第7話ぼくらのゲームハウス

それからぼくたちは三人がやってくる当日までに、ありとあらゆるしかけを準備していった。文道くんの持ってきたドッキリアイテムに、武田くんと風間くんが協力して作ったトラップなど、家じゅうがしかけだらけになっていったんだ。

そしていよいよ三人がやってくる日がきた。

ぼくは家の中のリビングにかくれて、あの三人がやってくるのを待っている。

あの三人が現れたら、トランプゲームをしかけて遊んでやるんだ。

「ふふふ・・・、あの三人、どんな顔をするのかな?」

そして家の玄関げんかんが開いて大島さんと錦さんたち三人が家の中に入ってきた。

「ほう、なかなかいい感じの部屋ですね。」

「そうでしょう?さあ、こちらへどうぞ。」

大島さんに案内されて錦さんたちがリビングへ入ってきた。

さあ、ここからぼくの出番だ。

とつぜん、部屋の中にけむりがたちこめて、ジェントルマンのかっこうをした僕が現れた。

錦たちはせきこんだ後、いきなり現れたぼくのすがたにおどろいた。

「お前は誰だ!!」

「ぼくはマジシャンのイーサンだ。錦さんたちだよね?これからぼくとトランプを使ったゲームをしようよ。」

「ゲームだと?おれたちはこの家を見に来たんだ、おまえのゲームの相手をしている場合ではない。」

「いや、錦さんたちはゲームをしなければならない。そうしないと、ずっとこの部屋から出られないままだよ。」

「なんだと!ふざけるんじゃねえ!!」

錦さんが大声でどなると、べつの男が錦さんのかたをたたいた。

「なんだ?」

「あの、大島さんのすがたが見当たらないんすけど・・・?」

錦さんはリビングを見回したが大島さんはいない。

実は大島さんはけむりが出ている間に、リビングから出てドアにカギをかけたんだ。

そしてリビングのドアが開かないことに気づいた錦さんは、ここですべてに気が付いた。

「おい!!お前、大島の仲間か!!」

「そうだよ、やっとわかったんだね。」

錦先輩にしきせんぱい、どういうことですか?」

「わからんのか?おれたちは大島にはめられたんだ!!」

錦さんが二人にむかってどなった。二人はおどろいてあわてだした。

「そういうことだよ、さあゲームをしよう。」

「おい!!おれたちがゲームで勝ったら、ここから出してくれるよな?」

錦さんがぼくに詰め寄りながら言った。

「もちろんいいよ、だけどぼくが勝ったらあなたたちには、恐怖きょうふばつゲームを受けてもらうよ。それでもいい?」

上等じょうとうだ、受けて立つ!!」

「いいね、さあ楽しもう!!」

ぼくはむねポケットからトランプを取り出した。

「ゲームはぼくと三人全員でやろう、三人でぼくに勝てたらここから脱出できる。けれど三人がぼくに勝てなければ、ゲームオーバーだよ。」

「それでどんなゲームをやるんだ?」

「トランプゲームの定番、七並べさ。」

「七並べ・・・、ひさしぶりにやるな。」

「親はあなたにやってもらうよ、さあ配って。」

ぼくは錦さんにトランプを渡した、錦さんはトランプをシャッフルするとみんなにカードを配った。

「錦さん、七並べってどうやるんすか?」

別の男が錦さんに質問した。

「お前ら知らないのか・・・。まず手札に7のカードがあったら縦一列たていちれつに出すんだ。」

テーブルの上に7のカードが並んだ。

「そしてダイヤの7を出した人から順番にカードを出していくんだ。どうやらぼくのようだね。」

そしてぼく・錦さん・したっぱ二人からまたぼくへと時計回りにカードを出していった。最初にだせるのは6か8のカードでそれから順番にだしていく。出せるカードが無い場合パスができるが、三回までしかできない。四回目のパスをしたら負けになるんだ。

「はい、これでぼくはのこり三枚だよ。」

「くそっ・・・。おい、おまえ、今から三回パスしろ。」

「え?おれですか・・・」

「ああ、やつの手札が残り少ない。おそらく出せるカードがかぎられているから、やつをスキップさせることができる。」

別の男がうなずいた。そしてその男の番になったときに、男はパスを宣言せんげんした。

「うーん・・・、それじゃあぼくもパスします。」

すると錦さんの顔がニヤリとした。

そして順番わまわり、またもやその男はパスをした。

「またパスだね。」

そしてまたその男がパスをした、そろそろぼくが動く時が来たようだね。

「よし・・・、いくよ。」

ぼくはカードを一枚だした、三人はそれを見てとてもおどろいている。

「うそだろ・・・、あいつはまだカードを出せたのかよ・・・。」

「ふふふ・・・、わざとパスをしてぼくにパスをさせて負かそうという考えだったようだけど、そうはいかなかったね。」

「クソ・・・、こいつはプロだぜ・・・。」

そしてゲームは終わりの時をむかえた、ぼくが出したクローバーの8でぼくの手札が0になった。

「どうやら、ぼくの勝ちだね。それじゃあ罰ゲームを受けてもらうよ。」

「待て!!お前、なにかインチキしただろ!!」

男の一人がぼくに言った。

「ぼくはインチキなんてしてないよ。じゃあやったとしたら、ぼくはどんなインチキをしたの?」

「そりゃ、カードを配る時に・・・」

「おい、カードを配ったのはおれだぞ!!お前、おれを疑っているのか?」

錦さんが男にどなった、男は「すみません!」と何度も錦さんに謝った。

「それじゃあ罰ゲーム、恐怖のトラップハウスツアー。三名様、ご案内~」

ぼくはスペードの6のカードを発動させた、それは指定していした人や物を指定した場所へ送ることができるんだ。

そして三人はリビングから消えた、そしてぼくはあらかじめ大島さんから渡されたかぎでリビングのドアを開けて脱出した。












イーサンのカードの力で空き家の二階へ移動したにしき神田かんだ宮之みやのの三人は、気がついた時には呆然としていた。

「ここはどこだ・・・?」

「トランプが急に光ったかと思ったらここに・・・。」

「あ、窓がある。」

神田は窓を開けて景色をみた、そして錦に報告した。

「どうやら今いる場所は、この家の二階のようです。」

「そうか・・・。それにしてもさっきのは一体何だったんだ?」

すると天井からたくさんヘビやトカゲやクモがふってきた。

「うわあ!!へ・・・、ヘビが!!」

「うぎゃあ~、逃げろ!!」

神田と宮之はパニックになっている。

「お前ら落ち着け、これはただのおもちゃだ。まったく、子供だましみたいなことしやがって・・・。」

錦は怒りでこぶしをにぎりしめた。

「とにかくこの部屋から出るぞ。」

そう言って錦はドアノブに手をかけたが、ドアが開かない。

「クソ、おれたちをこの部屋に閉じ込めるつもりだな。」

「あ、錦さん!あれを見てください。」

神田が指さす方を見ると、そこにはダンボールが置かれていて、「カギはここにあります。」とはり紙がはってあった。

「このダンボール・・・、開けたほうがいいのか?」

「いや、これは絶対にワナだ!開けちゃだめだ!」

「でもこのままだと、この部屋に閉じ込められたままだぜ。」

神田の言うとおりだ、どのみちこのままだとここから動けない。

開けたらどうなるかわからない・・・、しかし開けないわけにはいかない。

錦はおそるおそるダンボールを開けた・・・。

するとダンボールからボクシンググローブが飛び出して、錦の顔面を直撃した。

「グハッ!!」

「錦さん!!」

錦はその場にあおむけに倒れた。

そして宮之がダンボールをのぞくと、カギを発見した。

「あ!カギを見つけました。」

「お・・・そうか、かしてくれ。」

錦は起き上がってカギを受け取ると、ドアのところへ行ってドアノブにカギを差し込んだ。するとドアが開いた。

「よかった・・・、これでこの部屋から出れる。」

三人は部屋を出た、すると不気味な音楽が鳴りだした。

「なんだ、この音楽・・・。」

「どっかにスピーカーがあるんだろ、いい加減こわがるなよ・・・。」

錦はビクビクしている神田と宮之に言った。

そして錦がかいだんからおりようとしたとき、足をすべらせてかいだんから転げ落ちてしまった。

「錦さん!!大丈夫ですか!!」

そう言ってかけつけようとした神田も、足をすべらせて転げ落ちて、錦さんにしょうとつした。

「おい、ぶつかったぞ!!」

「すいません・・・、うわっ!!なんだこれ!!」

「ん?うわ、これはネズミ捕りじゃねえか!!こんなワナまでしかけやがって!!」

錦は大声でさけんだ、すると仮面をかぶった少年たちがさっそうと目の前に現れた。

「正義のヒーロー惨状さんじょう!!悪い大人は、許さない!これでもくらえ!!」

そう言って少年たちは、錦と神田に水鉄砲で水をかけた。

「うわっ、冷たい!!」

「お前ら・・・、なめんじゃねえぞ!!」

錦は激怒げきどしてネズミ捕りを体につけながら、鬼のように少年たちにおそいかかった。

少年たちは部屋へとにげていった、錦が走りながら追いかける。

そして錦が部屋へと入ってくると、べつの少女が神田の目の前に飛び出して、神田の腹にパンチした。

神田は腹をかかえて倒れこんだ、その間に少年たちが神田をロープでしばった。

「お前ら何するんだ!」

神田がさけぶと、少年の一人がコショウを神田にかけたので、神田はくしゃみがとまらなくなった。

「どうだった?罰ゲームは楽しめたかな?」

目の前にイーサンが得意げに現れた。

「こんなこと・・・クション!・・・して、後で・・・クション!・・・どうなっても知ら・・・クション!・・・ないぞ!・・・クション!」

神田はイーサンに何か言おうとしたが、くしゃみのせいでうまく言えない。

「錦さん、強がりはここまでだよ。後の二人はもうつかまえたし、観念したほうがいいよ。」

「大島はどこだ・・・?」

「もうすぐ来るから、リビングに行こう。ロープをほどいてあげる。」

神田は観念したほうがいいとさとり、おとなしくすることにした。そしてロープから解放された神田はイーサンたちと一緒にリビングへむかった。











リビングに神田さんを連れていくと、緑山みどりやまさんと赤谷あかやさんがのこりの二人を連れてきていた。

そして大島さんがリビングにやってきた。

「いやあ、良かった!やっぱり君たちはすごいよ、いつもおどろかされる。」

大島さんにほめられてぼくたちはうれしくなった。

「大島、お前の目的はなんだ?なんでガキたちを使ってこんなことさせたんだ!」

神田さんが質問すると大島さんは、笑顔から冷たい顔になった。

「それはサンフラワーを守るためだ、お前らはサンフラワーを度々たびたびおとずれては、オーナーの三原さんに『店を手放せ!!』と言っておどしているそうじゃないか。一体何が目的だが知らないが、これ以上サンフラワーに迷惑をかけるというのなら、私はお前たちの働いている藤代不動産を追い詰めてやる。もし藤代不動産に迷惑をかけたくなければ、私に知っていることを全て話せ。」

大島さんに圧倒あっとうされた三人はうなずいた。

「それではまず君たちの名前を教えてもらおう。」

大島さんはもう三人の名前は知っていたが、あらためて問いただしたんだ。

錦火助にしきひすけだ」

神田賢かんだけんです・・・」

宮之羽田五郎みやのはたごろうです・・・」

「よし、ではサンフラワーを無くしたい理由を教えてもらおう。」

「それは、会社の仕事で三原さんには立ち退いてほしかったからなんだ。おれたち三人は、会社から土地を買収するために『あのへんの土地に建っている建物の持ち主には立ち退いてもらわなければならない』と命令されて、地上げ屋のマネをして持ち主に強引に立ち退いてもらうようにしていたんだ。おれたちは会社の命令でやっていたけど、正直・・・やっていることに不満を感じていた。まるで悪人で、まともな仕事じゃないと実感していたんだ。だけどおれたちは会社でも立場は低くて、いつも仕事しているわけじゃないんだ・・・。だから会社に来ているのに、ぼーっと過ごす毎日をすごしていたんだ。だからこの仕事をまかされた時は、正直うれしかったんだ。」

錦さんはかくすことなく、正直に話してくれた。

会社に来ているのに仕事をしていない・・・、それっておかしいよ。

会社に行くのは働くためなのに、仕事がないなんてどんな気分なんだろう・・?

ぼくは錦さんたちが気のどくになった、だけど大島さんは冷たい顔のままで言った。

「仕事をまかせてくれない会社は会社ではない、そしてお前たちは会社からいずれ捨てられる運命うんめいにある。もし今まかされていることを続けていたら、いつかお前たちは警察につかまってしまうだろう。そして『会社から言われてやった』と証言するが、そんなのは言い訳にすぎない。おそらく二年の懲役ちょうえきか三十万の罰金ばっきんになるだろう。だからお前たちが今すべきことは、今の会社をめて、新しい仕事をさがすことだ。」

「そうしたいけど、おれみたいなやつなんてどこもやとってくれないんだ。藤代不動産に入れたのもキセキなんだ。」

錦さんが言うと、大島さんの顔がいつものやさしい顔にもどった。そして錦さんたちに言った。

「それなら私が持っている会社を紹介しょうかいしよう。そう約束するなら、二度とサンフラワーに迷惑をかけないと約束してくれるかい?」

錦さんたちはとてもおどろいた顔で大島さんを見つめた。

「あんた・・・、社長なのか?」

「いいえ、私は財閥のものでございます。私にはいくつも会社がありますので、仕事先の紹介は得意ですよ。」

「お・・・大島さん!!」

錦さんたちは目になみだをうかべながら、大島さんを見つめた。

「おれたち、これから藤代不動産を辞めて大島さんの会社で働きたいです!どうか、よろしくお願いします!!」

錦さんたちは大島さんに土下座どげざした。

「ああ、いいよ。これから会社を辞めて、私のところへ来るがいい。」

錦さんたちはうれしそうな笑顔で、家から出ていった。

さすがは大島さんだ、こまっている人は誰でも手をさしのべる。

「これで問題が解決したね。」

大島さんにぼくは言ったけど、大島さんはよろこんでいなかった。

「まだだ、これであの三人はサンフラワーに来なくなったけど、今度は藤代不動産からしつこい攻撃が来る。すぐにでも次の手にとりかかっていることだろう。」

「じゃあ、ぼくたちはこれからどうすればいいの?」

「今までどおりに、サンフラワーの宣伝せんでんに力をそそげばいい。もしもなにかあったら、私に知らせてくれ。」

「うん、わかったよ。」

そしてぼくと大島さんたちは、家から立ち去っていった。







その日の夜、ぼくは今日の出来事を父のジェームスに報告したんだ。

ジェームスはマジシャンとして世界中で活躍しているから、いつも家にいるわけじゃないんだ。

だから帰ってきたときは、とてもうれしいんだ!

ぼくの話を聞いたジェームスは、目をかがやかせながら言った。

「喫茶店を助けるとはすばらしいことだ。世界中に喫茶店はあって、そこでは住んでいる人たちが飲み物を飲みながら、ほっと一息ついている。こんなに心がほっとするお店はない。だから無くしてしまうなんて、よくないことだ。」

ジェームスは堂々と言った。

「だけど退きを求められているのなら、すなおに立ち退いた方がいいと思うわ。」

蜜柑みかんが言った。

「だけどイーサンによると、そいつらは強引なやり方をするそうじゃないか。それは絶対になにかよくない計画をしようとしているにちがいない。」

ジェームスは自信のある顔で言った。

「もしかして、またきけんなことしようとしてるでしょ?」

蜜柑はぼくとジェームスをジロリとにらみながら言った。

「そんなことないぞ、今回の休みはひさしぶりに蜜柑とデートしようと思っていたんだ。」

「まあ、うれしいわあ!!」

それからジェームスと蜜柑はデートの予定について話し合った、今回は父さんの力は借りられそうにないなあ・・・。











 

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