第6話
現在地のエプタの街から目的地のクローバの村へは西南西に向かうことになる。砦超えた不可侵領域の近くの村に彼女の姉はいるという。
彼女は喫茶店を出る前に片手で器用にフードを被った。顔を他人に見られると面倒事があるのかもしれない。出された紅茶をそのままにして置くのは失礼だと思い容器は空にして外へ出た。
出る際に金硬貨は全て両替してしまっている。いつでも両替は可能だとといわれても結局金硬貨として使用する機会は訪れる気配は微塵もないから前もってやっておいた。
馬車と御者を手配して荷台に上がる際に彼女に手を貸したところ、俺の腕力が足りなかったのか軽く転倒してしまった。その際に「きゃふん!」と軽い悲鳴を聞いてそれから彼女は口を開いていない。
砦を抜けてから荷台に腰を下ろして沈黙を保ったまま、雑談は嫌いなようだ。それとも不甲斐ない男と口を効く気がないのかもしれない。
「美しい湖があるでしょう?」
声に反応してみれば、彼女は外へ差している。口は効いてくれるようだ。
指を差しているほうに大きな湖が見えた。描かれたような風景は日差しと相まって心の余裕を回復させる十分。湖を吸い上げかねない大樹も立っている。湖と大樹はその場の象徴としてあるように見えた。
「死にますから、近づいてはいけませんよ」
え? 死ぬ?
あまりにも唐突な忠告に内心おののく俺だった。
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