第10話

「ここ」


 辿り着いたそこには一つの民家があった。子供は立ち止まるのは嫌いらしく再び手を引っ張ると扉を元気よく開いた。


「こんにちは!」

「こんにちは。おや、ナガト。彼は誰だい?」


 闖入者に驚く様子がない青髪の男はナガトと呼んだ子供にそう尋ねた。子供は答える。


「迷子」

 違います。

「そうなのかい?」


 視線を子供からこっちに移して彼は訊いたのだけれど、また子供が答えた。


「そうなの。だから、村の入口のところで助けてあげたの」

「ボクらのときと同じだね」

「ムラベは英雄だから違うよ。それにワタリとダンジョンを攻略したあとだったからここの村は知ってたでしょ?」

「よく覚えているね」


 男は子供に声をかけたあとしっかりとこっちを向いて口を開いた。


「やあ、こんににちは。ムラベと言います。ボクも君と同じでね。この村の方々のお世話になっている者なんだ。それで彼女の名はワタリ。ちょっと警戒心が強い性格だけど、あまり悪く思わないでやってくれないだろうか」


 甲冑を身につけた緑髪の女性を指しているのはすぐに解かった。何故なら彼女は俺の首元に刃先を押し当てながら鋭い視線も刺していたからだ。悲鳴に似た心持ちで額に汗をかく。


 あの、いや、悪い悪くないの前にですね、俺の首元に刃先を押し当てている状況をどうにかしていただけませんかね?

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