第3話恐るべきドラゴン
土曜日になった、サンフラワーには僕とアシスタントとして武田さんと藤宮さんがやってきた。
「さあ、いよいよマジックが始まるぞ!!」
「はりきっているなあ・・・。」
「さすが根っからのマジシャンね・・・。」
そして僕たちはサンフラワーに入って、バックヤードへ入り、衣装や道具などの準備をした。
「今回のラストマジックは特別なんだ、楽しみにしていてね。」
僕はとくいげに二人に言った。
なぜならそのラストマジックというのは、初めてパワー・ストームの力を使うマジックだからなんだ!!
おそらく昨日話した武田君にはわかっちゃうけど、まだ話していない藤宮さんはきっとおどろくぞ・・・フフフ。
「イーサン、もう時間だよ。」
三原さんが声をかけた、僕は武田くんと藤宮さんと一緒に店内の開けたところへきた。
元々この場所は、ミュージシャンをめざす人たちやいろんなパフォーマンスをする人たちが、
「パンパカパーン!!さあ、お立会い!今日は僕、天星イーサンのマジックショーをお楽しみください!!」
僕は高らかに言った、少ないお客さんの視線が僕に向けられた。
「さあ、まずはこのサイコロを使ったマジックです!」
僕は藤宮さんが用意した赤色のカップにサイコロを入れて、右にある黄色のカップと左にある青色のカップと一緒にシャッフルした。
「さあ、赤色のカップを開けると・・・ありゃ!!サイコロが消えちゃいました。一体サイコロはどこへいってしまったのか・・・、。」
僕は青色のカップと黄色のカップを開けたが、サイコロは無い。
「ありゃりゃ!!サイコロが消えました!一体どこへ・・・?」
僕がきょろきょろしていると、藤宮さんが握っていた右手を開いた。
そこには赤色のカップに入れたサイコロがあった。
「なんと!!赤いサイコロは、彼女が持っていました!!」
少ないお客さん全員が、僕に拍手を向けてくれた。
少ない拍手だけど、僕はうれしかった。
そしてこの後も、「十円玉を五十円玉・百円玉へとグレードアップさせていくマジック」と「いろんな色のハンカチがシルクハットに入るごとに合体して、カラフルなチェック模様のハンカチになる」というマジックをしたんだ。
「すごいな!!」
「あの少年、何者なんだ?」
「確か・・・、ジェームスの息子さんだっけ?テレビで見たことあるよ。」
ふふふ・・、実はお父さんとテレビでマジックショーしたことあるんだ。覚えていてくれてありがとう!!
「さあ、いよいよラストマジックの時間です!!このマジックは、オーナーの三原さんにも協力してもらっています。それでは三原さん、例のものお願いします!!」
「はーい!!」
三原さんは陽気な声でミルクセーキを乗せたお盆を持って現れた。
このミルクセーキは松岡くんのお姉さんたちの
「ここにあるのは、甘くて美味しいミルクセーキです!!今から手を使わずに、この全てのミルクセーキをお客さん全員に渡します!!」
そして僕はトランプをシャッフルして右手を置いた。
ここで僕が引くカードは、ダイヤの10のカードだ。
それ以外を引いたらこのマジックは失敗だ、僕の手に汗が出た。
「ここからだ・・・、ここでミスをしたくないけど、おそれていたらダメだ!!」
僕は力を入れてなめらかに、カードをドローした。
「・・・よし!!ダイヤの10だ!!」
今日は最高だ!!
引いたカードから風が起きて、ミルクセーキを包み込むと宙に浮かびだした。
「うわあ!!何だあれは!?」
「宙に浮かんでいるぞ!!」
「あわわわ!!このままでは、ミルクセーキが落ちてしまうぞ!!」
お客さんは宙に浮かぶミルクセーキにおどろき、あわてている。
しかしミルクセーキは宙をただよいながら、お客さん全員にわたされた。
「おおー!!ちゃんととどいたぞ!」
「すごい、最高のマジックだ!!」
「いいぞ、少年!!」
「みなさん、お楽しみいただけましたか?僕のマジックショーは、これから毎週土曜日に
僕はシルクハットをふってバックヤードのところへ戻っていった。
「ふう・・・、みんな笑顔になって良かった。」
僕はほっと一息ついた、みんな楽しめてよかった。
「イーサン、すごいマジックだったよ。」
「わたし、すごく驚きました。さいごのミルクセーキが宙にうくマジックは、とてもすごかったです!」
藤宮さんはとてもかんげきしている、すると武田くんが僕に近づいて耳もとで言った。
「イーサン、最後のマジックはパワー・ストームの力を使ったんだろ?」
「やっぱり、君にはわかってしまうんだね。」
「当り前さ、だっておれや藤宮さんには最後のマジックのこと説明してないでしょ?その時はいつも予想外のマジックがでることになっているから、そうなるとパワー・ストームの力を使ったマジックがでるだろうと予想したんだ。」
「でもおもしろかったよね?」
「ああ、とてもおもしろかった。」
武田くんはさわやかな笑顔で言った、僕はそれを見てさらにうれしくなった。
そして翌日の日曜日、ゴールデンウイークイベントが開かれる日になった。
今回僕の活躍は無いけど、斎藤さんと城ヶ崎さんが特別試合をするイベントがあるんだ!
僕・武田くん・神島くん・藤宮さん・文道くん・松岡くんは、イベントが開かれている市民体育館に来ていた。
「それにしても凄い人だな・・・。」
「地元で顔の知れた空手の天才の斎藤さんとが、ドラゴンキングと呼ばれている竜也さんと試合するんだ。これくらいの人が来るのは当り前さ。」
「なあ、大島さんのところに行こうぜ。城ヶ崎さんに会えるかもしれないし。」
「そうだね、神島くん!」
こうして僕たちは大島さんのところへむかった。
大島さんは背がとても高く筋肉が太い男と話していた。
「大島さん!」
「あ、イーサンたち。竜也くんに会いに来たんだ」
「ん?イーサン、ひさしぶりだな。」
「ひさしぶり、城ヶ崎さん。」
僕は城ヶ崎さんにおじぎをした、でもほかの四人は城ヶ崎さんの
ふだん強気の神島くんも、冷静な風間くんも、ちびりそうになっている。
「うわあ、すごい迫力だ・・・。」
「まるでドラゴンが目の前にいるみたいだ・・・。」
「おれ・・・、こんなにこわいと感じる人と出会ったの初めてだ。」
「あわわわ・・・、ねえねえ、早く逃げようよ。」
「いや、たぶんなにもしないんじゃ・・・。」
「みんな、なにもこわくないよ。見た目はこわそうだけど、試合以外で人をなぐったりはしないよ。」
僕の言うことに、みんなほっとした。
「イーサン、どうも今回の対戦相手はあんたの仲間だそうだな。中学一年生でありながら、おれに立ち向かう
「わかってる、おたがいプロだもんね。」
僕は城ヶ崎さんの目を見た、いさましくするどい目をしている。
「それではまた、試合で会おう。」
そう言って城ヶ崎さんは行ってしまった。
「イーサンも見たと思うが、これが城ヶ崎竜也という男だ。念のために斎藤さんにはプロテクターをつけた状態で試合することになっている、だがそれはあくまでもケガをしないためのものだ。私は斎藤さんが城ヶ崎くんに勝てるとは、ありえないと思う。」
「大島さん・・・、それでも斎藤さんはがんばりますよ。」
僕は大島さんにむけて言った。
そしていよいよ、決闘の時が来た。
「みなさん、いよいよやってまいりました!!今回の一大イベント『
体育館じゅうに司会者の元気な声がひびいた。
そして道着と安全具を着た斎藤さんが堂々と入場した。
「さあ、わが町の期待のヒロイン!!斎藤葵が登場しました。
「みんな!!私は絶対に負けないよ!!だから応援してね!!」
斎藤さんは明るく元気に言った。
「葵~!!がんばれ~!!」
斎藤さんのお父さん・
「負けないで、斎藤さん!!」
僕も大声で応援した。
そして今度は安全具を着た城ヶ崎さんが入場した。
「そしてついに降臨!!ドラゴンキングこと城ヶ崎竜也選手です!!圧倒的な体格とするどい目と存在感、それはまさにドラゴンを連想させます!!総合格闘技の選手として日本から世界へと活躍している、有名な選手です!!そして今回は、斎藤さんとの試合を特別にうけてくれました!!」
「うおおおーーー!!」
城ヶ崎さんはおたけびをあげた。
すると自信満々な斎藤さんの顔が、おどろいた後少しおびえている表情になった。
「お前が斎藤葵か・・・、始めるとしよう。」
城ヶ崎さんは構えた。
「よ・・よし!!負けないわ、かかってきなさい!!」
斎藤さんは気を取り直して構えた。
「今回は一対一の試合で行われ、四名の
そしていよいよ決闘の瞬間がきた。
「それでは、始め!!」
合図がかかったとたん、城ヶ崎さんは斎藤さんの腹を
「ああ!!斎藤さん・・・。」
僕はあっさり倒された斎藤さんにおどろきをかくせなかった。
そして城ヶ崎さんは倒れた斎藤さんを突いた。
「そこまで!!」
審判から合図が入り、副審の四人が青旗を上げた。
「この勝負、城ヶ崎選手の勝利です!!さすがは総合格闘技のプロ選手、あっという間に勝利しました!!」
「ウソでしょ?斎藤ちゃんが、こうもかんたんに・・・。」
「本当に人間離れしているぜ・・・。」
藤宮さんと神島くんは絶句した。
二人だけではない、僕・文道くん・武田くん・風間くん・松岡くんもおどろきのあまり言葉がでなかった。
「大丈夫か?次を始めるぞ」
「ううぅ・・・。」
斎藤さんはくやしそうな表情で立ち上がると、すぐに構えた。
そして第二回戦がはじまった、斎藤さんは城ヶ崎さんの胸を狙って突いてきたが、かわされてまたおなかをけられた。そして倒された斎藤さんに、城ヶ崎さんは突いた。
そして試合が終了し、また副審の四人が青旗を上げた。
「また城ヶ崎選手の勝利です!!これでこの三本勝負の勝者は、城ヶ崎選手です!!まさに圧倒的な強さ、斎藤選手は手も足も出ませんでした!!」
「うそでしょ・・・、私が負けるなんて・・・。」
斎藤さんは呆然としている。
「まだまだだな・・・、素質はあるが体格の問題だ。三年か四年たったら、また相手をしてやる。」
城ヶ崎さんは斎藤さんにそう言って会場から出ようとした。
その時、斎藤さんが大声でさけんだ。
「待って!!もう一度、試合して!!」
城ヶ崎さんは斎藤さんの方を向いた、僕たちもおどろいて斎藤さんの方をみた。
「斎藤さん、もういいよ。」
「そうよ、あなたはよく戦ったわ。とてもがんばった!!」
「そうだよ、これ以上やっても勝てっこないよ!!」
僕たちは斎藤さんを止めようとしたが、斎藤さんは僕たちに向かって言った。
「わたし、決めたんだもん!!絶対に城ヶ崎さんに、勝利するって!!そしてサンフラワーとみんなの役に立ちたいの!!だから、どうしても城ヶ崎さんに勝ちたい!」
斎藤さんは泣きながらさけんでいた。
すると城ヶ崎さんが、戻ってきて斎藤さんに言った。
「そこまで言うなら、もう一試合やろう。ただしこれが最初で最後のチャンスだ。」
「・・・はい、ありがとうございます!!」
「竜也くん、いいのかい?」
大島さんがたずねると、城ヶ崎さんはうなずいた。
「さあ、ここでなんと!!特別にもう一試合することになりました!!果たして、斎藤選手は城ヶ崎選手にどこまでいけるのでしょうか!?」
観客たちがもりあがりながら、試合に見入った。
「それでは・・・、始め!!」
そして試合が始まった。
城ヶ崎さんが斎藤さんのおなかをねらって突いてきたとき、斎藤さんはそれをよけることができた。
「いいぞ、斎藤さん!!」
そして斎藤さんは城ヶ崎さんのむねに蹴りをいれた、ここで初めて城ヶ崎さんに
だけど斎藤さんのかつやくはここまでだった・・・。
あとは前回と同じく城ヶ崎さんが、あっさりと倒してしまった。
「またもや、城ヶ崎選手の勝利です!!泣きの一回すらも手を抜かない容赦のない精神、まさにドラゴンキングです!!」
そして城ヶ崎さんが立ち去ろうとしたとき、斎藤さんはすぐに立ち上がって城ヶ崎さんへ走っていって、背中に蹴りを入れた。
「うっ・・・・、お前!!」
「まだ、終わってない。私と戦え!!」
「こら!!なにやっているんだ!!」
「なんてことを!!」
強志さんと大島さんが斎藤さんを取り押さえた。
「放して!!私は勝たなきゃいけないの!!」
「いい加減にしろ!!」
大島さんが今まで聞いたこともない大声で怒って、斎藤さんのほっぺをビンタした。
「もうわかっているだろ!?君は竜也には勝てないということを!?このまま挑んでも、負け続けるだけだ!!リベンジしたいなら、力をつけて一から出直せ!!」
大声で泣き出した斎藤さんを、大島さんは抱きしめた。
「城ヶ崎さん、うちの娘が大変失礼をいたしました。本当に申し訳ございません!」
強志さんは城ヶ崎さんに謝罪した、大島さんと斎藤さんも後に続いて謝罪した。
「いいですよ。まだまだですが、これからがんばれば
そして城ヶ崎さんは体育館から出ていった、僕はその後を追いかけた。
「待って、城ヶ崎さん!!」
「ああ、イーサン」
校門へ行く城ヶ崎さんを僕は引き止めた。
「お願いがあるんだ、サンフラワーに来てくれない?」
「それは『斎藤が俺に勝てたら』という約束の結果じゃないのか?」
「確かにそうだけど、これは僕の
「そうなのか、だが俺はサンフラワーに協力するつもりはない。」
「お願いします!あなたの人気なら、必ず上手くいくんだ!!」
「
城ヶ崎さんは、僕をにらんだ。だけど僕はそれにひるまずに話続けた。
「サンフラワーのオーナーがだれか知ってる?」
「何者だ?」
「三原さんだよ、覚えている?」
城ヶ崎さんは少し考えてから答えた。
「ああ、小四のときの
「覚えていたんだ・・・、それなら協力しても・・・」
「それはできない、悪いが先公にはいやな思いでしかないんでね」
「そんな・・・。」
僕は城ヶ崎さんに何も言えなかった・・・、そして城ヶ崎さんはそのまま行ってしまった。
『残念だなあ、イーサン。だがあの男、面白いものを持っている。』
パワー・ストームの声が聞こえた。
「城ヶ崎さんが面白いものを持っている・・・?」
『やつはドラゴンと呼ばれているが、やつの中には本当にドラゴンがいる。それが奴の強さの秘密になっている。』
「城ヶ崎さんの強さの秘密・・・?」
『その秘密がわかれば、城ヶ崎竜也を味方にできる。サンフラワーのためにがんばるのなら、城ヶ崎竜也の秘密をあばくことが重要だ。』
「わかった。僕、やってみるよ!!」
僕は城ヶ崎さんをなんとしてでも味方にするぞ!!
僕のやる気が高まるように、僕のトランプが青白く光り出した。
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