第8話

「見ず知らずの方に何を話しているのでしょうね。もしも、爆発物に長けた相手と戦闘をしなければならなくなった場合、相手に水をかけるのをおすすめしますわ。機敏に反応した箇所が弱点ですからそこをつけば活路を見いだせます。知っていて損はありませんよ。


 さあ、ここで無駄話は終わりにして計画を立てましょうか」

 これ、無駄話でしたか?

 結構内部の話ではなかったですか?


 そんなこっちの心情などどうでもよいのか、居住まいを正した彼女は計画を話した。


 まず俺が村へ旅人として向かい、二人を探りつつある程度打ち解けたところで彼女の姉を拘束する。顔を知られている彼女が向かったところで連れ戻しに来たと返り討ちに遭うだけだから、あとからこっそりやってくるという計画だ。


 彼女の姉を拘束するには二人きりになるチャンスが必要だけれども、そんな上手くいくタイミングがやってくるのだろうか。


 一抹の不安を抱えているのを表情から読み取ってか、彼女は云った。


「計画は計画。大雑把なモノであれば成功率が高くなるでしょう。要は姉を拘束していただければあとはワタクシがやりますので、そこまで協力してもらえればアナタの役目は終わりです。女性を拘束するのは気が引けるのでしょう? これは仕事。ワタクシの代わりにやっていると思ってください。そもそも自分でやれるのならアナタに頼みはしませんよ」


 いや、できれば断りたいんですけど。


「拘束する際にはこの縄を使ってください。軟性化する樹脂を染みこませた物です。軟性にし断ち切られにくくしていますので、汎用性があり戦闘になっても重宝しますわ」


 彼女はそう云うと懐から縄を取り出した。一瞬だけフードが捲れたのを見たせいか、自身の気持ちが出たせいか俺は縄を受け取れず床に落としてしまう。


 そのまま受け取りたくはない。プロの方々を返り討ちにした方と闘うつもりは毛頭ありませんので。けれども、気持ちは伝わらず彼女は近づき確かにと縄を手渡してきた。


 ここまできてあれなんですけど、やっぱり断るわけには。

「姉の名はワタリ。覚えておいてください」

 あの、人の気持ちを察する気はないですよね?


 彼女は元の位置に戻ると、喋り続けた口元を休めるように再び沈黙を保った。

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