第4話 盗賊団討伐②
「何故、こうなった。誰か教えてくれないか…」
「…はは」
少し前にこんなやり取りしなかったっけ…そんな事を思いつつ、フィーの言葉に乾いた笑い声が漏れた。
盗賊と思わしき獣人の二人に呆気なく見つかってしまった私達だったけど、素直に盗賊を倒しに来ました!などと言う訳にはいかず、何とか濁せないものかと言葉を探す…も、お頭と呼ばれていた女性に私達の身なりから王国の騎士だと見抜かれてしまった。
そもそも記憶にあるゲームの内容から逸脱してしまっているので、切り抜けられるかは私の
(普段からもっと冒険物のゲームもやっておくんだった…!)
今更思っても後の祭りである。
『王国の騎士ねぇ…なぁ、ちょいと相談なんだけどさ』
『盗賊風情の相談になど誰…──むぐっ』
『はい、ちょっと黙ろうかー。で、相談ってなんだ?』
食ってかかろうとするフィーの口を咄嗟に手で塞いだ。話をややこしくさせる予感しかしなかった為に、だ。
やや不服そうにするフィーの視線を感じつつ、ワーウルフの女性に問い掛けた。
彼女はフィーを一瞥してからすぐにこちらへと視線を向け直し、ニッと笑って見せる。
『なぁに、簡単な事さ。──…アタシらに手を貸してくれないか?』
彼女…イルミナのそんな言葉を聞いたのが大体半日程前。…時計があるわけじゃないから、体感な為に大体とつけておく。
そこで冒頭のフィーの台詞まで戻る。
「はは、ではない! そもそもこうなったのはお前のせいだろう!? あんな盗賊の要求を呑むなど、王国騎士として有るまじき行為だぞ…!」
「あのまま彼女達とやり合うのは得策じゃないと思ったんだ。…それに、悪い話じゃなかっただろ?」
「…その事だが、本当に他の盗賊団等いるのか?」
あの時のイルミナの言葉には続きがある。
──…アタシらなんかよりも、もっと大きな組織を潰させてやるよ。
そう言ったのだ。
正直、信じていいものか迷ったけど…私にはこの選択肢しか無かった。
イルミナとフィーを戦わせない為に。
ゲーム内でのフィーが怪我をするイベント。それは彼女の率いる盗賊達との戦闘だった。
怪我を負いながらも勝利するも、その後彼女は数日ベッドの上で過ごすことになる。
その時のスチルは確かに可愛いのだけど…ゲーム世界が現実となった今、そんな姿は見たくないと思った。
それに…もっと大きな、という事は今後驚異になる可能性もある。
そういった不安要素を取り除けるのなら、取り除いておきたい。
「大丈夫、彼女たちは信用できるよ」
「…ほう、随分と肩を持つのだな。…何か確信があるのか?」
「いや、そんなものは…」
「…それとも、この先の展開を…知っているのか?」
投げかけられた言葉にドキリとした。
さすがに「はい」等と言える訳もなく…
「っ…な、何言ってんだよ、フィー。そんな筈、ないだろ?」
「…まあ、それもそうか。お前は騎士であって、預言者や呪い師の類ではないのだからな」
「…なんとなく…そう、なんとなく大丈夫そうだって思っただけだ」
「…わかった、そういう事にしておいてやろう」
…誤魔化しきれた気は全くしないけど、それ以上フィーからのツッコミはなかった。
それにしても…さっきの問い掛けは、どういう意図を持った物だったのだろう。
……フィーの考えが、全く読めなかった。
「と、…あれか? その盗賊団の根城、というのは」
そんなやり取りを挟みながら、私達は目的の場所へと到着した。相手に見つからないように身を引くくし、木々の間から様子を窺う。
…これは…。
「その様だな…しかし…、…本当に制圧など出来るのか?」
…規模が大き過ぎる。
そもそも、今回の任務は調査がメイン。制圧に関しては規模に応じて、というもの。
…本来戦闘になるはずだったイルミナ達の盗賊団は、負傷しながらも二人で制圧出来るという難易度だった。
その何倍も有ろうかという規模の盗賊団相手となると…後込みしてしまうのも仕方がないだろう。。
というか、すっごい今更なんだけど…
(私、戦ったこととかないんだけど大丈夫かなぁ!? ほら、現実世界ではただゲームと美少女キャラが好きな単なるオタクだったわけで! 剣とか振ったことないんですけども…!!)
本当、今更である。
(あぁあぁ…素振りくらいしておくんだった…)
これも本当に、今更なのである。
「そもそも、ヤツらは本当に来るのか? 来たとしても我々を囮にする気かもしれんぞ」
「それは…」
フィーのそんな言葉を聞いた時だった。
▶イルミナを信じる
やはり盗賊など信用できない
そんな選択肢が目の前に現れた。
(って! 急に何!? 今までこんな選択肢でてこなかったよね!!? というか、ここ以外にも選択必要な場面、あったよね!?)
内心、大混乱である。
「おい、フォレス…──」
ただ、私の答えは最初から決まっている。
信じる、そう心に思った瞬間、選択肢の表示は消えた。
「…そりゃ…──」
言葉を紡ぎ掛ける刹那。
ビュンッと風を切る音と共に、矢が放たれる。その矢は、見張り役と思しき男を見事に射抜いた。
「…来るに決まってるだろ」
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