第13話 お祝い

 デビュー配信の後、緊張の糸が切れたように一気に疲れが出てきてしまい、俺はその日はすぐに眠りについた。





 翌朝、俺が目を覚ますと、隣に千冬さんの姿はなかったのだが、不安には感じなかった。なぜかというと、リビングの方から千冬さんが誰かと談笑をしている声がうっすらと聞こえてきたからだ。


 一体、誰が来ているのだろう。

 俺はそう思い、すぐに眠たい目を擦りながらリビングへと向かった。


 すると、そこにいたのは雪さんと六華だった。


 俺は慌てて、洗面所に向かい、顔を洗い、歯を磨いて再びリビングへと向かった。


「皆さん来てたんですね、先程は眠そうな顔を見せてしまいすいません」


「あはは、別に気にしなくてもいいのに〜。私と葵くんの仲じゃん」


「ありがとうございます、雪さん」


 雪さんの言葉に千冬さんは少し不満そうな表情をしていた。

 それよりも、2人はなぜここにいるのだろう。


「雪さんと六華はなんでここにいるんですか?」


「「そんなの決まってるじゃん! 葵くんのデビュー配信祝いだよ!!!」」


 2人は息を揃えて凄い勢いでそう伝えてきた。


 俺の為……?

 予想していなかった答えを聞いてしまい、俺は少し戸惑ってしまったが、素直に嬉しい。まさか、自分を祝ってくれるために来てくれるなんて。


「2人ともありがとうございます!」


 雪さんと六華は俺の顔をチラチラと見ながら、千冬さんにこそこそと何かを聞いている。それに対し、千冬さんはこくりと頷いた。

 千冬さんは何を了承したのだろうか?


 そんな疑問を抱えていると、すぐにその答えを得られた。


「「コラボしよう!」」


 2人はまたしても息を揃えてきた。

 コラボ……。そうか、もうデビュー配信も終えたし、千冬さん以外のVtuberともコラボをすることが可能になったのか……!


 2人からコラボをお願いされたが、むしろ俺からお願いしたいくらいだ。答えはもちろん決まっている。


「もちろんですよ! むしろ俺からお願いしたいくらいです!」


「ほんと? よかった〜」 

「ホッとしました」


 2人は安堵したようだった。


「それで、コラボはこの4人でやるってことでいいんですよね?」


「そうなるね! いつがいいとかある?」


「俺はいつでも大丈夫ですよ」


「それじゃあ、来週の日曜日とかはどうかな?」


「それで問題ないです」


「来週の日曜日にコラボ配信決定ね! 後でトリッターにコラボ配信の告知を投稿しとこうかな」



 こうして、俺は千冬さん、雪さん、六華の3人とコラボ配信をすることが決定したのだった。

 初めてのコラボ配信はこの4人でやりたいと思っていたから、今この場で歓喜の舞を踊ってしまいたいくらいに嬉しい。


 まあ、そんな事をしてしまったら100パーセント変人扱いをされてしまうので、絶対に踊らない。

 この3人なら許容してしまいそうな気もするが……。


「とりあえず、今日は何をするんですか?」


「うーん、そうだなぁ。適当にお喋りしたり映画観たりしよっか」


 千冬さんはそう言うと、色々な味のクッキーとジュースを持ってきてくれた。

 この人、完璧すぎません? 多分、このクッキー、手作りだよね?


 2人は千冬さんのことをよく知っているから、まったく驚かないようだ。千冬さんとずっと一緒にいたら自分の中の色々な基準がズレていきそうな気がする。





 俺はそんなことを考えながら、3人と楽しくお喋りをしたり映画を観たりしながらその日を過ごした。

 楽しい時間というのはあっという間に過ぎていくものだ。


 まだ体感的には1、2時間しか経ってないのだが、現実は陽が落ちていくくらいの時間になっていた。


 雪さんと六花も楽しんでくれたようで、帰るときには綺麗な笑顔をみせていた。


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