第14話 新しい服が欲しい


 そっか、4人でコラボするのか。

 もう既に会ってるけど、気持ち的に千冬さん以外の2人とコラボで会うから新しい服が欲しいな。


 俺が頭を抱えながら少しばかり悩んでいると、逆さ離れたところにいた千冬さんがこちらの方へと寄ってきた。


「葵くん、どうかしたの? 何か悩み事でもあるの?」


「日曜日のコラボのために新しい服が欲しいなと思って……」


「なるほど! もう会ったことはあるけど気持ち的にコラボで会うから新しい服が欲しいってことね!」


「なんでそこまで分かるの?!」


 俺の考えていることがこんなに分かることある?! 千冬さん、人の心を読むことができる力とか持っているのでは?


 予想以上に俺の考えていることがバレていてだいぶ驚いてしまった。


「でもそれでなんで悩んでるの?」


「一緒に行く人が欲しいなと思って……」


「そんなの言ってくれればいつでも一緒に行くよ! たとえ配信の予定があったとしてもね!」


 さすがにそれはマズくない?


 最後の一言は冗談だとしても、言ってくれれば一緒に行ってくれるのはとても助かる。

 どの服装が俺に似合うかも聞くことができるし。


 でも、これってまるでデー……


「お買い物デートみたいだね!」


「!?」


 本当に千冬さんは俺の考えていること全てを知っていそうだ。




 俺と千冬さんは出掛ける準備を整えて、約30分後に家を出て近くのショッピングモールへと向かった。


「葵くん、手繋いでもいい?」


「えっ!?」


 千冬さんはからかっているのかな?

 でも、千冬さんはこんなからかい方するかな?


「もしかして、私と手を繋ぐの……嫌?」


 ちょっと待って! その上目遣いはズルいって! そんなの事やれるわけないじゃん!


「全然嫌じゃないけど、俺が千冬さんのこと恋愛的に好きになっちゃったらどうするんですか」


「全然好きになっていいよ! 私も葵くんのこと好きよ」


「もう、からかわないでくださいよ〜」


「(冗談じゃないんだけどなぁ)」


 ……ん?

 今、千冬さん何か言った? まあ、気のせいか。




 俺は千冬さんと手を繋ぎ、話をしながら5分ほど歩いたところでショッピングモールに到着した。


「葵くん、着いたね」


「はい、ここのショッピングモールってこんなに大きかったんですね。来るのが久々だから大きく感じるのかもしれないです」


「そっか。それじゃ、洋服の店に行こっか」


「はい!」


 俺と千冬さんはショッピングモール内にある洋服の店に入った。

 わあ、色んな種類の服が売っているんだなぁ。


 俺は驚きのあまり、そんな当たり前の感想しか出てこなかった。



「いらっしゃいませ〜」


 とてもスタイルの良い女性店員の方が店に入った俺と千冬さんの方へと歩み寄ってくる。


「どういった服をお探しですか?」


「私のではなく、こっちの方の服を買いに来たのですけど、良い感じのありますか?」


「もしかして、彼氏さんだったりしますか?」


「いえ、彼氏とかでは」


「それでしたら、カップルコーデなんていかがでしょう? さあさあ! こちらへ」



 店員の方が何故かテンションが上がってしまい、俺と千冬さんはカップルコーデの服が置かれているコーナーへと連れてこられてしまった。


「また何かありましたらお声がけくださいませ〜」


「「あっ……」」


 そう言うと、店員の方はどこかへと行ってしまった。



「折角だし、このコーナーも見てみる?」


「う、うん、そうだね。折角だし、ね」



 結局、元々の予定とは異なってしまうが、2人でカップルコーデの服を少し見ていくことにしたのだった。



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