第11話悪を吹き飛ばす嵐(後編)

パワーマジンの力を新たに手に入れたぼくは、藤代不動産と後藤をやっつけるにはどうするかを考えていたんだ。

「うーん、ドラゴンを出しておどろかせるか、会社だけを地震じしんみたいにゆらすか・・・、いっそのこと会社の部屋を組みかえてやるというのもいいな。」

パワーストームのカードを使えばいろんなことができる、だけどそれだけ何をしたらいいのか迷うんだよね。

『イーサン、迷っておるな。』

パワーストームの声がした。

「そうなんだよ、色々できるからやりたいことが一つに決まらないよ。」

『それなら、全てやってみればいいじゃないか。』

「それはそれでおもしろいけど、ぼくが暴走しそうでこわいよ。」

『たしかにそうだな、まだわがはいの力をえてまだ日も浅いからな。それならだれかと一緒に、藤代不動産で暴れるのはどうだ?』

「だれかって、だれ?」

『ちょうどいいのがいいのがいるじゃないか、城ヶ崎という男が。』

「え!城ヶ崎さんとやるの?」

ぼくはおどろいたけど、確かに城ヶ崎さんならドラゴンの力であばれられる。

「それはいいね、後で大島さんに聞いてみるよ。あっ!そうだ、もっといいこと思いついた!」

ぼくは思いついたことを紙に書いてまとめた、夢中になっているとジェームスがドアをノックしながらぼくを呼んでいる。

「イーサン、ディナーの時間だよ!」

「ごめん、もう少し待っていて。」

でもジェームスはドアを開けて部屋に入ってきた。ぼくはむっとした顔でジェームスに言った。

「なんで、入ってくるの?」

「だって、イーサンがこないとディナーが食べられないんだもん。おや?イーサン、何を書いているんだい?」

ジェームスはぼくが書いていた紙をのぞきこんだ。

「ああ!勝手に見ないでよ!」

「いいじゃないか、どんなマジックをするのか気になるよ。」

ジェームスはぼくから紙をとりあげると、書いてある内容をのぞきこんだ。少し見た後でジェームスはぼくに紙を返して、ぼくに言った。

「そういえば、蜜柑からイーサンをおどす手紙がきたと聞いたが、もしかしてイーサンはそいつらをおどろかすつもりなのかな?」

ジェームスがきくと、ぼくは正直にうなずいた。

「そうか・・・、イーサンがどうしても行くというのなら止めないが、くれぐれも気をつけていけよ。あぶないとおもったら真っ先に逃げるんだぞ。」

ジェームスはぼくに言った、ぼくはうなずいた。

「よし、それじゃあ早くディナーを食べよう、イーサンと一緒にいられる時間がのこりわずかだからな。」

ジェームスは翌日から仕事でまたしばらく帰ってこれなくなる。

ぼくはジェームスとの最後の時間をすごすために、ディナーを食べに向かった。









そして翌日、ジェームスは朝早くに仕事へと行ってしまった。

ぼくはみんなと杉野くんと水澤さんと一緒に、大島さんの家にきていた。

「大島さん、あらためまして杉野くんと水澤さんです。」

二人は大島さんに頭をさげた。

「よろしくね。さて、サンフラワーの話だけどあれから常連客じょうれんきゃくがふえて、今までよりも人気がでるようになったんだ。そして『サンフラワーを無くしたくない!』と、大勢の人たちが立ち上がったんだよ。これもみんなのおかげだ、本当にありがとう。」

大島さんはぼくたちにお礼を言って頭を下げた。

「すごい!ぼくたちの思いが、みんなに通じたんだね。」

ぼくはうれしくなった。

「そしてさらに私と友近さんで調べてみたんだけど、後藤という男は再開発計画に関わる人たちからワイロをもらっているようなんだ。それで後藤はその見返りに、再開発さいかいはつの仕事を回したり、より上の役職やくしょくにつかせたりしているらしいんだ。」

「後藤の野郎やろう・・・、本当に好き勝手しやがって。」

「あんなのがいるから、日本の政治家は悪いと言われるんだよ。」

「あーもう!!今すぐに後藤をやっつけようよ!!」

みんなはやく後藤をやっつけたくて、うずうずしている。

「それで、君たちは藤代不動産にいろんなしかけをほどこしてほしいんだ。」

「しかけをほどこすのはいいけど、いつやるんだ?」

「今週の土曜日、藤代不動産は定休日でだれもいない。」

「でも定休日とはいえ、かぎはかかっているでしょう。そこのところはどうするのですか?」

「そこは大丈夫、これを使う。」

大島さんはむねポケットからカギを取り出した。

「これは藤代不動産の裏口のかぎだ、これを使って侵入する。」

「え、これどうやって手に入れたんですか?」

松岡くんが大島さんに質問した。

「ああ、たまたま藤代不動産の社員と知り合ってたのんでみたら、手に入れてくれたんだ。それで合いかぎをつくったんだよ。」

大島さんは照れながら言ったけど、友近さんがぼくの耳に小さな声で言った。

「本当はね、錦さんに藤代不動産で働いている同僚どうりょう紹介しょうかいしてもらって、再就職さいしゅうしょくちからす代わりに裏口のかぎを持ってくるように頼んだのよ。」

なるほど・・・、さすが大島さんだ。

「それで、おもしろいしかけのアイデアはあるかな?」

大島さんはみんなの顔を見まわした。

「うーん、急にはうかばないなあ・・・。」

「いろんなしかけを作れるけど、具体的な内容が思いうかばないなあ・・・。」

みんな、でを組みながら考えている、でもぼくは昨日まとめたアイデアがあるんだよね。

「みんな、ぼくにいいアイデアがあるんだよね。」

「本当かい、イーサン?」

「もったいぶらずに教えてくれよ。」

大島さんとみんながぼくに注目した、ぼくは得意げにアイデアを言った。

「ダイヤの10のカードで会社の机とかイスを宙にうかせるというのはどう?ポルターガイストみたいでびっくりするよ。それからこのスペードの8のカードで、会社の一階いっかい二階にかいの部屋をえてしまうんだ。これもびっくりするぞ・・・。あとそれからおもちゃとかぬいぐるみをこのハートの2のカードで動かして、会社の人をおそわせるのはどう?これもビックリするぞ、うふふふ・・・。」

ぼくはもっとアイデアがうかんでとまらなくなった。

「パワー・ストームの力を使うんだね。」

「でもそのほうが、ぼくたちが作るよりもすごいのができるよね。」

「たしかに、なんでもできるからね。」

みんなはぼくのアイデアに感心した。だけど、どこか暗い表情をしていた。だからぼくはみんなを元気づけるために言った。

「この他にも、アイデアはたくさんあるよ。だけどぼくはみんなのアイデアもほしいんだ、そこにパワー・ストームの力を組み合わせれば、きっとおもしろいトリックをしかけることができるんだ!」

するとみんなの表情が明るくなった。

「うん、そうだね。」

「じゃあ、今までにないすごいことをしようよ!」

「ぼくにも手伝えることがあったら、言ってください。」

ぼくはみんなの応援おうえんで、やる気がもりもりわいた。

「みんな、ありがとう!それじゃあ、がんばっていこう!」

ぼくがこぶしを上にあげると、みんなもあとに続いた。

「イーサン、すっかり成長したね。これからどんな大人になるのか楽しみだ。」

大島さんはぼくを見て言った。








そして土曜日がやってきた。

ぼくとみんなは大島さんと友近さんの運転する車に乗って、藤代不動産へと向かった。

大島さんの家から藤代不動産までは、二十分かかった。車から下りると、藤代不動産には人がいる気配けはいはなかった。

「さあ、これからしかけていくぞ。みんな人目ひとめにつかないように慎重にな。」

大島さんが合鍵あいかぎで裏口の扉をあけると、ぼくたちはぞろぞろと中へと入っていった。

一階にしかけるのは、文道くんと藤宮さん。

この日のために用意した、とっておきのをしかけると言っていた。

「このしかけのために、ぼくの全てのおこづかいを使ってしまった・・・。だからぜったいにきまってほしい!」

「うふふ・・・、このしかけがきまったらうれしいな。」

藤宮さんの目つきがいたずらっ子の目つきになった。

そしてぼくはトランプを一枚、一階の部屋のロッカーに伏せた。

こうすればぼくが自分のタイミングで、トランプの効果を発動できる。

そして一階へのしかけの準備が終わると、ぼくたちは二階へ上がっていった。

「よし、ここにこの機械きかいをおいて・・・。」

「そこにはこのしかけをおいて・・・。うん、いい調子だ。」

武田くんと風間くんは二階にしかける装置そうちのチェックをしている。

そして二階の棚の中にも、トランプを一枚伏せておいた。

ぼくたちはそれから三階へ向かった。

「ここには確か社長室しゃちょうしつがあるんだ、だからものすごいイタズラをしかけたほうがいいよ。」

「よし、それじゃあこのカードとこのカードを伏せて・・・。あっ、それからこのカードも・・・。」

ぼくは社長室に三枚のカードを伏せた。

すると大島さんが社長室のパソコンをいじりだした。

「何してるの大島さん?」

「実は藤代不動産に潜入した目的はもう一つある、それは藤代不動産が悪事を働いた証拠しょうこを見つけることだ。おそらくパソコンにはそれに関係のあるデータがあるはずだ。それを見つけることができれば・・・。」

大島さんはパソコンのキーボードを動かして、必死に証拠をさがしている。

「お、見つけたぞ!!」

大島さんは証拠を見つけたようだ、そして服の胸ポケットからUSBメモリーを取り出した。

「何しているの、大島さん?」

「これで証拠のデータをすいだして・・・・、よし!!これで、データを手に入れたぞ。」

大島さんはその後、USBメモリーをパソコンから抜いた。

「みんな、しかけはすんだか?そろそろここを出るぞ!!」

そしてぼくたちは大島さんと一緒に藤代不動産を出た。

藤代不動産の外では友近さんが辺りを見張っていた。

「友近さん、もう終わったよ。」

「お疲れ様、さあ行きましょ。」

そしてぼくたちは車に乗って大島さんの家に向かった。

向かう途中でぼくは運転している大島さんに質問した。

「ねえ、さっきの話のこと城ヶ崎さんに伝えた?」

「ああ、伝えたよ。そしたら引き受けてもいいって言ったんだ。めずらしいよ、城ヶ崎君が他の人の頼みをきいてくれるなんて。」

「そうなんだ。城ヶ崎さん、ぼくに興味があるのかな?」

ぼくは一人で城ヶ崎さんの心を想像していた。







そして翌日の日曜日、藤代不動産に社員が出社しゅっしゃしてきた。

「あーあ、せめて日曜日は休みたいよな。」

日影悟ひかげさとるはぐちをこぼした。

「確かにな、おれの知り合いは今ごろ家でのんびりすごしているのにな・・・。」

同僚どうりょう黒田滝治くろだたきじもぐちをこぼした。

この二人は同じ時期に藤代不動産に入社した、当初は二人ともなかなか職にめぐまれずに、藤代不動産に入社が決まった時は、とても喜んだ。

しかしそれから藤代不動産がブラック企業であることに気づいた、しかしやっと見つけた職場を去ることがなかなかできずにいたのである。

「まあ、どうこう言っていたって、会社は休ませてくれないんだ。」

日影がロッカーを開けながら言った時だった。

「うわぁ!!」

ロッカーの中から突然うでがあられた、そしてうでは日影のえりをつかむと、ロッカーのなかへと引きずり込もうとした。

「助けてくれ!」

「日影!日影!!」

黒田はとっさに日影の足首をつかんで引っ張った、すると日影をロッカーから引っこ抜くことができた。

「はぁ、はぁ・・・・・ありがとう、黒田。だけど、今のはなんだったんだ?」

「わからないけど・・・、すごくこわかったな。」

日影と黒田はたがいに青い顔を見合わせた。

すると今度はすぐ近くで、「キャー!」と女性のさけぶ声が聞こえた。

「どうしたの!?」

黒田が女性に言うと、女性はふるえながらロッカーの中を指さした。腰が抜けて動けないようだ。

黒田がロッカーをのぞきこむと・・・、そこには男の首が一つ置いてあった。

「ギャーーーーーーッ!!」

黒田がさけぶと、日影はすぐにロッカーをのぞきこんだ。そして男の首を見ておどろきながらも、男の首にふれた。

「おい、それにはさわるな!」

「黒田さん、これハリボテですよ。」

「え?ハリボテ・・・?」

黒田は日影が抱える男の首にふれた、そして男の首は本物じゃなくて、マネキンの首にそれっぽく見えるように飾ったニセモノだということがわかった。

「なんだよこれ!イタズラにしては、悪質すぎる!」

黒田が足をふみならして怒った。

「手の込んだイタズラだな・・・、誰がなんのためにしたんだ?」

「とりあえず、新田係長が来たら報告しよう。」

黒田と日影はとりあえずそうすることにして、二階にある仕事場へと向かった。

すると日影があることに気がついた。

「あれ?ここって二階だよね・・・。」

「どうしたんだ、日影?」

「なんで、ロッカーがあるんだ?」

黒田が前を見ると確かにロッカーがあった。

「ロッカーは一階にあるはずだ、なのになんで・・・?」

「ああ・・・、確かにおかしい。もしかして・・・!」

日影は一階へおりていった、黒田があわてておいかける。

そして一階の様子を見て、日影はがく然とした。

「やっぱり・・・。」

「どうしたんだよ、日影?」

「黒田、あれを見て。」

日影が指さす方を見ると、そこには日影と黒田が働いている部屋の扉があった。

「うそだろ、部屋の場所が変わったのか?ていうか、そんな話はきいていないぞ。」

「ちがう、一階と二階がまるごと入れ替わったんだよ!!」

「そんなばかな・・・。」

日影と黒田はなにが起きているのか全くわからなかった、しかしそんなことにいつまでもおどろいているわけにはいかず、仕事をはじめることにした。

「一体、今日はどうなっているんだ・・・。」

黒田はわけがわからない気持ちがまだ残っていた。

するとドカーンという大きな音がきこえた、黒田はおどろいてデスクの下にかくれたが、デスクからでて辺りを見回しても、とくになにかがこわれたことはなかった。

「なんだったんだ・・、今の音は?」

そして黒田は目の前のものを見て、自分の目を疑った。

目の前にゴジラのようなかいじゅうの頭が見えた、「ギャォ―――ッ!!」とさけびながら火をはきだしている。

「うわあーーー!!」

おどろいた黒田はあわてて部屋をとびだして、外へ出ようとしたが外への扉がなくなっている。

「うそだろ、どうなっているんだよ!!」

黒田はパニックになった、すぐ近くにいた日影もパニックになっている。

そしてこの部屋にいた社員全員がパニックになっていた。

「あ、階段がある。きっとまた入れ替わって、元に戻ったんだ!!」

「とにかくここから逃げよう!!」

日影と黒田はかいだんを下りて会社から出ていった。他の多くの社員たちも二人の後を追うように会社から出ていった。









そのころ、大島さんの家ではぼくと大島さんと友近さんが藤代不動産の社長が来るのを待っていた。

大島さんは話し合いのために、前もって藤代不動産の社長に電話してやくそくをつけていたんだ。

「もうすぐ来ますね・・・。」

大島さんはコーヒーを飲みながら余裕で待っている。

そして五分後、藤代不動産の社長がやってきた。

社長は男を一人連れてきた、そして大島さんにあいさつをしたんだ。

「はじめまして、大島さん。私は藤代不動産の社長である藤代将矢とうだいまさやといいます。こちらは係長の新田速見にったはやみです。」

「よろしく、大島愛知おおしまあいちです。それでは話を始めましょう。」

大島さんと藤代さんと新田さんはソファーにすわった、友近さんがお茶を入れてきた。

「それでサンフラワーの土地を買い取りたいということですが、それは本当なのですか?」

「ああ、そうだ。あくまでも店は取りこわさずに、オーナーに土地を貸して賃貸料ちんたいりょうをもらおうと考えている。」

「しかしあの土地はすでに再開発計画の予定地だということがきまっているんだ、わるいがあきらめてもらってほしい。」

「ふーん、再開発計画ね・・・。そういえばちょくちょくその話を耳にします。ヤクザみたいな人たちがやってきて立ち退きを言ってきたり、電話の回線を切られたり、窓ガラスをわられたりといろんないやがらせをうけているとね。」

大島さんが言うと、藤代さんの顔がひきっつた。

「そこで再開発計画について少し調査をしてみました、そうしたらいろいろとよくないことがわかりましてね・・・。とくに後藤文一ごとうふみかずという政治家とつながりがあるようだ。」

「お・・・大島!お前、どうしてそこまで知っているんだ!!」

藤代さんはとてもおどろいた顔になった。

「まあそれは置いといて、あなたには一つマジックを見てもらいましょう。」

大島さんが指をならした、ぼくの出番がやってきた。

「はじめまして、マジシャンの天星イーサンです!それでは、ぼくのマジックをお楽しみください。」

ぼくはいつもどおりのショーを見せた、藤代さんと新田さんはぼくのマジックにとてもおどろき、最後は大きなはくしゅをしてくれたんだ。

「いやあ、子どもとは思えないほど上手ですな。」

「ありがとうございます。」

「このイーサンのマジックショーをはじめとして、サンフラワーでは地域の若いエンターテイメントがショーをできるようにしていきたいと思っています。だから、サンフラワーを絶対にのこしていかなくてはならないのです。」

大島さんは自信満々に言った、けれど藤代さんはむすっとした顔でうでをくみながら言った。

「くだらない・・・、喫茶店でマジックショーなんて見ていて楽しいだけじゃないか。そんなことよりも、新しいマンションを建てて新しく住む人がくらせるところをつくるべきだ。だから私は絶対にサンフラワーには立ち退いてもらう、お前らに土地は絶対に渡さない。」

「そうですか・・・、それでは私はかならずサンフラワーを守ってみせますよ。」

「やれるもんなら、せいぜいやってみればいい。どうせむなしくつぶされるだろうけどな。」

藤代さんは捨てぜりふを言うと、新田といっしょに大島さんの家を後にしたんだ。

「やれやれ、やっぱりやるしかないね。イーサン、後はまかせたよ。」

「うん、藤代さんにぼくの本当のマジックを見せてあげるよ。」

ぼくは藤代さんがぼくのイタズラにかかるのが、楽しみになった。







大島の家から藤代不動産に戻ってきた将矢は、会社のすぐ近くで集まっている社員たちを見て、おどろいた。

「お前たち!仕事をほったらかしにして、ここで一体なにをやっているんだ!」

将矢は社員たちにおこりながら言った、すると黒田が将矢に言った。

「申し訳ありません、実はこの会社で怪奇現象かいきげんしょうがおきまして、ここに集まっているのです。」

怪奇現象かいきげんしょうだと?そんなことあるもんか!」

「本当です!一階と二階の部屋が入れ替わったり、かいじゅうが火をはいたり、本当におどろきました。」

将矢は黒田の言っていることが、子どもっぽくすぎてバカバカしくなった。

「それにこんなものがロッカーの中にありました。」

日影がそう言って見せたのは、男の首だった。将矢と新田は「ギャー!」とさけびながらしりもちをついた。

「これはマネキンの首をかざったハリボテです。」

「ううーー、だれがこんなものをロッカーに入れたんだ!」

「それはわかりません、ただこの会社がおかしいことになっているのは確かです。」

「うーーーむ、こうなったら私がその目で確めてやる!」

そして将矢が自ら先頭に立って会社の中に入った、他の社員たちが後に続く。

そして全ての部屋を見回ったが、怪奇現象がおこることはなかった。

「どの部屋もなんともないじゃないか、そうとなったらお前ら働け!今までサボってた分も、しっかり働くんだぞ!いいな?」

将矢はは社員たちに言うと、新田と一緒に社長室へむかった。

「まったく・・・、今月の給料きゅうりょうは全員十パーセント減額げんがくだな。」

将矢は鼻息をならしながら社長室に入った。そしていすにすわったときだった、つくえの引き出しからチェーンがでてきて、将矢の体をしばった。

「なんだこれは!なんでチェーンがでてくるんだ!」

「社長!大丈夫ですか!」

将矢にかけよる新田だったが、新田もチェーンにしばられてしまった。

そして今度は、将矢と新田がそのまま宙に浮かび出した。

「おい、浮いているぞ!どうにかしろ!」

「こればかりは、どうしようもありません。ごめんなさい、社長〜!」

そして天井の近くまでうかびあがると、とつぜん回転をはじめた。

「うわぁーーーーーっ、目ぇーがー回ぁーるー!!」

将矢と新田がぐるぐる回っていると、そこへ仮面かめんをかぶった子どもと男がとこからか現れた。

「助けてほしい?」

子どもが言った。

「あーあー、助ぁーけーてーくぅーれぇー」

「じゃあ、行くよ!」

子どもはふしぎなトランプを使った、すると将矢と新田は回転から解放された。そして男が将矢と新田のチェーンを、自力で破壊はかいした。

「助かった・・・、ありがとう。」

将矢はお礼を言ったが、目が回ってその場から動けない。

「それはどうも。」

とつぜん子どもと男は仮面を外した、そして二人の正体がイーサンと城ヶ崎竜也だということがわかった。

「どうだった、ぼくのイタズラは?」

「もしかして・・・、この会社での怪奇現象は、みんなお前のしわざか?」

「そうだ、黒幕くろまくであるお前らをやっつけるためのな。それとここに警察けいさつがやってくる、お前らの悪事あくじ証拠しょうこをついさっき大島が警察に送っておいたからな。」

将矢と新田は、観念かんねんしうなだれた。

「これでいいんだな?」

「うん、これでサンフラワーはもう安心だよ。」

イーサンの笑顔えがおが、とても明るくかがやくのだった。























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