嵐のマジックショー「ドラゴンと喫茶店」
読天文之
第1話パワー・ストームのカード
もうすぐ始業式だ、僕はワクワクしながら先生が教室に入ってくるのを待っている。
僕は朝一番で教室にきて、これから起こるミラクルのための仕掛けを用意したんだ。
「みんな、席につく時間だぞ」
担任の
「今だ!!」
すると机から突然庭の鳩が飛び出した、倉持先生はおどろいて尻もちをついた。
「いたた・・・。天星、またお前か。」
倉持先生は僕をやれやれという顔で見た、クラスのみんなは僕にたいして拍手を送った。
僕の名前は
得意なことはマジック、いつもみんなをあっと驚かせていることが僕の楽しみなことなんだ。だってみんな最後は喜んで拍手してくれるんだもん。
毎日の日課は教室に入ってくる先生をビックリさせる、モーニングマジック。
これが一番みんなにウケるマジックなんだ、まあもちろん倉持先生にはいつも怒られてばかりいるんだけどね・・・。
こうして僕は大好きなマジックをしながら、楽しい毎日を過ごしているんだ。
でも楽しいのはマジックだけじゃない、僕には愉快な友だちがいるんだ!
まずは大親友の
いつも突っ張っている
何でもできる
空手の天才、
おちゃらけていて面白い、
そして真面目なクラス委員長、
この六人と僕を合わせたのが、チーム・ブンガブンガ!!
マジックとイタズラでみんなをあっとおどろかせてたのしませることをモットーに活動しているんだ!!
早くみんなとこれからやることについて話しあいたいなあ・・・、僕は楽しみな気持ちを胸にしまって授業をうけたんだ。
そして待ちに待った放課後の時間がやってきた!!
「イーサン、行こうか。」
僕の肩に手を置いて武田君が話しかけてきた。
「今から行くところだよ、武田君。」
こうして僕は武田君と一緒に二階の多目的室へ向かった。
そこがチーム・ブンガブンガの活動拠点なんだ、まあ「マジック部」という部活動ということで、学校には正式に活動を認めてもらっている。
「みんな、いる~?」
僕は多目的室の扉を開けて声をかけた。
「いるよ。」
「おせーぞ、イーサンと武田」
「よし、これで全員そろったぜ!」
「早く始めようよ!!」
「部長、早くしてください」
みんなにせかされて、僕は言った。
「合言葉は・・・、ブンガブンガ!!」
僕が元気に言うと、六人は「ブンガブンガ!!」と続いた。
この「ブンガブンガ!!」という合言葉には特別な意味があるんだ。
それは僕のあこがれの人「ホレス・ド・ヴィアー・コール」がイギリスで流行させた言葉なんだ。
コールはケンブリッジ大学の学生なんだけど、勉強はほとんどせずに様々なイタズラで周囲を楽しませていたんだ。
そんなコールはなんと、イギリス
コールはなかまたちと一緒に、エチオピアの
その時に「ブンガ、ブンガ!」とあらゆるものを見てはほめたんだ。もちろんデタラメの言葉なんだけど、海軍たちは「エチオピアの皇帝からほめられた」と大いに喜んだ。
その後コールは自分からマスコミに連絡して、
そのせいでイギリス海軍はみんなの笑い者、腹を立てたイギリス海軍はコールたちを
僕は海軍をだますような大胆なイタズラはできないけど、みんなが心から笑えるイタズラをするのが僕の夢なんだ!!
「さて、今日はどんなイタズラをしたか話てくれ。」
これはおなじみのイタズラくらべ、だれかが必ず一回イタズラをするのが「チーム・ブンガ、ブンガ!!」のルールなんだ。
「はいはーい!!今回はぼくがイタズラをしました!!」
文道くんがいきおいよく手を上げた、早く話したくてたまらないようだ。
「では文道君、どうぞ」
「今回したイタズラは、
「それ、私もやられたわ。本当にビックリしたんだから・・・。」
藤宮さんはため息をついた。
「まあ、すぐに先生に見つかって怒られたけどね・・・。みんなとても驚いていたよ。」
僕たちが話に夢中になっていると、多目的室の扉が開いて声がした。
「あの、マジック部はここであっていますか?」
僕たちが扉の方を見ると、僕たちより一回り背の高い男子が現れた。
「はい、そうだよ。君は上級生?」
「はい、2年3組の
松岡くんは照れながら僕たちのところにやってきた。
「君はマジック部に
たずねると松岡くんはうなずいた。
「僕は運動が苦手なんだけど、手先は器用だからこれを活かせる特技をさがしていたんだ、マジック部は僕に合っていると思ったんだ。」
「そうか、じゃあ入部していいよ!みんなと一緒に楽しいマジックをしよう!!」
僕と松岡くんは互いに握手をした。
「それじゃあ、入部届けを出してくるね。」
そう言って松岡くんは、多目的室を出ていった。
「よし!初めて僕ら以外のメンバーが増えた!!」
僕は嬉しくなって大声が出た。
「まさか上級生だとは思わなかったけどな」
「でもメンバーが増えて、これから盛り上がりそうな予感がするよ!」
僕らはマジック部の明るい未来に、
その日の午後五時、僕は家の近くの公園でマジックの練習をしていた。
「ふふふ・・、明日みんなに見せるとっておきのトランプマジック・・、きっとみんなおどろくぞ」
そして僕がトランプをシャッフルしていると、とつぜん強い風が吹いてきて僕のトランプがふきとばされてしまった!!
「ああ!!僕のトランプが!!」
お父さんからもらったお気に入りのトランプが!!早く集めないと!!
僕はトランプひろおうとしたが、風がじゃまして一枚もひろえない。
「もう、一体どうなっているの!?」
追いかけても追いかけてもひろえない、僕がオロオロしていると突然どこからか声が聞こえてきた。
『イーサン、このわがはいとゲームをしよう』
「ん?君は誰なの?」
『わがはいはパワー・ストーム、君にきょうみがあって来たんだ。』
「僕にきょうみがあるの?」
『そうだ、わがはいとゲームをしてそなたをためすのが目的だ。もしそなたがゲームをしないのなら、このトランプ消すことにしよう。』
「そんな!!それはお父さんからもらった大切なトランプなんだ、返してよ!!」
『じゃあ、ゲームをするしかない。』
パワー・ストームは明らかに僕をあざ笑っている。
大切なトランプを消されるわけにはいかない、僕がやるべきことは決まった。
「わかった、君とゲームをするよ。」
『いい目をしているな、それではこのトランプを使ってゲームをしよう。今から行うゲームは、インディアンポーカーだ。』
インディアンポーカー・・・?僕のやったことのないトランプゲームだ。
『今からわがはいとそなたは互いに山札から一枚カードを持ってきて、そのカードを表を前にしておでこにのせる。そして互いに自分のカードが相手より強いかを考えるのだ。カードの強さは数字によって決まりジョーカーが一番強い。』
「わかった、はじめよう。」
『言っておくが、どうしても勝てないと思ったら降参することもできるが、そうなったらそなたの負けとみなして、トランプを消す。』
つまり負けられないということだ、僕は何がなんでも勝つんだ!!
トランプを同じ枚数に分けて、お互いに山札をシャッフルした。
「いくよ、パワー・ストーム!!」
そして僕とパワー・ストームは山札から一枚ドローして、カードをおでこの上に置いた。パワー・ストームは姿が見えないが、ドローしたカードを見せている。
パワー・ストームがドローしたのはスペードのキング、13のカードだ。
「えーーっ、13のカードを引くなんて・・・、引き運いいな。」
それにたいして僕がなんのカードを引いたかはわからない、だけど13のカードに勝てるカードといえばジョーカーしかない。
どうしよう・・・、まさかあんなに強いカードを引くなんて思わなかったよ。どう考えても僕の負ける確率が高い。
『どうした、そんなに暗い顔をして?』
「えっ!!僕はそんな顔してないよ!!」
『いや、お前は暗い顔をしている。お前は自分に自信が無いのだろう』
「そんなことないよ・・・、僕は・・・・。」
僕は強気になれなかった・・・、いきなりつきつけられたトランプのキングに僕はおそれている。
そんな僕を見て、パワー・ストームは堂々と言った。
『まあいい、おそらく自分のドローしたカードに自信が無いのだろう。だがこのゲームでは当然のことだ。自分が引いたカードがわからないから、自信が持てない。それなら安心するがいい、イーサンがドローしたカードはハートの1だ。』
そんなこと絶対にありえないけど・・・、たとえ僕がドローしたカードがハートの1じゃなくても、僕が13のカードよりも強いカードを引いていたなんてそんなことあるわけがない・・・。
『それにそなたはわがはいのドローしたカードがよっぽどこわいように見える、つまり私は強いカードを引いた可能性が高いということだ。つまりわがはいの勝ちは明らかなものだ。』
パワー・ストームの言う通りだ、それは引いたカードを見ている僕がわかっている。
もうおわりだ・・・、父さんからもらった大切なトランプは、消えてしまうんだ。
僕は悲しくなって涙を流した。
それを見たパワー・ストームは、さらに言った。
『おいおい、そんなに泣くくらいならなら降参したほうがいいよ。もっとも私からすれば
パワー・ストームは僕を降参させようとひどい言葉をぶつけてくる。
あれ・・・?ちょっと、おかしいぞ。
パワー・ストームはスペードのキングをドローした、冷静に考えたら負ける可能性はかなり低い。
パワー・ストームには僕のドローしたカードが見えている、つまり・・・、もしパワー・ストームが見えているカードが、あのカードだとすれば・・・。
「ふふふ・・・。」
『ん!?そなた・・・、目つきが変わったな。今さら何を思ったところでわがはいの勝ちは変わらない。』
「確かに君の言う通りかもしれないけど、僕がジョーカーをドローしたことも考えられるだろ?」
『ほう・・・、わずかなキセキにかけるということか・・・。それでそなたはそのキセキを信じるというのか?』
「信じる!!僕は自分を最後まで信じるんだ!!」
『・・・よかろう、では互いのカードをオープン!!』
そして僕とパワー・ストームが引いたカードが互いに明かされた。
パワー・ストームはスペードのキングで・・・僕は・・・ジョーカーだ!!
「やった・・・、僕の勝ちだ!!」
『ふ・・・、見事だ。改めてそなたには感心したぞ。それを賞して、わがはいと
「契約・・・?」
『わがはいの力を使えばどんなことだってできる。さあ、そなたの望みは何だ?」
僕の望み・・・、僕がやりたいことは・・・。
「僕は、イタズラとマジックでみんなのあっと驚く笑顔でこの世の中を明るくすること!!それが僕の夢だ!!」
僕は力強く笑顔で言った。
すると僕の前に
『では、この契約書に手を置くがいい。』
僕は契約書に手を置いた。
すると契約書が光ながら僕のトランプに吸い込まれていった。
「え!?なになに!!どうなっているの!」
『契約完了だ、さあこのトランプを思いのままに使うがいい。』
そしてそれっきりパワー・ストームの声は聞こえなくなり、僕はトランプを持って家に帰ったんだ。
それから三日後、今日は土曜日だ。
僕は武田くん・加島くん・風間君といっしょに、大島家に来ていた。
なんで大島家にいるのかというと、それは昨日松岡くんが「チーム・ブンガブンガ!!」に入りたいと言ったからなんだ。
「チーム・ブンガブンガ!!」にはだれでもかんげいだけど、仲間になるには
大島さんは、財閥のお金持ちで秘密結社「名古屋老若連合」のボスでもあるんだ。
そんな「名古屋老若連合」にじつは僕も入っているんだ。それで大島さんは「チーム・ブンガブンガ!!」のスポンサーをしていて、マジックに必要な道具とか場所を用意してもらったりととてもお世話になっているんだ。
だから「チーム・ブンガブンガ!!」に入るには、大島さんにあいさつをするのがルールとなっているんだ。
「あ、来た来た!!」
「お待たせ!!」
松岡くんが斎藤さんや藤宮さんと一緒にやってきた。
「それで僕にやってもらいたいことがあるって聞いたけど、それはなに?」
「うん、今から君には大島さんに挨拶してもらうんだ。」
「大島さんって誰?」
「俺たちがお世話になっているおじさんだ、くれぐれも失礼がないようにな。」
神島くんが松岡くんに
そしてそれから五分後、紳士の格好をした若い雰囲気の男がやってきた。
「やあ、『チーム・ブンガブンガ!!』の
「はい、松岡くんです。」
「はじめまして、松岡未来です。これからよろしくお願いします。」
大島さんは松岡くんをすみずみまで観察した、松岡くんは
「ふーむ・・・、君はあまり明るい性格ではないが、何かができる力があるようだ。喜んで『チーム・ブンガブンガ!!』に迎え入れよう。」
大島さんは笑いながら言った、松岡くんは緊張がとけてほっとした顔になった。
「ありがとうございます!!それで『チーム・ブンガブンガ!!』は、具体的にどんな活動をするのですか?」
「まあ、
松岡くんは首をかしげている。
「そんなむずかしく考えなくてもいいよ、気楽にやり続ければ楽しくなるよ。」
僕は松岡くんに言った、松岡くんはなっとくして笑顔になった。
「さあ、これから『チーム・ブンガブンガ!!』にミッションを与えよう。」
「お、きましたね大島さん。」
「それで今回のミッションはなんですか?」
「早く教えてくれよ!!」
みんなわくわくしながら大島さんに言うと、大島さんからミッションの内容が告げられた。
「今回のミッションは、とある
僕たちは驚いて大島さんの方を見た。
「喫茶店ですか・・・?」
「ああ、私の知り合いの
「喫茶店か、あんまりピンとこないミッションだな・・・。」
「喫茶店ね、ちょっと大人な感じで私は好きよ。」
「それで、イーサンはやるのか?」
「うん、やるよ!!困っている人がいるのなら、明るい笑顔にしてあげなきゃ。それが僕たちの使命だもん。」
僕はやる気に満ちていた、いつだって誰かを明るくしたいという思いはあるんだ。
「じゃあ、今からその喫茶店へ行こう。全員私の車にのってくれ。」
こうして僕たちは大島さんの車に乗った、これから何が待ちうけているのかワクワクがとまらないよ!!
すると僕のトランプが僕の気持ちに反応するかのように青白く光った。
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