第7話

「不可侵領域は国家が手を引いた土地です。魔物が蔓延り伝承でしか知りえない魔獣の住処といわれており誰も近づきはしませんが、不可侵領域以外にも国家が手を引いた危険領域はあります。その一つがあの大樹の湖です。近づけば爆散しますわ」

 爆散って。

「到着まで時間はありますから無駄話をしましょう。アナタがダンジョンより持ち帰った黒鉱石を錬金術により昇華させると爆弾の元の物質にもさせることができます。しかし、物質となってもそれを工作する知識、技術がなければそこまで危険はないのですが、あれば爆発物を作れる」

 爆発物ですか。

「あの領域は地雷原となっています。それもどういうことなのか判りませんが人だけに反応するように工作がされている。そう、誰かがしているのです。それも何百年も前からされ続けているのですわ」


 奇妙な話をさもありなんと話している彼女の表情に冗談はなかった。


「爆発物の弱点である水分はこの空気中にもある身近な物です。爆発部の内面に入ってしまえば効力を失いますからね。ですから、短期間の使用を余儀なくされ直接水に触れる機会の多い野外となれば防ぎきるのは不可能。それなのに現在も地雷が機能しているのは、誰かがいまもなおあの領域のどこかにいると考えるべきなのです。


 何故そこまで詳しいのかと思われたでしょう? ワタクシたちの一族はその手の分野にに長けた一族だからです。しかし、人だけを感知する仕組みは知りませんでした。知ろうと思い近づいた結果多くの人死を出してしまったのは、自業自得といえるでしょう。欲のために命を捨てるべきではありませんよ」


 そこまで云い切ると安堵するように独り笑みを浮かべた。


「因果応報な話。自分たちが生み出したモノなら牙を剥かないと思っていた。知り尽くしていたと慢心していた結果は言わずもがな。ワタクシから逃げてしまうのも理解できる。今更という話。でも……、ああ」


 彼女は心ここにあらずという顔をしたあとはっと俺が居たのに気づいた様子だった。

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