第14話

 ダンジョン攻略はムラベの提案で明日の昼間にしようと予定を立てた。夜間は地上で魔物が現れる確率が多いため、ダンジョン以外で遭遇する率を下げる時間帯にしたのだろう。不可侵領域の近くであるのなら慎重にしてもまだ危ない。


 部屋にいるととばっちりを受けそうだったから村を散策がてら部屋を出た。これからワタリとムラベの折り合いが始まる。


 …………。


 このまま逃げてしまいたい。


 村は見た目がかなり草臥れているけれど、暗澹な雰囲気はなく穏やかに見えた。一番の原因は子供たちが笑って遊んでいるからだろう。特別に遊び道具があるわけではない。走り回っているだけだが、屈託ない表情が大人の笑みを誘う。村が一つの家族といわんばかりの一体感が村の大人たちから子供へと向けられる視線からもみて取れた。


 けれども、自分には違ったモノに見えてしまうのは、心あたりが荒んでいるからに違いない。


 あれ?


 ふと、村の入口を見ると一人の子供が地面を見つめている。名前はナガト。確かそう呼ばれていた。


 眠いんじゃなかったっけ?


 ナガトの視線の先には雑草が生えていて、度々手を伸ばしている。どうやら採取しているようだ。ここの村人で知り合いなのはあの子ぐらいで見つかる前に逃げようとすると察知したのかこっちをみて、手を振ってきた。

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