第2話喫茶店「サンフラワー」

僕たち七人は大島の運転する大型のベンツに乗って、喫茶店へ向かった。

「ついたぞ、ここが目的地だ。」

僕たちが車からおりると、目の前にコンビニくらいの大きさの古びた喫茶店があった。

「ここが僕たちの助ける喫茶店・・・。」

入り口の看板には「サンフラワー」と書かれていた。

「サンフラワー・・・、ひまわりという意味ね。」

「でも経営難の割に見た目はそんなに古びていないなあ・・・。」

「風間くんの言う通り。この喫茶店は初オープンしてから三年しかたっていないからな。」

大島に案内されて、僕たちは喫茶店の中に入っていった。

「やあ、大島さん。その子たちは・・・?」

「ああ、前に言った『チーム・ブンガブンガ!!』だよ。ついさっき、新たに一人メンバーが加わったけどね。」

僕たちはカウンター席とテーブル席にそれぞれ座った。

「改めて紹介します、三原厚良さんだよ。」

「はじめまして、喫茶店サンフラワーのオーナーをしています三原です。」

三原さんはかみが長くところどころに白髪しらががある優しい感じでけた印象の男だった。

「それで、この喫茶店が経営難ってどういうこと?」

「はい、実はオープンしてからはそれなりに人気だったのですが、近くに有名喫茶チェーン店ができてから売り上げが減少していきました。でも常連客がたくさんいたから、潰れることなく今日までやってこれました。ですが・・・。」

突然、入り口のドアがドンと大きな音をたてて開いた。

「うらあ!!邪魔するぜ!!」

そしておでこに傷のついた男が二人の男と一緒に入ってきた。

僕たちは危険を感じて、カウンター席と机の下に隠れた。

僕たちと三原さんは男たちの派手で強面の顔にふるえあがった。

「あれって、ヤクザか?」

「ああ、見た目からして間違いない。」

「ちょっと、これはふつうに考えて危険じゃないですか!!」

「よし、私が飛びだしてやっつけてやる。」

「待て、斎藤。ここは様子を見よう。」

「マジで本物見ちゃったよ・・・。」

そして男は三原を睨みながら言った。

「おい、いつになったらこの喫茶店を閉めるんだよ!!」

男はカウンターを強く叩きながら怒鳴った。

「わ・・・私は、大事な店を閉める訳にはいかない・・。ここを楽しみに来てくれるお客もいるんだ。だからここは私を閉める訳にはいかない。」

「しぶといなあこの野郎!!いいか?この辺りの連中は、こんな小さな喫茶店ではなく、みんなが住めるマンションなんだよ!!喫茶店なんて個人経営こじんけいえいの小さな店よりも、有名チェーン店で十分なんだよ!!こんなところは閉店したほうが、みんなのためなんだよ!!」

この男の言っていることはひどいよ!

三原さんはこの喫茶店のことがとても大切にしているんだ、それを「みんなのため」とか言って悪口を言うなんてまちがっている!!

「そんなことないよ!!」

「イーサン!危ないよ!!」

「イーサン、下がって!!」

「ああ?誰だこのクソガキ?」

僕は男たちの前にとびだした、男たちは僕をいっせいににらんだ。

「この喫茶店にはもっといい所があるはずだよ、無くすなんてもったいないよ!!」

「んだと!?えらそうに言うんじゃねえ!!」

おでこに傷のある男が僕になぐりかかった、するとパワー・ストームの声が聞こえた。

『トランプからカードをドローするんだ。』

僕はとっさにポケットにあるトランプから一枚ドローした、ドローしたカードはハートの3。

するとドローしたカードから、よろいを着た騎士きしが現れた。

「えっ!!なにこれ!!」

「な・・・何だこれは!!」

「おどろいた・・・、私はまぼろしを見ているのか?」

その姿に僕やみんな、大島さんに三原さん、そして三人の男たちはおどろいた。

「イーサン、こいつらはてきか?」

「うん、追い出して!!」

「何言っているんだ、この野郎!!」

男たちが騎士にむかっていったが、騎士は男たちをけんであっさり倒してしまった。

男たちは「覚えてろ!!」とすてぜりふをのこして喫茶店から出ていった。

「ふう・・・、なんとか追い出せました。」

三原さんはつかれてカウンターに伸びてしまった。

「三原さん、あの三人は何者なの?」

「あいつらは半年前から現れた地上げ屋たちだ。どうやらこの土地を買収して、大きなマンションを建てようとしているんだ。あいつらが来るようになってから、常連客じょうれんきゃくも行きづらくなってしまい来なくなった。さっき私は『閉めるもんか!!』と言ったが、正直言っていつ閉めようか考えているんだ・・・。」

三原さんは暗い表情で言った、僕は元気な声で三原さんに言った。

「あの三人は喫茶店を悪く言ったけど、僕たちは違う。僕たちと力を合わせてこの喫茶店をもっとよくして、あの三人をあっと驚かしてやろうよ!!」

「・・・あの、君の名前は?」

「僕は天星イーサン、そして僕の仲間たち『チーム・ブンガブンガ!!』だよ!」

僕たちは三原さんに自己紹介をした。

「そうか、私のために力を貸してくれるのか・・・。ありがとう」

三原さんは僕たちに深く頭を下げた。

「それでさっそくだけど、この喫茶店を再び人気にするいいアイデアはあるかな?」

大島さんが僕らの方を見て言った。

「じゃあ、ここでマジックを披露するのはどう?」

「それは確かに話題になるけど、マジックができるのはイーサンだけだぜ。」

僕のほかのメンバーもマジックの練習はしているが、正直言って人前で見せられるほど上手じゃない。

「じゃあ、アシスタントをしてもらうよ。交代でやればいいから」

「そうか、それじゃあ週一でマジックショーをすることにしよう。」

そしてみんなで話し合った結果、毎週土曜日にサンフラワーでマジックショーをすることになった。

「じゃあ、次はなにをやる?」

「あの、一ついいでしょうか?」

風間くんが手をあげた。

「さっきこのメニューを見てみましたが、どうもぱっとしない感じがするのです。」

「どういうこと?」

すると風間くんは僕にメニューを見せた。

「うーん・・・。あ!このメニュー、コーヒーばかりだ。」

「何がおかしいんだ?ここは喫茶店じゃなないか」

三原さんは当たり前な顔で言った。

「いや、確かにここは喫茶店だけど、コーヒー以外に何か飲み物があるでしょ?オレンジジュースとかクリームソーダとか、そういう冷たい飲み物とか出してないの?」

「いや、ここはコーヒーのお店だからコーヒーしか出さないよ。まあ、モーニングメニューは出しているけど。」

「でもさあ、コーヒーばっかりだと品数が少ないでしょ?それ以外にも何か飲み物は出せないの?」

「そうだぞ。コーヒーしか出さないなんて、これじゃあオヤジかジジババしか来ないぜ。」

神島くんが言った。

「うーん・・・、この喫茶店は私と二人のバイトでやっているんだ。二人のバイトは雑用しかできないし、私はコーヒーしか作れないからな・・・。」

「あっ、そうだ!!姉ちゃんの力を借りよう」

突然、松岡くんが言った。

「どういうこと?」

「僕の姉ちゃん、料理学校に通っていて飲み物を作るのが得意なんだ。だから、姉ちゃんに頼めばコーヒー以外の飲み物も出せるようになるよ。」

「それ、いいね!じゃあ頼んでくれる?」

「うん、いいよ。」

「さて、他にアイデアは無いかな?」

イーサンはみんなの顔を見たが、いいアイデアは浮かばないという顔だ。

「なあ、イーサンのマジックショーの追加案だけど、ジェームスにも出てもらったらどうだろう?」

風間くんが言った。

ジェームスは僕のお父さんでマジックの師匠、日本だけじゃなく世界中で活躍かつやくしているマジシャンなんだ。

「うーん、確かにいいアイデアだけど、父さん今は仕事で忙しいからな・・・。」

「そうか。有名人が来てくれたら、かなり人気がでるけどなあ・・・。」

「私もあの城ヶ崎さんがここに来てくれたら・・・って思ったよ。」

三原さんが言うと、大島さんが「えっ!!」と立ち上がった。

「城ヶ崎さんって、あの城ヶ崎竜也じょうがざきりゅうやか?」

「はい、そうです。」

「知ってたのか、三原さん!?」

大島さんに続いて神島くんがおどろいて立ち上がった。

「ねえ、城ヶ崎さんって誰?」

斎藤さんが質問すると、風間くんが答えた。

「城ヶ崎竜也、二十五歳さいプロの総合格闘技選手そうごうかくとうぎ。『愛知あいた巨竜きょりゅう』という名で呼ばれ、数々の大会で優勝。そして全世界格闘技フロンティアトーナメント優勝以後、『ドラゴンキング』と呼ばれ国民的人気選手となった。」

「そうそう、特に全世界格闘技フロンティアの決勝戦は死闘だったぜ。」

「ああ、俺も格闘技の試合で初めて手に汗握ったよ。」

武田くんと神島くんがあの時を思い出してもりあがっている。

「城ヶ崎さんなら僕も知っているよ、でも三原さんはどうして城ヶ崎さんのことを知っているの?」

「実は私、喫茶店を始めるまえは小学校の先生をしていてね、小学四年生の彼をおしえていたんだよ。」

「なるほど、そういうことでしたか。」

「ねえ、その城ヶ崎さんをなんとかここへ連れてこれないかな?」

僕が提案すると、みんなは「ええ!!」とおどろいて僕の方をみた。

「城ヶ崎さんをここへ・・・?」

「うん、だってこんなに有名な人が来るお店なら、絶対に人気がでるよ。それに城ヶ崎さんを連れて行くことなら、大島さんに任せればいいしね。」

「それはいいけど・・・、彼いつも連れないというか、格闘の話にしか興味がない人なんだよね。だから私が何度も声をかけてもスルーされてしまうんだ。」

「あ、そうだ!!だったらあたしと決闘けっとうさせてよ。」

斎藤さんが元気よく手をあげながら言った。

「え!?斎藤、お前はドラゴンキングにケンカを売るつもりか?」

「ケンカじゃなくて決闘だよ!!私が城ヶ崎さんを倒して、ここの宣伝をしてもらうようにするのよ。絶対に勝利してみせるわ。」

斎藤さんはすごくはりきっている、でも僕はとても心配だよ。

「斎藤さん、決闘はやめたほうがいいよ。」

「そうよ斎藤さん!!いくら日本小学生空手大会で優勝しているあなたでも、世界を相手に勝利した城ヶ崎さんには勝てないわ。」

藤宮さんが必死に斎藤さんを止めようとしているが、思い立った斎藤さんは簡単には止められない。

「ねえ、城ヶ崎さんに私と決闘してって伝えてよ。」

「うーん・・・、じゃあこうしよう。来週の日曜日に、ゴールデンウイークイベントが開かれることになっている。そこで君と城ヶ崎さんに戦ってもらおう。」

「いいの!?さすが大島さん、話しがわかる~!!」

斎藤さんは飛び上がって喜んだ。

「いいんですか?斎藤さん絶対にケガしますよ・・・。」

藤宮さんは大島さんの方を見つめた。

「大丈夫、斎藤さんのご家族にも説明するし、責任は私が取る。」

「よし、それじゃあ今日は解散してまた明日話し合おう。」

そして僕たちはサンフラワーを出て、大島さんの家に向かった。













大島さんの家から帰るとちゅうで、僕は武田くんに質問された。

「そういえばイーサンのトランプ、一体どうしたんだ?」

「え!?どうしたの、武田君?」

僕はおどろいて武田君の方を見た。

「だってサンフラワーに地上げ屋の三人が来た時に、トランプから騎士が現れてその三人を追い払ったんだろ?」

「俺も見たぞ。助けてくれたことは感謝するけど、一体どういうことなのか説明しろよな。」

「そうです、教えてください。」

神島くんと風間くんが僕につめよってきた、だけどあの話を信じてくれるかな・・?

『イーサン、わがはいのことを話すべきだ。下手にかくしつづけるよりも、うちあけて理解してもらったほうが、後で役に立つ。』

パワー・ストームの声が聞こえた。

僕はパワー・ストームの言う通りだと思った、親友にかくしごとなんて僕にはできない。

「いいよ。だけど僕でも正直信じられない話だし、マンガみたいでそんなことあるわけないという内容なんだけど、最後まで聞いてくれる?」

「うん、もちろんだよ。」

「当たり前なこと言わせんなよ、イーサン。」

「そうですよ、何も気にせずに話してください。」

三人は笑顔で言った。

僕はパワー・ストームとの出会いのいきさつを全て話した。

「そんなことが・・・、じゃああの時の騎士はパワー・ストームの力が生み出したものだったんだね。」

「そんな力が、イーサンのトランプの中にあるというのかよ・・・。」

「イーサン、僕たちにその力を見せてくれ。」

「いいよ。」

僕はトランプを出して、カードを一枚ドローした。

ドローしたカードは、クローバーの4。

するとカードが光って、カードから風が吹き始めた。

「なんだ、この風・・・。すごく気持ちいい。」

「ああ、今までにないくらい気持ちいい。」

「すごい・・・、一体どうなっているんですか?」

三人はとても驚いている。

『クローバーの4、癒しのつむじ風のカードをドローしたか。ちなみにくわしく説明すると、奇数きすうの数字のカードは自分が使役できる仲間のカードで、偶数ぐうすうのカードはパワー・ストームの力を使って起こす魔法・仕かけのカードだ。それぞれ使いわけて、上手く使うがいい。』

「へえ、そうなんだ~」

僕はトランプを一枚一枚見ながら、わくわくした気分になった。










そして僕は自分の家に帰って来た、僕は母さんの蜜柑みかんに声をかけた。

「母さん、今日大島さんちに行ってきたんだ。」

「はいはい、また何かすることになったんでしょ?」

蜜柑はキッチンで夕ご飯をつくっている。

「うん!!今回は喫茶店を助けるために、毎週土曜日にマジックショーをすることになったんだ。」

「喫茶店で・・・?お店の許可を取ってあるの?」

「うん、そこは大丈夫だよ。」

「その喫茶店の名前は?」

「サンフラワーっていうんだ。」

「ああ、あのお店ね。どうも評判があまり良くないみたいなのよ・・・。店の雰囲気もコーヒーの味もいいんだけど、モーニングメニュー以外全部コーヒーなのよね。」

蜜柑は風間くんが言っていたのと同じことを言った。

「確かにそうだけど、きっと見に来る人はいるよ。」

「そうね。来週の土曜日、サンフラワーに来てみようかしら?」

そして僕は二階に上がって、自分の部屋に入った。

そしてあらためてトランプを見た。

「パワー・ストームの力がこめられた、僕だけのトランプ。これから僕はこのトランプで、多くのおどろきと笑顔をみんなに届けるんだ!!」

「はたして、そなたの思いのままになるのかな?」

またパワー・ストームの声が聞こえた。

「え、どういうこと?」

『パワー・ストームの力は強大で偉大いだいなるものだ、それにより使い方をまちがえれば、周りのものを壊すだけではなく、そなたが死ぬことだってありうるのだ。』

「え、僕が死んじゃうの・・・?」

僕は一気に不安になった。

僕を守ってくれた騎士もみんなを癒してくれたあの風も、使い方しだいで僕やみんなを傷つけることになってしまう・・・。

そんな力をこれから上手く使いこなせていけるのだろうか・・・?

「なんだか、不安になってきたよ・・・。大切なものや親友を失ってしまうのが、すごくこわい・・・。」

『だがそなたは私と契約を交わした以上、パワー・ストームの力から逃れることはできない。』

「うーん、でも気楽にやっていけばいいよね。だってこの力は僕が望んで手に入れた力だもん!」

『そなたらしいな、まあこれからお前がパワー・ストームの力をどう使うのか見させてもらうぞ。』

「ああ、見ててよ。君もおどろくほどすごいものを見せてあげる。」

僕はパワー・ストームに言うと、トランプを自分の机の引き出しにしまった。


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る