第4話

 俺が相手の顔色を窺うと、気づいた彼女は口を開いた。


「姉を探しているのです」

 おや、毛色が変わった。

「アナタはダンジョン攻略に長けていらっしゃいますわね」

 おや、元に戻った。

「少しだけ経緯を話しますわ。それでないと協力していただけないでしょうから」

 協力する気はないです。


 そう思ったところで意思が伝わるわけもなく、話が開始された。


「察しているとは思いますがワタクシは英雄の血族です。英雄は民衆から羨望の目を向けられますが内情は明るい話ではありません。爵位を保つのに必死となるからです。


 英雄の血族は英雄の血族であり続けなければなりません。それにより強い血族との契を持つのに固執します。姉はその的となっていたのです。姉は剣に秀でていましたから縁談を望む者が後をたたなかった。そんなあるとき、姉は姿を消してしまったのです。彼と一緒に。


 事を知った両親は怒りを顕にしましたが、逆に好機とし婚約を条件に求婚者を捜索に出したのですが全て返り討ちにあってしまいまして、家へ連れ戻せないのです。


 事がことですから冒険者ギルドに依頼するわけにもいかず、内々に問題は処理しなければなりません。そこでワタクシも駆り出されたのですが、もちろん、上手く行っておりません。一人思案に暮れていたところアナタを見つけましたの」


 協力の内容は知れた。だったら、俺に頼むのは筋違いなのでは?


「アナタは冒険者ではないのでしょう? 冒険者であれば闇市場で買い叩かれるのを知って純度の高い黒鉱石を売りはしないでしょう。店主から渡された銀紙幣はあの鉱石に相当するモノでした。鑑定眼は持っていないようですが今回は必要ありませんわ。あの黒鉱石を探し出せる力が重要です。


 長身痩躯に黄土色の皮服、武器も杖もない鞄一つの身ぐるみ。アナタの珍しい黒髪に惹かれなければ目に止めはしませんでした。


 パーティを組んでいる様子もなければ、魔物と戦闘した経験も見られない。武器もない杖も装備していない。身ぐるみ一つで登場する変人があれほどの黒鉱石を鞄から取り出すのを目撃しなければ異変に気づかなかった」

 人を変人と云わないでくれませんか?

「ワタクシは運がよかった。アナタは目立ちたくないのでしょう? だから、気配を殺している。しかし、人と関わり合う際はそうするわけにはいかない。


 いまワタクシの話を聞いてくれているのは目立たないようあの場を去りここを去るため、それと技能をワタクシに気づかせたくなかったから、意識してやっていると教える結果になったので裏目に出てしまいましたがね。アナタはいまはチャンスを伺っているところですわ」

 ぎくり。

「逃げるチャンスを」

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