第6話 すれ違い

「起きろ、バカ兄貴ぃぃ〜」


翔吾を起こそうと叫ぶ京子。

だが、一向に起きる気配のない芋虫状態の翔吾。


京子は、はぁ、はぁと息を切らし大きく深呼吸をして背後を振り返る。クラス中が注目している中、おもむろに鞄から包みを取り出した。


「すごく申し訳ないんだけど、誰かこのバカを運ぶ手伝いしてくれない?お礼としてこのバカに作ってきたお弁当を渡すから」


そう言って困った顔をして首をコテンとする京子。うん、あざといかな?


だが、クラスの野郎は京子の手作り弁当が食べたいがためにわれ先にとばかりに翔吾を担ぎ上げる。


「京子の姉さん、どちらへ運べば?」


「ん〜職員室って言いたいけどみんなが怒られたらいけないから保健室でお願いね」


両手を合わせ、申し訳なさそうに笑う京子。うん、たぶんあざとい。


そうして翔吾は、鋼の鎧という名の筋肉を装備した男たちに連行されて行くのであった。



昼休み、京子とみのりは昼食をとっていた。

そこに騒がしい男が駆け寄ってくる。


「京子ぉ〜〜俺の弁当は!?」


京子は、ため息を吐き口を開く。


「あるわけないでしょ?朝から他の人に迷惑をかけてるアホなんかに」


翔吾は、この世の終わりとばかりに絶望した表情をし、とぼとぼと廊下に向かって歩き出した。

途中、何度もチラチラと京子の方を見るが京子は無視を決め込んだ。

さすがにみのりも苦笑いだが、助け舟というか弁当自体、屈強な男子が仲良く分け合って食べていた。

翔吾は、寂しげに教室を出て行った。


午後の授業が始まる前には帰って来た翔吾。だが、いつもと様子が違い大人しくしていた。

その状態は、放課後まで続きホームルームが終わるとそそくさに帰って行った。



京子は、それを不自然に思いながらみのりと下校した。家に帰り着きさすがに翔吾がいると思っていた京子だが、家は電気がついていなかった。家に入ると、晩御飯がラップをして置かれていたが作った本人の姿がどこにもなかった。


「翔吾のやつ、どこ行ったのよ。せっかく昼のこと謝ろうと思ったのに」


京子は、1人で静かな空間の中、黙々と晩御飯を食べるのであった。そして、お風呂に入り課題をして日付が変わる前にベッドに入ったが、結局、京子が寝るまで翔吾は帰ってくることがなかった。

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