最終章 Reunion
#126 「また明日」
十二月中旬の土曜日、Rainbow Noise Projectライブ本番の前夜。今年何度も利用している、
「よしっと……じゃあ
乾杯――と一人でも景気よく声を上げ、ホットミルクに口をつける。本当はビールが良かったが、良い睡眠のためにアルコールは避けることにした。
「いよいよ、いよいよ明日だよ和くん」
前日練習を終えて高まったテンションを、
「けど我ながらね、よく今日まで辿り着いたって思うよ……昨日も大変だったんだよ。金曜じゅうに
希和はどう労ってくれるだろうか、慰めるより称えてくれるのかな。
「旅費も嵩むから家庭教師のバイトもたくさん入れたし、半年くらいずっと時間に追われてたんだよね。だからこの週末で無事に終わるって思うと、ちょっと安心もするんだ。けどね」
思い返す。合唱部の面々と、合唱部の一員として駆け抜けてきた日々を。
「やっぱりすごく楽しかったんだ。壊れちゃった青春の続きだったんだ、私にとっては。終わった瞬間に寂しくなっちゃうんだよ、やっぱり……って、今そんな湿っぽくするのも違うか」
少し温くなってきたミルクをぐっと呷る、喉と一緒に心も温める。
「合宿の後も、集まれる面子で一緒に練習してきてね。今日の前日練でも確信できたけど、最高に格好いい仕上がりになってきたんだよ。
長野と東京のユニット曲も、笑っちゃうくらい強烈なの聴けそうだし。美術も衣装も、みんなのセンスがぎゅっと詰まってるし……和くんの大事だった人、和くんが大事だった人、大勢来るんだ。とっても楽しいステージに、絶対になる。だから」
空の向こうか、星の彼方か、この胸の奥か――その全部でいいや、そこに居る希和へ。
「何も見逃さないでね、全部聴いていてね。
必ず、絶対。ステージで会おうね、和くん。じゃあ、」
ついぞ言うことのできなかった、何度でも言いたかった挨拶で、心は固まった。
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