第11話

「ああ、申し訳ない。君が怪しいので彼女は警戒しているだけなんだ」

 合ってます。

「ワタリ。とりあえず彼は無害として扱おうじゃないか。ナガトが連れてきたんだ。悪い人じゃなさそうだよ」


 ムラベと呼ばれた男の提案に数秒間逡巡したあと、剣先を俺の首元から離すと彼女は剣を鞘に納めた。


「警戒はする」


 左腰に武器を携えたワタリと呼ばれた女性は一言告げると瞼を閉じて壁に背をつけた。


 フードの女性に似ている彼女がワタリ、話以上の人物だった。


「どうぞ、気にせず座って。彼女は気を張って立ってるのが落ち着くんだ」


 事情を知らされているとはもちろん言えないので訝しむようなフリをして木製の椅子に腰を下ろした。


 部屋は空家だった場所を急ごしらえで人の住めるように掃除した風に見えるほど簡素だ。素泊まりより少しましといったところでベッドが二つにテーブルと椅子とあとは何かの作業をする場所のみのシンプルな内装だった。


 ナガトと呼ばれた子供は手を離すとベッドに寝転がり、置いてあった手帳を眺め始めた。内容を頭に入れている様子はなくなんとなく見ているそんな感じだ。


「君もダンジョンを攻略しに来たのかい?」


 ムラベと子供に呼ばれた男は何を理由にかそんな決断をくだした。近くにダンジョンがあったのかと知識を得て、なんとなく頷いてみる。


「そうか。実はボクらもそうでね。ここのダンジョンで取れる絹糸がどうしても必要でこの村へやってきたんだ。でも、どうやらいまは採取はしていないらしいんだ」


 男性は話好きなのか人の顔を見て、得心のいった風に矢継ぎ早に続けた。


「あ、絹糸は何に必要かって? これさ」


 彼は布に包まれたナニかをテーブルにおいた。お土産でも出すような軽快さで開かれた中には腕があった。

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