第3前日章

第21話

「いいか。ジブンはそなたを信用してはいない。今回は急務のため同行しているだけだ」


 村を出て俺はワタリから苦情を受け続けている。見張っていれば悪さはできないとムラベに云われ行動を共にしている彼女が口やかましくなるのは自然だった。


 ダンジョンへ向かう道中で誰もいない標的と二人きり。依頼を達成する願ってもないチャンスだ。


 隣を観ると、ぎょろりと縄で雁字搦めにされているように観られた。


 まあ、当然ながらこんなにも警戒されている人を捕らえる方法など凡人には想像できない。


 鞄に入っているこの縄でどうしろと?


「何か疚しいな」


 ぎょろり、と隣を歩く彼女から睨まれた。


 警戒心が強く直感力が優れているのはよく解った。そんな人を拘束する?


 ――気づかれる前に捉えてしまえば返り討ちには合いませんから』


 気づかれない時なんて一度もないんですけど?


 なるほど、これ、無理。


 少し曇り気味の空の下を歩く。微風が草と戯れていた。

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