第8話悪の不動産
藤代不動産は
そして
だが、買収の仕事をまかせていた
理由をきくと「こんなとこよりも、大島さんのところで働きたいです」と言っていた。
とにかく
そんな時に三堂は
三堂が社長室に入ると、社長の
「社長、この度は仕事が遅れておりまして、私の力不足によるものです。」
三堂は
「三堂くん、君にはさんざん言ったはずだ。今回の
将矢は三堂にたいして、怒りを向けた顔になった。
「それが・・・立ち退きさせる役の人が急に辞めてしまいまして・・・。」
「なんだと!!なぜ引き止めなかったんだ!!」
「なんでも、大島という人に新しい仕事を紹介してもらうことになったから、こんなクソみたいな会社は辞めてやるって、強く言われたものですから・・・。」
「なにビビっているんだ、社員の
将矢は三堂をゴミを見るような目で見た、三堂は頭を下げるばかりで何も言えなかった。
「もういい、君は仕事に戻ってもいいよ。」
将矢は三堂を仕事にもどさせると、新田に言った。
「大島・・・、お前はその名前を知っているのか?」
「はい、出会ったことはありませんが、
「とんでもないやつだな・・・。」
「しかもどうやら、『
「秘密結社だと!?」
将矢は目を大きくしておどろいた。
「ええ。ただ秘密結社というのは名前だけで、実体は地域住民のコミュニティです。ただ敵に回すとヤクザ以上におそろしいと言われています。」
「そんなやつが私のじゃまをしたのか・・・。」
将矢は足を踏み鳴らしながら歯ぎしりした。
「もしかしたら大島も、あの土地を買い取ろうとしているのかもしれない。いや、そうにちがいない。これはかなり面倒なことになった・・・。」
将矢は頭を抱えた。
「わが社の運命をかけた大仕事、何がなんでも成功させなければ・・・」
「そのためなら、どんな
将矢の目つきがするどくなった、もう将矢には公共事業のことしか目に見えていないようだ。
「まずはあの土地をどうやって買収するかだ、まだ喫茶店が残っていたんだよな。」
「ええ、サンフラワーという喫茶店でオーナーは三原厚良といいます。」
「喫茶店か・・・、それならこっちが近くに喫茶店を出して、サンフラワーをつぶすというのはどうだ?」
「社長・・・、それでは
新田があきれながら言った。
「そうか、やはり
「そうだ!バカッター作戦で行きましょう!!」
「バカッター作戦というのはなんだ?」
将矢が新田にたずねた。
「
「ネットで炎上とはどういうことだ?」
将矢は首をかしげた、どうやらSNSについてくわしくないようだ。
「映像やコメントにたいして
「なるほど・・・、だが問題はそれをだれにやらせるかだ。」
「ちょうどいいのがいます、三堂さんです。」
新田は将矢の耳にささやくように言った。
「バカッターをやる人は主に若者が多いです、四十代後半の三堂が疑われることはまずありえません。」
「なるほど、それじゃあ三堂にやらせるとしよう。」
将矢はそれで行くことにした。
しかしこれは新田の
仮に作戦が成功しても、自ら警察にタレコミすればいい。
新田は将矢から視線をそらせると、顔をニヤニヤさせた。
そして翌日、新田は三堂を呼んでバカッター作戦について話した。
「なるほど、それはいい作戦です。しかし具体的になにをすればいいのでしょうか?」
「とりあえず店の
「わかりました。それでサンフラワーでバイトをするつもりで
「心配ない、私たちでなんとかする。今は作戦のことだけを考えていたらいい。」
「ありがとうございます、それではサンフラワーにバイトの
三堂はさっそくサンフラワーへと向かった、新田はほくそ笑みながら三堂の背中を見送った。
ぼくたちが空き家でイタズラをしてから二日後、ぼくは大島さんに呼ばれてきた。
「今日は竜也くんも来ているんだ、これからサンフラワーの宣伝をどうするのかについて話し合おう。」
ぼくはうなずいて、大島さんと一緒に車に乗ってサンフラワーへむかった。
サンフラワーに入ってぼくはクリームソーダを注文した、それから五分たって城ヶ崎さんがやってきた。
「二人とも、来ていたんだ」
「ああ、それじゃあ話し合おう。」
竜也さんはコーヒーを注文した、よく見ると見なれない男が注文をうけていた。
「ねえ、あの人はだれ?」
「ああ、
三原さんが紹介すると、御堂さんはおじぎをした。
「それじゃあ、おれはどうやってサンフラワーを宣伝すればいいんだ?」
「まず、城ヶ崎さんの
「ふーん、それで握手会ではなにをやればいいんだ?」
「もちろん握手をしてもらうんだけど、他にもファンの人たちと話してもらうんだ。」
「話すって、どうするんだよ?」
「それはなんでもいいよ、ファンの人たちは好きな人と一緒になにかができるというのがしあわせなんだ。」
大島さんが城ヶ崎さんに言った。
「内容は関係ないのか・・・?」
「うん、だけどあまり失礼のないように会話してね。あと、どんなことがあっても怒っちゃだめだよ。」
大島さんが念を押すように言った。
「わかった、それならやってみよう。」
「お待たせしました。」
そこへ御堂さんが、トレーにコーヒーとクリームソーダを乗せてやってきた。
「ありがとう!いただきます。」
ぼくはクリームソーダを飲んだ、ソーダの冷たさと甘さがすずしい気分になるよね。
そしてふと城ヶ崎さんを見ると、御堂さんのことをじっと見ている。
「城ヶ崎さん、どうしたの?」
「ん?なんでもない」
『イーサン、どうやらなにも感じていないようだな・・・。』
とつぜんパワー・ストームの声がきこえた。
「感じていないって、なんのこと?」
『あの御堂という男のことだ、わがはいは御堂からよくないものを感じる。もしかしたら、なにか悪だくみをしようとしているにちがいない。』
「え、悪だくみってどういうこと?」
『まあ、今イーサンが知る必要はない。このことをわかっているのは、わがはいとドラゴンくらいなようだ。』
そしてパワー・ストームの声がとまった。
「イーサン、話を続けなくてもいいのか?」
大島さんに言われて、ぼくは話にもどった。
「それで城ヶ崎さんにはもう一つやってもらいたいことがあって、ぼくのマジックに参加してもらいたいんだ。」
「イーサンのマジックに、おれが出るのか?」
「うん、城ヶ崎さんはマジックのいいネタになると思うんだ。たとえば殴ってもわれないお皿とか、ぼくが城ヶ崎さんを持ち上げるマジックというのもおもしろそう、あとそれからサンドバッグからスーパーボールが出てくるマジックとかはどうかな?」
ぼくはマジックのアイデアがあふれでてきて、とまらなくなった。
「ほんとうにマジックの天才なんだな・・・。」
城ヶ崎さんはあきれながら言った。
「ああ、どうやらこれからサンフラワーで面白いマジックが見れそうだ。とても楽しみだよ。」
大島さんはとてもわくわくした顔でぼくを見た。
「大島はあのイーサンのどこに魅力を感じたんだ?」
城ヶ崎さんが大島さんに質問した、大島さんはこう答えた。
「私はイーサンのマジックへの
大島さんは自信満々に言った、それを見てぼくはうれしくなった。
ぼくが大島さんと初めて出会ったのは、ぼくがはじめて日本に来たばかりの時なんだ。
あの時のぼくは友だちをつくるためにいろんなマジックをしていたんだけど、思う通りにいかなくてとても落ち込んでいたんだ・・・。
そんな時にぼくのマジックをほめてくれたのが大島さんなんだ。
大島さんはぼくのマジックをよくするために、いろんな道具をくれたり、ぼくが活躍できる舞台を用意したりしたんだ。
そうしてぼくのマジックは上達して、ぼくは学校で人気者になれたんだ。
そして武田くんたちと知り合って、「チーム・ブンガブンガ!!」を結成した。
今のぼくがあるのは大島さんのおかげなんだ。
「なるほど・・・。確かに彼はいつも楽しいことばかり考えているし、スキルや精神も一級品だ。人を
「城ヶ崎さんも、ぼくのことほめてくれるの?すごくうれしい!!」
ぼくはとてもよろこんだ。
「・・・単純だな、おれの子どものころには考えられなかったな。」
「そうですよ。城ヶ崎さんもこんな感じだったら、もっとクラスメイトとなかよくできたはずなのに・・・。」
三原さんがつぶやいた、城ヶ崎さんがジロリと三原さんをにらんだ.。
「悪かったな・・・。そういえば三原さんは、なんで喫茶店を始めたんだ?」
「あ、それぼくも気になる。」
ぼくと城ヶ崎さんは、三原さんの顔を見た。
「うーん、話すとかなり長くなるけど聞きたい?」
「べつにいいぜ。」
「うん、聞きたいよ。」
「それはぜひ、聞かせてもらおう。」
ぼくと城ヶ崎さんと大島さんは、三原さんの話に耳をむけた。
「話はぼくが城ヶ崎のいた学校を辞めさせられたころにさかのぼる。」
「え?ちょっと待て、それはどういうことだ?」
城ヶ崎さんがとつぜん、話をさえぎった。
「あ、そういえば城ヶ崎さんは『三原さんは病気で学校をやめた』って言っていたね。」
「ああ、辞めさせられたってことは誰かにそうさせられたということだな。」
「ああ、私は城ヶ崎さんをクラスのみんなと一緒にさせようとしたことで、校長先生や音楽の先生をはじめ多くの先生から反感を買っていたんだ。そしてあの日、私は校長室に呼び出されて『今日で学校をやめてもらうことになった。』と言われたんだ。私は『そんなに城ヶ崎くんが悪なのか・・・』ってとてもくやしくなって、校長先生にこんな
「そうか・・・。あの時鬼頭から聞いたのは、
「うん、それで話を戻すとしよう。それから私は学校を転々として先生を続けていたけど、やる気まんまんな性格がわざわいして、トラブルを起こしてしまいその度に学校を追い出された。そして五回目に追い出された時に私は「自分は先生に向いていなんだ」と
三原さん、とてもがんばったんだね・・・。
だからこんなに立派な喫茶店をオープンできたんだね。
「そうだったんだ・・・。三原さん、ずいぶん苦労したんだな。おれがあのころ、どこかでやさしくなれていたら、先生としてがんばれていたのにな・・・。」
城ヶ崎さんは申し訳なさそうにうつむいた。
「いいんだよ、もう昔のことだし。それに喫茶店で仕事をしているうちに、コーヒーをいれてのんびり仕事をしているほうが私にはあっていると感じたんだ。」
「そうか・・・、改めて言います。らんぼうすぎて申し訳ございませんでした。」
「いいよ、城ヶ崎くん。またサンフラワーに来てね。」
三原さんが城ヶ崎さんに手をさしのべた、城ヶ崎さんは三原さんとあくしゅをした。
「なんだか、いい気分だね大島さん。」
「ああ、そうだね。」
ぼくと大島さんは話し合いをわすれて、温かい目で二人を見ていた。
それから
「さて、作戦開始としますか・・・」
実は
彼は藤代不動産の命令でアルバイトになりすまし、サンフラワーで
サンフラワーの裏口のカギはかんたんに手に入れられた、防犯対策は全くしていないようだ。
「さて、どんなことをしようかな・・・?」
三堂は動画のネタをさがしに、あたりを見回した。
すると一台だけ置いてある大型の
「そうだ、たしかあの中に入るという動画があったな。よし、それじゃあやってみるか。」
三堂は冷蔵庫から中身を全て取り出した、量が多くて全て取り出すのはとても大変だった。
「よし、後はこの中に入るだけだ・・・。」
そして三堂が冷蔵庫の中に入ったとき、冷蔵庫の
「うわあ!!ちょっと、何が起きているの?」
三堂があわてていると、男の低い声が聞こえた。
「やっぱり最初からあやしいと思っていたんだ、もし本当のことを言うのならすぐに出してやる。しかし言いたくないというのなら、お前は一生冷蔵庫の中だ。」
「そんなの
三堂はそう言ったが、本心は冷蔵庫の扉が開いた瞬間に逃げるつもりでいた。
そして冷蔵庫の扉が開いて三堂が逃げ出そうとした時、三堂の目の前にトランプのダイヤの2のカードが映った。
「パワー・ストームバインド!!」
とたんに三堂は体の自由をうばわれてしまい、その場に倒れた。
「一体、どうなっているんだ!?」
「御堂さん、どういうことか聞かせてもらうよ。」
三堂がふと正面を見ると、城ヶ崎とイーサンの姿がそこにあった。
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