではありませんから。


「腹が減っているのだろう。食え」


 そうそうこうやって空腹の相手に軽食を与えるのは当然の行為で、あれ?


 隣の甲冑を身に纏った彼女は俺に物を手渡すと、自身の分を少しかじった。


「信用しているわけではない。空腹で足でまといになられたら困るだけだ」


 ワタリはそう云った。


 手に持ったそれは、小麦粉と水を混ぜた物を焼いて緑の野菜を挟んだ食べ物らしき物だった。


 毒物じゃないでしょね?

「錆になる面構えだな」

 冗談です。


 俺は渡されたそれを頬張って、咀嚼する。ムラベとの経験が役に立ったのかたってないのか微妙だけれど、心構えをして食べたおかげか顔に出てはいないようだ。というかそんなに不味くはなく、むしろ良薬口に苦しそう思える味でよかった。貰っておいて評価をするのはどうなのかと怒られそうだけれど。

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