第6話裏から迫りくる者

城ヶ崎さんと三原さんとの過去の話を聞いたぼくは、かなしい気分になった。

「そうか・・・、城ヶ崎さんにそんな過去があったんだね。」

「ああ、今思えば三原はおれのためにがんばろうとしていた。そのすがたにおれは心を打たれて、一時はみんなと過ごすために歩みだそうとしていた。だけどおれはすでにみんなからきらわれ、みんなのに入る事すらゆるされなかった・・・。やっぱりおれは、みんなの邪険じゃけんにされるドラゴンなんだ・・・。」

城ヶ崎さんは少しかなしそうに言った、ぼくは城ヶ崎さんに言った。

「そんなことないよ!!あのころはみんな城ヶ崎さんのことバカにしていたけど、今は有名な格闘選手になれたじゃないか!!もし城ヶ崎さんのことをきらいな人がいても、ぼくはずっと城ヶ崎さんのことが好きでいてあげるよ。だからサンフラワーを助けることに、協力してよ!!」

ぼくは城ヶ崎さんに改めてお願いした、城ヶ崎さんは少し笑顔になってぼくに言った。

「しょうがないな・・・、サンフラワーを助けることに力を貸すよ。」

「本当!!やったーーー!!」

ぼくはうれしくて、飛び上がってよろこんだ。

『竜也、本当にいいのか?』

「ああ。どのみちおれが戦っても勝てる相手じゃないし、それに悪いやつではなさそうだから。」

『そうだな、お前が言うならそういうことにしよう。』

ドラゴンも納得してくれた。

「それでおれはどうすればいいんだ?」

「城ヶ崎さんには、サンフラワーを宣伝してもらいたいんだ。あとよければ、ぼくのマジックに協力してほしいんだ。」

「いいだろう。だがおれにも予定があるから、いつでも手を貸すというわけにはいかないが、かまわないか?」

「いいよ、それじゃあみんなと会って話し合う日はいつがいい?」

「来週の日曜日でいいか?」

「いいよ、それじゃあね。」

ぼくは城ヶ崎さんとわかれた。

「やったぞ、ついに城ヶ崎さんを味方にできたぞ!!」

ぼくはふたたびうれしくなって飛び上がった。

『よくやった、イーサン。ドラゴンを宿す男を従えるとは大したものだ。』

「したがえたんじゃなくて、味方につけただけだよ。これでサンフラワーは、もっと人気になるよ!!」

『ふーん、もっと人気にねえ・・・。だけどそれだけじゃあ、ダメだな。』

「え、どうしてダメなの?」

『わがはいとしては人気は高めるよりも、いつまでも続けることが大切だと思う。人気とはすぐに出て、すぐに消えるものだ。だからいつまでも持ち続けるために、手をつくすことが大切なんだ。』

「人気はいつまでもか・・・。」

確かにパワー・ストームの言う通りだ。

昔から人気なものって今でものこっているものが多い。

それっていつでもみんなに見てもらうために、がんばっているということだ。

ぼくだってそうしている、ぼくはみんなにぼくを見てもらうことが好きなんだ。

「そうだね、そのためにもがんばるよ!!」

「それにはもう一つ解決しなければならないことがある、例の三人組のことだ。」

「それって、地上げ屋のこと?」

「あいつらはこれからもやってくる、そうなってはお客は遠のいてしまう。だからあいつらを討伐とうばつすることが重要だ。」

ぼくはがぜんとやる気がでてきた、それに反応するようにトランプが青く光った。













そして翌週の月曜日、ぼくは多目的室でみんなに城ヶ崎さんを味方にしたことについて話した。

「本当か、イーサン!!」

「マジかよ・・・。」

「まさか、本当にやるなんて・・・。」

「すごいよ、イーサン!!」

「本当になみはずれているわね・・・。」

「どうやったんですか?教えてください!!」

「すげえ!!本当にやってしまうなんて・・・。」

みんなぼくにつめよって話しかけてきた。

「いやあ、ぼくががんばっただけだよ。それでサンフラワーの宣伝に協力してもらうんだけど、どうやって宣伝したらいいかな?」

ぼくはみんなの顔を見た。

「うーん・・・、城ヶ崎さんは格闘選手だから、瓦割かわらわりとかパフォーマンスをするというのはどう?」

「瓦割りなら、私だって負けないわよ!!」

斎藤さんがやる気マンマンに言った、あの決闘で負けてから斎藤さんは城ヶ崎さんに勝つために、毎日特訓することを始めたらしい。

「それじゃあ瓦割りでまた対決させようよ、そしたら面白そうだぜ!」

文道くんが言った。

「うーん、でも喫茶店で瓦割りってピンとこないなあ・・・。」

「それじゃあ、握手会はどう?コーヒーかドリンクを注文すると、城ヶ崎さんと握手できるっていうの。」

「握手会か・・・、それならいいな。ファンの人たちをねらえる」

「よし、それじゃあ城ヶ崎さんには握手会で宣伝してもらおう。じゃあ、次にどうやって地上げ屋をやっつけるか話し合おう。」

「ええ!!あのいかつい三人と戦うの?」

「無茶だよ、イーサン!あんなやつらと戦ったところで勝てるわけないじゃないか!」

「だけどサンフラワーのためにも、あの三人はやっつけないとダメだよ。」

「それはそうだけど、そもそもあの三人についてぼくたちは何も知らないんだよ。一体どうやって勝つのか、まずは相手について知らないとダメだよ。」

「そうだったね・・・、早まっちゃってごめん。」

ぼくはみんなに頭を下げた。

「その地上げ屋の三人については、とっくに大島さんが調べているんじゃないか?」

風間くんが言った。

「じゃあ、今日ぼくが大島さんに聞いてみるよ。もし何かわかったら、みんなに報告するね。」

「ああ、よろしくね。」

そして多目的室での会話は終わり、ぼくたちは解散した。










そして夕食を食べ終えたぼくは、大島さんに電話した。

「もしもし、大島さん?」

「そろそろ電話してくることだと思っていたよ、イーサン。それで何が聞きたいんだい?」

さすが大島さん、全てお見通しだよ。

「ぼくが聞きたいのは、前にサンフラワーに来ていた三人の地上げ屋のことだよ。もう調べているんでしょ?」

「もちろん、私と緑山みどりやまで調べてきたよ。そうしたらおどろきの事実がわかったんだ。」

「なになに、教えて!!」

ぼくははやる気持ちをおさえきれない。

「あの三人は地上げ屋をしているけど、正体は藤代不動産とうだいふどうさんの社員なんだ。サンフラワーに来ていた三人は、リーダーの錦火助にしきひすけ・したっぱの二人は神田賢かんだけん宮之羽田五郎みやのはたごろうという名前だよ。」

「え!?藤代不動産ってどういうこと?あの三人はヤクザじゃなかったの?」

「それっぽいかっこうをしていたけど、本当は正社員だったんだ。それで藤代不動産についてはこんなうわさがあるんだ、『会社のホームページにすらせていないない㊙の部署ぶしょがある』というのが。」

「じゃあ、あの三人はその㊙の部署の社員ということ?」

「ああ、なにが目的だがわからないが正体をつかむことができた。イーサン、君にたのみがある。あの三人をおどろかせるイタズラを考えてきてほしいんだ。」

「わかった、とびきりのイタズラを見せてあげるよ。」

「ああ、楽しみにしている。それじゃあね。」

ぼくは通話を切ると、二かいの自分の部屋へいって、イタズラについてアイデアを考え出した。

「まず、あの三人にサンフラワーを手放すことにしたと言って、話し合うために席に座らせよう。そうしたら、味がおかしいコーヒーを出すというのもありだな・・・。それかケンカで気を引いて、近づいてきたところを・・・。」

『そなた、いろいろ考えているようだな・・・。』

パワー・ストームの声が聞こえた。

「うん!!だってイタズラができるんだもん。」

『イタズラをするなら、派手にやった方がいい。聞いたところによると、あの三人はヤクザを演じているにすぎないようだ。それなら本性ほんしょうをあばくのはかんたんだ。ゲームをしかけてみるのはどうだろう?』

「それって、前にパワー・ストームがぼくにやってきたみたいに?」

『ああ、君はトランプを使いこなすことに関しては人一倍得意だ。だからそれをつかって、相手をおどろかせてやれ。』

「うん、わかったよ。そうだ、武田くんに教えないと。」

ぼくは武田くんの家に電話をかけた。

「もしもし、武田くん?」

「ああ、イーサン。一体どうしたんだ、こんな時間に?」

ぼくは武田くんに大島さんからきいた話をした。

「そうか・・・、まさかあいつらが会社員だったとはなあ・・・。」

「ぼくもおどろいたよ、だからあいつらになにかイタズラをしてほしいと大島さんにたのまれたんだ。」

「なるほど・・・、それでイーサンにはイタズラのアイデアはあるの?」

「もちろんだよ、あいつらに『サンフラワーをゆずることにする』と言って席にすわらせるんだ。そしたらあいつらに変な味のコーヒーをいれたり、近くでわざとケンカしてあいつらをさそいだして、おどろかしてやるんだ。」

「なるほど、じゃあこういうのはどうだ?あいつらは不動産屋だから、売りたい物件があるとあの三人に紹介するんだ、その物件にトラップをしかけてあいつらをギャフンと言わせてやるんだ。」

「それいいね!!だけどそんな物件があるの?」

「おれの家の近くに南さんという人が住んでいる家があるんだけど、その南さんの家が明後日から空き家になるらしい。」

「え?南さん、引っ越しするの?」

「ちょっとちがうんだな。南さんは元々息子とそのよめさんと一緒に住んでいたけど、十日前に亡くなったんだ。それで葬儀そうぎをすませた息子とその嫁さんが、マンションに引っ越しをするということだ。」

「そうなんだ、それじゃあ明日大島さんに話して協力できるかどうか聞いてみるね。いいアイデアをありがとう!!」

「こちらこそよろしく、それじゃあな。」

ここで通話は切れた。

武田くん、やっぱり君のアイデアはすごいな・・・。

ぼくも武田くんには負けていられなくなった。








そして土曜日、作戦開始の日が来た。

ぼくはいつもどおり、サンフラワーでマジックショーをしていた。

そしてドアがドンと開いて、例の三人組がやってきた。

「おい、三原!!とうとうここを手放す気になったのか?」

お客さんはこわがっている、ぼくは三原さんに目で合図を送った。

「はい・・・。まことに残念ですが、もう続けていくのは難しいことに気づきました。それで話し合いたいことがあるので、そちらのカウンター席へどうぞ。」

三人は急に変わった三原の態度におどろいた。

「おう・・・、やっと現実がわかったようだな。」

「はい。あの、コーヒーを用意しましょうか?」

「気が利くな、それじゃあブラックを三つ。」

「おれは紅茶がいいのに・・・。」

したっぱの男がそう言うと、錦さんに頭をたたかれた。

三原さんが三人にコーヒーを出した、リーダーの男が一口飲むとすぐにむせて吐き出してしまった。

「なんだこのコーヒーは!!苦いぞ!!」

あとの二人も一口飲むと、苦くてすぐにはきだした。

「あれ?コーヒーって苦いものでしょ?」

「だけどこのコーヒーは苦すぎるぞ!!お前、客になんてもの出しているんだ!!」

三原さんが三人に出したコーヒーは、ぼくがたのんで特別にいれてもらったすごく苦いコーヒーなんだ。

三原さんによるとコーヒーはいれかた次第しだいで、苦みを調節ちょうせつできるんだって。

まず最初のイタズラは成功せいこう、つづいて二回目のイタズラ。

近くの席に座っていた大島さんが、三人に話しかけた。

「あの、藤代不動産の方ですよね?」

「あ・・・お前は何者だ!」

「私は大島というものです、今回は家の売却について相談しにまいりました。」

大島さんが三人にあいさつをした。

「ビジネスの話か・・・、売却したい家について教えてくれ。」

「ちょっと、いいんですか?今回来たのは、プレッシャーをかけるためではなかったのですか?」

「いいんだ、まともな商売の話ならいつだって大歓迎だ。」

「ほう、なかなか仕事熱心ですね。」

「それで必要な書類はあるのか?」

「はい、この封筒に。」

大島さんは三人に封筒を見せると、三人と一緒に席を移動して、話し合いを始めた。

「土地の持ち主があんたとちがうようですが・・・?」

「はい、知り合いから頼まれて私が代わりに参りました。」

「なるほど、それで実際に物件を見に行く日はどうしますか?」

「五日後がちょうど空いています。」

よし、いよいよ第二のイタズラだ。

「おい、われるってどういうことだよ!!」

「もうあんたとは、やってられないわ!!」

「わかれるなんて、絶対嫌だ!!おれにはおまえしかいないんだよ!!」

「わたしはもうあんたから魅力を感じない、そんなあんたと一緒にいられないわ!」

言い争っているのは武田くんと藤宮さん、二人には言い争っているカップルの役を演じてもらっているんだ。

藤宮さん。緊張していたけど、すごく上手に演技できているよ!!

言い争いの声がどんどん大きくなっていく、お客さんも二人を迷惑そうな視線で見つめた。

「おい、あの二人をだまらせてこい。」

錦さんに指示されて、男が武田くんと藤宮さんのところへやってきた。

「おい、ケンカは店の外でやれ。」

男が武田くんと藤宮さんをにらんだ時だ、武田くんがクラッカーを鳴らし、藤宮さんがスライムを男の顔に投げた。

「うわあ!!なんだこのヌメヌメしたのは!!」

「ドッキリ大成功!!」

「それじゃあ、またね。」

男があわてているうちに、武田くんと藤宮さんはサンフラワーから逃げ出していった。

「どうしたんだ!?」

「あいつらにやられた。なにか投げつけてきやがるし、クラッカーまで鳴らしてきた。」

「これ、スライムですよ。」

「とんだイタズラだな、ガキのくせにこんなことしやがって。」

「よければ私のタオルを使いませんか?」

大島さんがタオルを差し出した、男はそのタオルでスライムをふき取った。

それから大島さんと三人は話を進めていき、そして三人はサンフラワーを後にした。

大島さんがぼくに話しかけてきた。

「これで五日後にやつらが来ることになった、イタズラのしかけはまかせたよ。」

「うん!!とびきりなのを見せてあげるよ、楽しみにしていてね。」

「ああ、待っている。」

ぼくと大島さんはたがいに固くあくしゅをした。








そして翌日、ぼくたちは武田くんに案内されて南さんの住んでいた空き家にやってきた。

「ここが例の空き家だよ。」

「空き家にしてはずいぶんきれいじゃないか。」

「空き家になったばかりだからね、さあ中へ入ろう。」

「え?勝手に入って大丈夫かしら・・・?」

「うん、南さんから「もう好きにしていいよ」って言われているし、荷物はもう新居に持ってきてあるから、家の中にはなにもないって。」

そしてぼくたちは空き家の中へ入っていった。武田くんの言う通り、空き家の中にはなにも家具はなかった。

「ここでイタズラをして、あの地上げ屋をおどろかしてやるんだね。」

「そのことなんだけどね、どうも相手が少しちがうようなんだよね。」

ぼくはみんなに大島さんからきいた三人について話た。

「なーんだ、本物のヤクザじゃなかったんだ・・・。」

神島くんががっかりした声で言った。

「なるほど、これにはなにか裏があるな・・・。」

「喫茶店をなくして、一体なにをしようとしているんだろう?」

「それはもちろん、別の建物を建てるつもりだよ。マンションとかコンビニとか。」

「たしかにそのような建物の方が大事かもしれないけど、やっぱりサンフラワーのような喫茶店は必要だよ!!みんながほっと一息つける場所があってこそ、いろんな人が毎日を過ごせるとぼくはそう思うんだ。だからサンフラワーはなにがなんでものこしていかなきゃ。」

「イーサンの言う通りだ、そのためにもあの三人をやっつけて悪だくみを明らかにしよう。」

武田くんが言うとぼくたちはこぶしをつき上げて「オーッ!!」と言った。

さあ、アッとおどろくイタズラがはじまるよ。これからの準備が楽しみだ!!








 








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る