第9話 連絡先
千冬さんと六華がコラボ配信をしている間、俺と雪さんはリビングで楽しくお喋りをしていた。
雪さんはとても元気な人ですぐに打ち解けた。
この人とこれから先も同業者として、そして友達として関わっていけると思うと、胸が高鳴った。
「雪さんはどうしてVtuberになろうと思ったんですか?」
俺は雪さんがVtuberになろうと思ったきっかけを聞いた。
「私ね、アイドルが好きなの。テレビで活躍するアイドルたちがとても輝いて見えたの。私も彼女たちのようになりたい! って思ってたの。それでまず始めたのがネット上での配信。そして、配信を続けてたら、『バーチャライブ』にスカウトされたの。アイドルVtuberっていう言葉に惹かれちゃったの!」
「そうだったんですね。すごいですね、俺も雪さんみたいに輝いたVtuberになれるかなぁ」
「葵くんは私が輝いているように見える?」
「はい、とても!」
「よかった。葵くんも輝いたVtuberにきっとなれるよ!」
雪さんのお陰で俺にも少しは自信がついたような気がする。Vtuberとしてやっていく自信が。
雪さんがテレビで活躍するアイドルに憧れたように、俺は雪さんや千冬さんや六華たちに憧れるんだろうなあと思った。
「俺がVtuberになったら、雪さんと関わっていくことも多くなると思うので、これからよろしくお願いします」
「うん、こちらこそよろしくね! あっ、そうだ! それじゃあ、連絡先交換しようか」
「え! いいんですか?」
「もちろん!」
こうして俺は雪さんと連絡先を交換した。
雪さんも嬉しそうな表情を浮かべていた。
「いつでも連絡していいからね? 仕事のこと以外でもプライベートのこととか、遊びに行こー! とかでも軽く連絡してきていいからね!」
「ありがとうございます! そう言われてしまうと、頻繁に連絡してしまいそうです、あはは」
「ふふ、頻繁に連絡してきていいよ。私も葵くんに沢山連絡しちゃうかも」
「全然いいですよ! 嬉しいです!」
俺と雪さんはその後も千冬さんと六華の配信が終わるまでずっと話していた。
雪さんと話していると、自然と心が落ち着く。雪さんが元気だけど、落ち着くような綺麗な声をしているからだろうか。
気が付けば、あっという間に1時間が過ぎていた。
千冬さんと六華も配信を終えたようで、リビングに戻ってきた。
「あれ、なんか2人の距離近くない?」
千冬さんがそう言った。
まあ、それもそのはず。
千冬さんと六華が配信を始める前はお互いテーブルを挟んで向かい合っていたが、今は同じソファに隣同士で座っていたのだから。
雪さんが親睦を深めるために、ということで近い距離で話していたからだ。
「えへへ、もう葵くんとは仲良くなったんだよ~」
雪さんが自慢気に2人に向かって言った。
それを見た2人は少しムスッとした表情をしていた。
「別に私は毎日一緒にいるからいいし!」
千冬さんが対抗してきた。
それに続くように六華が「私は1番付き合いが長いからいいんです!」と対抗していた。
だが、雪さんがニヤリと笑みを浮かべて、自分のスマホの画面を2人に見せつけた。
「私は連絡先も持ってるもんね~!」
「「連絡先!?!?」」
2人は驚きのあまり1歩後ろに後ずさりした。
連絡先欲しいのかな?
「2人も交換したら? っていうか、2人とも持ってなかったんだね。てっきり持ってるのかと思ってた」
「以前は持ってたんですけど、私が番号を変えてから伝えるのを忘れていて……」
「私は聞くのを忘れてたわ」
2人とも俺の連絡先が欲しいということで、俺は千冬さんと六華とも連絡先を交換した。
確かに考えてみれば、六華とは学校で会っていたから連絡することも少なかったけど、これからは増えるのかな。
千冬さんとも連絡先の交換していなかったな。家に2人でいるから連絡先の交換が必要なかったんだよね。でも、持っていた方が何かと都合がいいときもあるだろう。
正直言うと、俺も連絡先を交換した方がいいとは思っていたんだよね。でも、俺って自分から言い出せない性格だからね。
連絡先を交換した後、2人とも「やった!」と喜んでくれていた。連絡先の交換だけでこんなに喜んでくれるとこっちまで嬉しくなる。
なんとなくだけど、これからもこの4人で集まったりすることが多くなっていくような、そんな気がした。
「もうこんな時間じゃん!」
4人で喋っていると、すでに夜になってしまっていた。
楽しい時間というのは、過ぎるのが早い。
雪さんと六華は「じゃあ、また今度ね!」と言って、帰って行った。
俺がVtuberデビューしたら最初は4人でコラボしたいな。
そう思った。
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