第20話

「ここの人は変わってる。村を観て君にも解かっているんだろう? この村はもう滅びるんだよ。だから、ボクはここにいられる。英雄の血族なんていわれても何もできやしない。ボクはほんの少しの光になっているだけだ。領主は助けはしない。数日後に税金を徴収しにくるぐらいさ。この村は税金は支払えない。支払えない者はどうなるか知ってるかい? 犯罪者となり殺されるのさ」


 村人の様子を観て、衣類や建物にかかる金銭を食費に回しているのは明らかでこのまま彼の云った通りの未来を辿る。


「映えた過去があった。その過去を食いつぶしこの村は滅びるんじゃない。村が滅びるのはここの村の人たちが世界からしたら異常だからさ。人が生きていくには莫迦では駄目だ。他人とは利害関係を持って接しなくてはいけない。生きるためには善意をどれほど捨てられるかで裕福度が変わってくる。ここの人たちはそれをしなかったからこうなってしまったと、昔もいまの村人たちを観て、ボクはそう思う」


 彼は云ってテーブル上の義手から布を払うと自身の腕と並べた。床に並んで映る影は同じようにゆらめいている。


「義手は生手と同じモノ、外見は同じで中身は違っていても用途は同じ。ボクたちの志は、ずれてない。間違って、いないんだ……」


 そこで、ムラベは何かを隠すようにっこり微笑んだ。


「ここの村の人は性格が良すぎると思う。英雄の血族と解ったとしても、村の一部を貸出してくれるだろうか? いや、いまの現状からすれば邪険に追い払うのが自然さ。自分たちを救いもしない英雄など悪評の的。でも、彼らはしない。それが性分なんだ。


 だからこそ、彼らはここで生きていられるんだと思う」

 ん?


「安心して君のことは忘れてない。明日、君にダンジョンで見つけて欲しいのはこの村の映えた過去。つまり、義手に使う絹糸さ。ボクらがも潜った程度では全てを発見できていないかもしれない。


 取り分は得た金銭の半分とボクの協力。約束は護るよ。ボクを信じてくれたらの口約束だけどね。さあ、今夜は休もう。明日は疲れる日になるから」

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