第13話


 俺も外へ向かいたいところだけれど、二人はどうやら許可してくれそうにない。まだ、話は続くようだ。


 彼は優しく笑みを浮かべた。


「君の目的はボクらだろう?」


 ぎくり。


 凍る背筋を思い描きながら後ろをチラリと視界に入れると、ワタリと呼ばれた女剣士は微妙だに動いている様子はない。彼女の警戒の言葉はここまで了承しているという意味も含まれていたようだ。怖いから逃げたいなぁ。彼に向き直ると笑みを崩さずに云った。


「大人だけの話をしよう。君にはお願いごとがあるんだ。ダンジョンを攻略してはくれないだろうか? ボクらよりダンジョン攻略に関しては実は長けているのではないかな? 何故そう思うのかと問われればワタリが警戒したからさ。


 ワタリはね、直感力に優れている。女の感ともいうのだろうか。ワタリが君を警戒したのは君が秘めた力を持っていると感じたからさ。彼女の直感は当たるんだ。


 良いか悪かは判らないけど、大きな進展をもたらしてくれそうだ。


 そう、ボクらは困っている。


 ダンジョンを攻略し資金源となる資源、つまり、絹糸がないかを突き止めてもらいたい。


 もちろん、これは取引。ボクらの要件が終わったら君に協力すると約束するよ。それぐらいはできると思う。


 ダンジョンにはワタリが同行してくれる。彼女の力は信頼してくれていい。足でまといなボクはもうそろそろ完成する義手と共にここで待ってるよ」

「なっ!」


 自分が登板されて不満を持った彼女は驚きを深めた顔をしていた。


「時間が惜しい」


 ムラベが一言口にすると、ワタリは表情を引っ込めた。それは同意と取っていいのだろう。


 自分が流れに逆らわない性格であるのは承知しているから、このような成り行きになってしまっているのは毎度のことで慣れている。誰かが仕組んでいるかのように、とんとん拍子に話が進んでいく。だからといって、よい結果があるかといえばそうではないけれど、今回は目的には近づけているようだった。


 彼女と二人になる機会は得られたけれど、さて、どうしよう。

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